第273話 学校の中
「一体なんだって言うのよ? 警報はうるさいし、外には出られないし」
シャウラは不満を一切隠す様子もなく呟いていた。
ここは、王立セントラル魔法科学研究院。街で起こった非常事態の情報はすぐに魔法学校にももたらされた。
学生たちは講堂に集められ、外出は禁止。それがいつまで続くかわからない状況に、皆不安を募らせていた。
時々、教員から知らせが入るが外の状況を知るにはあまりに不十分。それもそのはずで、学校側が街の状況を把握しきれていないのだ。学生に正確な情報を伝えれるはずもなかった。
学生たちは自然と、普段から仲の良いものたちで集まって不安に対する不満をもらしながら、どうにか気を紛らわしていた。
スピカとアトリア、それにシャウラ、ゼフィラの4人は、時折もたらされる情報を元に憶測を並べた話をして退屈な時間を過ごしていた。どうやらベラトリクス、サイサリー、アルヘナといった男子たちは、別のところでたむろしているようだ。
「こう、あっちこっちで警鐘が鳴ってると、家の方が心配になってくるよなー? どう考えたってこれは只事じゃなさそうだぜ?」
「外に出るなっていうのは、
家を出て学生寮で暮らす彼女たちは、実家の心配をしているようだ。街から響いてくる鐘の音は明らかに一か所ではなく、かなりの広範囲に渡っていた。――にもかかわらず、街の状況を知らせる情報はきわめて乏しく、不安になるのは当然といえた。
「センセのお家は街からずっと離れてますので大丈夫と思いますが――、ラナさんやユタタさんのことがあたしは心配です……」
「……ラナ、さん…様たちはきっと大丈夫。街で騒動があったとしても、きっとカレン様やシャネイラ様が沈めてくださるもの」
天災の類なら学校にもなんらかの避難指示が入るはず。しかし、そうした情報は一切なく、ただただ待機を命じられている状況。
アトリアはこれに対して直観的に、暴動――、あるいは他国、もしくはまものの襲撃があったのだと察していた。
しかし、その規模がどうやら自分の知るそれとは明らかに異なっている、とも同時に感じていた。
「やっほやっほー、スピカちゃんにアトリアちゃん、それにシャウちゃんにゼフィちゃんも集まってるねー」
彼女たちに声をかけてきたのは、4回生のリリィ・アンバー。彼女の登場にアトリアは露骨に不快な表情を見せた。
「……リリィ先輩、4回生の集まってる場所は向こうですけど?」
「いやーん、アトリアちゃん。そんな邪険にしないでよー? この状況で学年もなにもあったもんじゃないってーの」
いつも通りのリリィに、シャウラとゼフィラは呆れにも似た笑顔を見せ、アトリアの表情はさらに不快さが増していた。
「さっきさー、ちぃとばっかり外に出ようとしたんだけど、見張りが目ん玉ギラギラさせてんの。ちょっとヤバヤバかなーって戻って来ちゃった」
「リリィ先輩、この状況で外へ出ようとしたんですか? さすがにそれはぶっ飛び過ぎてません?」
ゼフィラは苦笑いを浮かべ、「この人、ホントにとんでもないないな……」と心の中で呟く。
「ぶっ飛ぶ!? さっすがゼフィちゃん! 良いこと言うじゃなーい!」
「――はい?」
「飛んだら見張りなんて関係ないっしょ? ねぇー、スピカちゃん?」
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