第272話 策謀と対処
街中に突然姿を見せたまもの、その一組と交戦したパララ・サルーン。彼女はブレイヴ・ピラーの小隊に加わり、暴動の鎮圧にあたっていた。
街の騒ぎが「人」によるものだけではなく、「まもの」も関わっていることに驚いたパララ。手練れの剣士の協力もあって速やかに敵を排除した彼女は、その現場に奇妙な箱が置かれていることに気が付く。
1ルームの部屋――、とまではいかなくとも人が数人入ることもできる大きな金属製の箱。面の1つが外れており、彼女はそこに魔法的な施術の痕跡を発見する。
幼さの残る彼女だが、真剣な顔付で施術の文様や術式を読み取っていく。
『これは――、時限式の施錠。まものはこの中に押し込められて、ここまで運ばれて来た?』
もし、この箱が街のいくつもの場所に設置されているとしたら――、その被害ももちろん気になるところだが、パララの脳裏には先に別の疑問が浮かんでいた。
『こんな大掛かりなもの……、一体どうやって運び込んだんでしょう?』
◇◇◇
「王国軍に協力ギルド――、対処が早いですねー? グロイツェル様、このサーペントのやんちゃ……どこまでよんでました?」
リンカは、魔法の写し紙での知らせ、伝令兵として動き回る3番隊がもたらす情報を整理していた。彼女の近くにはグロイツェルも控えている。
「マスターも私も、サーペントがなんらかの騒ぎを起こすことは予想していた。王国側も同じく、だ。ただ、闇のギルドの動きが思ったより激しいのと、まものの出現までは予測できていなかった」
多少の暴動程度なら即座に対処できるよう準備をしていた。それは王国軍や衛兵団も同様で、騒ぎが起こる前に動きを止められたところもある。
ただ、この騒ぎに呼応して、巨大ギルドや王国への対抗勢力が同時に動き出すとは思っていなかったようだ。ゆえに――、暴動への対処はある程度できてはいるものの、完全に沈め切れてもいないのだ。
「
「お前はお前の仕事に専念しろ。私がここに残っているのも、万が一の備えゆえだ」
グロイツェルは想定より多くの人員を、外の暴動鎮圧とまもの討伐に割いていた。ただ、手薄になった本部を狙われる可能性も考慮して自分と、1番隊の中でもより腕の立つ数名を厳選してここに残しているのだ。
「街で怪我人が出ると私の隊は引っ張りだこですからねー。これ以上、私の仕事が増えないことを祈ってますよー」
緊張した空気の中、リンカのどこか気の抜けた間延びした声が場違いに響いていた。
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