第274話 連撃
サーペントを代表する剣士の1人――、否、「2人」、アイネとクライネ。双子ゆえに成せる阿吽の呼吸、完璧な連係は「2人の剣士」、というよりは四肢の増えた「1匹の獣」のようだった。
繰り出される斬撃、回避や反撃の動きを察して襲いくる次の刃、それを見越しての次の……。絶え間なく続く剣撃、相手は体力も2人分ゆえにまるで底が見えない。
カレンは、自慢の2刀を完全に防御へまわし、適度に距離をとって反撃の糸口を探っていた。
『2対1なら片方が死角に回ってくるのが多いんだけど……、こいつらはあくまでも<1対>を重視して動いてくるわけね』
「逃げ回るだけしか」
「脳がないのか?」
「「金獅子」」
「あー! まどろっこしい! いちいち片方ずつしゃべる必要あるのかい? 変なところで個性出してんじゃないよ、まったく?」
戦場で相応しいかはともかく、カレンのもっともなツッコミに一瞬、お互いの顔を見合わせる双子。
しかし、すぐにその視線をカレンに向けると、やはり交互に言葉を紡ぐのだった。
「獅子の双剣もここまで」
「2刀で2人には勝てない」
「「次はない!」」
1人が前進し、その後ろに隠れるようにもう1人が続く。これまでと同じアイネ・クライネの戦術。
「芸がないね? 同じ戦法でゴリ押しかい?」
そう口走った刹那――、カレンは正面の敵より少し上に視線を向けた。そして、大きく横へと跳んだ。
次の瞬間、彼女が元々いた場所に矢が突き刺さる。どうやら周囲を囲む建物の中にもサーペントの手のものが潜んでいるようだ。
これまで万全の態勢から双子の連撃に対処していたカレンだが、この一手で、崩された状態から攻撃を迎え討たなければならず……。
強力な縦の斬撃、紙一重で躱すが、回避に余裕はなく、さらに次は横の薙ぎ払いが襲う。一刀を縦にしてこれを防ぐが、姿勢はさらに崩された。アイネ・クライネもここぞとばかりに追撃を緩めず、仕留めるつもりで仕掛けていた。
『双子ちゃんは――、揃いも揃ってしつこいタイプみたいだねぇ……』
幾多の連撃の末、ついにクライネの一手がカレンにわずかに届いた。縦の斬撃が彼女の肩を掠め、致命傷にはならずとも赤い飛沫をあたりに散らす。
カレンは痛みにかすかに表情を歪めた。
しかし、彼女の目は次の敵の刃を見極めようと――、さらに周囲からの弓矢、魔法の援護がないかも探っていた。
そして――。
『あの窓からもう一発、矢が飛んできそうだねぇ……。それを躱した先にこいつらの剣か。――凌ぎれるか!』
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