第14話 足止め
馬車は完全に止まった。双子の兄妹とコンちゃんを残して私は外の様子を確認しに外へ出た。
前の馬車も止まっており、ランさんと見知らぬ男の2人連れがなにやら話をしている。荷台がテントのようになっていて気付かなかったが、今走っているのはなんと崖道だった。
道の端に立ち下を覗いて見ると、いつの間にかそれなりに高い山を登っていたようだ。ランさんやアビーさんが話していたのとは別の意味で私は危険を感じてしまう。
「――この先、崩落があって通れなくなってるんだよ。残念だけど引き返してもらうしかないぜ?」
ランさんと話している男の声が聞こえてきた。どうやら道が崩れて通行できない状態にあるらしい。しかし、こんなところで迂回する道などあるのだろうか?
下手をすると相当な距離を引き返さないといけないかもしれない。
私がそんなことを考えていると、いつの間にか後ろにアビーさんが立っていた。驚く私に反して彼女は表情を変えず、小さな声でこう言った。
「一旦、後ろの馬車に『スワロー』の人たちを集めてます。スピカに見張らせてますからスガさんもそちらへ」
彼女の言葉に不穏な気配を感じる。なにか危険を察知したということか?
「この道――、人通りこそ多くありませんが、一部の隊商にとっては生命線なんです。ですから、整備はきちんとされてます。急な崩落なんて地震でもなければ起こりませんよ?」
「あの男たちが嘘を付いていると?」
私はランさんと話している2人組に視線を向けてアビーさんに問うた。
「まだ決まったわけじゃありませんが……、怪しいです。ここまで登ってくるまでに身を潜める場所もけっこうありますから。多くの場合、足止めされると――」
彼女が最後まで言い切る前に状況を察した。思わず、唾を飲み込んでしまう。
手前で道を塞いでいる連中が仮に「盗賊」ならおそらく背後から仲間がやってくる! 退路を塞いで挟み撃ちにする気だ!
「スワローの人たちには掻い摘んで伝えました。さすがに旅慣れているというか――、あまり動じる様子はなかったです。とはいえ、彼らは戦える人たちではありません」
「アビーさんは……、どうされるんです?」
「ランさんと一緒に話をして探りを入れます。スピカにはなにかあった際、守りに徹するよう指示を出しました。あの娘の魔法は、接近してくる相手には鉄壁ですから」
「重力魔法」、刃物で襲ってくる相手なら近付いた段階で地面に叩きつけられるわけか。
「ひょっとしたら本当に道が崩れているだけかもしれません。それならスワローの人たちには残念ですが、時間通りには到着できないでしょうね?」
アビーさんの顔を見て察した。それでも――、できればそちら側であってほしいと。
「安心してください? 尻尾を見せたら容赦しませんから。黒焦げにして崖から落としてやりますよ? ランさんもそのあたりは甘くないでしょうから」
彼女はそこまで言ってから視線で馬車の荷台へ戻るよう促してきた。私は小さく頷き、それに応じる。同時に腰にぶら下げた短剣を見つめ、その柄に触れた。
これを握らねばならない事態は……、できれば避けたい。
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