第7話 魔法の発展
「マクリオさんとアクアさんは魔法で芸をするんですね! あたし、びっくりしました!」
次の村へ向かって2台の馬車を走らせている。前を行く方に座長のノーラン氏と団員が数名、そしてアビーさんとランさんが荷台に乗り込んでいた。
そして私とコンちゃんは、双子の魔法使いと共に後ろを行く馬車に乗っている。
先の舞台の後、すでに滅入った表情を見せ始めたアクアさんを心配して、彼女をどうにかリラックスさせることに重きを置いた人選となった。
年齢が近く、誰とでも気兼ねなく話ができるコンちゃんと――、こうしたシーンで力を発揮しなければなにしに来たかわからなくなる私だ。
もっとも、アクアさんくらいの年齢の子が相手なら、私があれこれ考えるよりもコンちゃんが自然に話しかけた方が効果的な気もする。
彼女はシンプルに、同年代の魔法使いに興味津々で話しかけているようだ。マクリオくんとアクアさんのふたりに、自身も魔法使いだと明かし、得意な系統や練習方法などを尋ねている。
「僕たちはたしかに魔法を使えるけど……、世の『魔法使い』と比べると魔力も技術も全然だよ」
コンちゃんの質問に答えるのはほとんどマクリオくんで、アクアさんは視線もあまり合わせず、時々頷くくらいだった。
「あたしは魔法使いの知り合いがいっぱいいますけど、あんなふうに使う人は初めて見ました! さすがの一言です!」
マクリオくんはコンちゃんがセントラル魔法科学研究院にいたと聞いて驚いていた。魔法使いを志す者にとってこの上ない名誉であり、よほどの才能に恵まれ、研鑽を積まないと足を踏み入れることは叶わないところだという。
「――これは座長の受け売りだけど……、魔法の使い方はもっといろいろあっていいと話していた。僕もその考えに同感なんだ」
「いろいろ……、ですか?」
彼女は興味深そうにマクリオくんに顔を寄せて話の続きを迫る。息のかかりそうな距離まで近寄られ、彼は顔を少し赤らめて後退っていた。
そのタイミングで道が悪いのか――、馬車の荷台が軽く跳ね上がり、2人の距離がなお一層近くなる。
「えっ……と、アレクシアの魔法学は戦闘に特化しているんだ。そして――、この国の魔法学はおそらく世界で一番進んでいる。だから最先端の魔法学は戦闘用の魔法研究と同義なんだ」
マクリオくんは両手を前に出し、一定の距離を保って話の続きを始めた。
「はい! たしかにあたしも対人戦や対まもの戦の技術をたくさん習いました!」
「どこの魔法学校でもそれが普通なんだと思う。けど……、僕みたいにあまり才能がない人間でもさっきみたいに人を驚かせたり――、感動させられるのが『魔法』のすごいところだと思うんだ」
「魔法使いのあたしもおふたりの芸には感動しましたよ!」
「う……、うん、ありがとう。魔法の使い方ってこうあるべきかなって思ってる。戦うためばかりじゃなくて、もっと人を喜ばせたり、楽しませたりするもの。そんなふうに発展していったらいいなって――」
私はスピカさんの隣り、ほんの少し距離を置いたところに座って彼の話を興味深く聞いていた。おもしろい話を提供するどころか、むしろこちらが聞かせてもらっている。
私たちが今住んでいるアレクシア王国は、魔法科学と共に発展した国だと聞いている。つまり、魔法の力と国力が極めて近い関係にあるのかもしれない。
現代的な言い方をするなら、軍事力やそれに伴った科学技術が魔法であり、魔法科学なのだ。
それゆえ、魔法は「戦う術」としての進化を続けているだろう。
ただ、火薬が花火として使われるように――、人に感動を与える方向に魔法が進化したならそれはとても素晴らしいものになるだろう。
私が彼の話に惹かれたように、コンちゃんは何度も大きく頷きながらなんだかよくわからない形容詞を織り交ぜてマクリオくんの話に関心を示すのだった。
その隣りでアクアさんの視線は、兄とコンちゃんの顔を何度も往復していた。
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