第42話 半期を経て

 アトリアたちセントラル3回生の成績上位者によるトーナメント戦。シャウラは順当に準決勝まで駒を進めた。アトリアとゼフィラも勝ち進み、準決勝で彼女たちは直接対決となる。


 一方、サイサリーは意外にも初戦敗退となってしまった。もちろん、同級生のだけを掬った者たちによる争い。彼が負ける可能性も十分考えられたのだが、それでも初戦で姿を消したことに仲間たちは驚いたようだ。


 悔しさ――、はそれほど滲ませるわけでもなく、頭を抱え首を捻るサイサリー。そんな彼の姿を見て、いつも通り絡みにいくベラトリクス。


「おらおら? どうした、サイサリーよ? 散々人をバカにしといて初戦敗退とは様ぁねえな?」


「うるさいな、ニワトリクス。参加すらできてない君に言われたくないよ?」



「頭使い過ぎなんじゃないか、サイサリー? 油断したろ?」



 飽きもせず繰り返されるいがみ合いに割って入ったのは次戦でアトリアと当たるゼフィラだった。


「おう、筋肉女! たまにはお前も笑ってやれ! 個人戦ではこんなモンかよってな!」


 ベラトリクスの言う通り、サイサリーは成績上位層の中でも学科に秀でるタイプではあった。同時に戦況分析や知略に優れている。それらの尖った部分と比較するとたしかに単身の戦闘能力は劣るのかもしれない。――とはいえ、それでも同級生の平均以上は有しているのだ。


「別に油断したつもりはないんだ。ただ――」

「次戦のシャウラを意識して魔力を温存しようとしてたろ? オレには見てなんとなくわかったぜ?」


 ゼフィラの言う通り、サイサリーがもし初戦に勝っていたら次はシャウラとの対戦となっていた。そして、どうやら彼女の読みは正しかったらしい。


「ゼフィラは相変わらずいい勘してるね? 君の言う通りだよ。次を意識して魔力をセーブしてしまった。優勝への最大の壁はシャウラだと思っていたからね?」


 そう言って彼は、闘技場の舞台へと目を向ける。準決勝の1回戦が今まさに始まろうとしていた。


「――シャウラが勝つよ。決勝はオレとアトリアの勝者とシャウラで決まりだと思うぜ?」


「だろうね? ここまでの戦いは完勝。まったく付け入る隙がない」


 ゼフィラ、サイサリー、ベラトリクスの3人はシャウラの動きを目で追っていた。


「……ゼフィラ、準備しなさい? すぐ私たちの番よ?」


 そこに姿を見せたアトリア。彼女の言った通りで、あっという間に勝負は決してしまった。シャウラ・ステイメンの勝利。またしてもまったく危なげない完勝劇。


「あの高飛車女……、なんだか知らねえけど絶好調じゃねえか」


「シャウラはうちらの学年じゃウェズンさんがバケモンなるまでずっとトップにいたからなー。その後もスピカに奪われるまで2位を守り続けてた……。ウェズンさんに一番対抗意識燃やしてたのは多分シャウラだよ? だから、ここでは負けられないって気持ちなんだろうさ」


「……私は勝つけどね。あなたに勝ってシャウラにも勝つ」


「さーてさて! そいじゃオレはいつかのリベンジといきましょうかね? あん時は心底ビビらされたけど、手の内わかってたら負けないからな」



 アトリアが編入生としてセントラルに入学した際、最初に戦った相手がゼフィラだった。その時は彼女に文字通り、圧倒して見せた。

 それから半期の時を経て、両者は再び相まみえる。互いに目を見つめ合い、アトリアは不敵に――、ゼフィラは余裕の笑みを見せて闘技場の舞台へと上がっていく。

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