第49話 葛藤と決断

「やっほ、和葉」


 渚に呼び出され行ってみると、何故か渚の他に雫もいた。

 ベンチに座る渚と遊具に寄りかかる雫。

「……え?どうゆうこと」

「急に呼び出してしまいすいません」

 俺の疑問には答えず座ったまま謝罪。

「いや、良いんだけど……」

「その……長く喋っても伝わらないと思うので……」

 渚が喉を鳴らす。

 緊張しているのか少し頬が赤く声も震えている。

 渚はスっと立ち上がり――


「わたしは和葉くんが好きですっ!」


 目を瞑りながら声を張ってそう叫ぶ。

 告白……告白だよな?

 気持ちはすごく嬉しい、俺も同じ気持ちだったから。

 ただ、疑問が残る。

 雫はなんのためにいるのか?

「こ、交代です……雫ちゃん」

「うん」

「だから、どうゆう――」

「和葉」

 ズイッと渚よりもうんと近い距離まで寄ってくる。


「ぼ、僕も……君が好きだ。僕とお付き合い……してくれないだろうか」


「……っは?」

 俺は二つの衝撃を受けていた。

 二人が俺と同じ気持ちだったことは素直に嬉しい。

 だけど……同じ場所、同じタイミングで告白されるなんてあるのか??

「ちょっと待って。二人の気持ちは凄く嬉しい……けど、どうゆうこと?」

「わたし達は和葉くんの事が好きです。なので、二人で告白して選んでもらおうと……どちらが選ばれても恨みっこなしの勝負ってことになりました」

 渚がそう答える。

「恋愛にフェアプレイなんて無いけど……これが僕達の出した結論なんだ」

 渚に続き雫がそう言う。

「だから、めいいっぱい悩んで最終的に僕を選んでくれると嬉しいな」

「いいえ、わたしを選んでください」

 雫はにっこりと、渚はやや負けん気が全面に出た表情で言われてしまった




『二日後のこの時間に雫がこの公園に、わたしは展望台にいます。和葉くんは選んだ方に行ってください』

 強制的に制限を設けられたのありがたい。

 きっと、俺は選べずにダラダラと先延ばしにしていたかもしれない。

「それにしても……大胆なことを……」

 渚か雫か……。

 もう一度言うが俺は二人のことが好きだ。

 二人とも俺の事を見てくれていたし……抱きしめてくれた。

 たったそれだけで救われた。

 元気でわがままで、ふとした瞬間に女の子らしい姿を見せる雫。

 清楚で礼儀正しくて好きな事を全力で楽しめる渚。

 この二人から一人を選べは酷ではないだろうか。

 いや……これは、彼女達が考えた策だ。

 話し合った末に選んでもらうことで、俺の心理的な負担を減らす策。

 どちらを選んでも、罪悪感を生まないため……。

 これだけ、お膳立てをしてもらって決断すら出来ないのは情けない。

 俺は――



 ――二日後。


 俺は、決意を固め彼女の待つ場所向かった。

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