第48話 相談
二人の女の子に恋をした。
二人とも俺にとってかけがえのない存在だ。
俺の事を大事に思ってくれているし、俺だって大事に思っている。
それなのに――
「あぁ……俺ってやつは……」
ベッドの上で頭を抱える。
そもそも、切り替えるのが早すぎじゃないのか?
初恋が散ったあとだぞ?
そんなに日も経っていないし……。
やっぱり俺は――
「不誠実だと思うよな?」
「え?なに?急に」
柏崎はキョトンとしている。
場所は、駅前の喫茶店。
正直、自分の恋心を打ち明けるのは恥ずかしいが……。
一人でウダウダ悩むより良いんじゃないかと思い、柏崎に声をかけた。
「相談があるんだ」
「珍しいよな、南雲が相談なんて」
「それで……その……相談内容というのが……」
「うん」
何も言わず俺の言葉を待ってくれる。
「……好きな人が出来たんだ」
「…………」
俺のやっとの思いで捻り出した言葉を聞き、柏崎が一瞬ピクリとする。
「なるほど……それで?」
「その……二人いるんだよ、好きな人が」
「ん?二人?」
「あぁ、二人」
柏崎は長い間固まっていた。
腕を組み上を向いて――まじかぁと呟く。
「その、好きな人っていうのが――」
「いや、良い。だいたい分かってる」
右手を前に出し、俺の言葉を遮る。
俺が関わっている女子なんて限られてるもんな。
「どうすればいいか悩んでる」
「で、南雲はどうしたいのさ」
「……分からない。こんなことは初めてだし……二人の女の子を好きになるのって不誠実な気がして……」
「え?なんで?」
「節操がないだろ。普通は一人だ」
「う〜ん……あたしは不誠実とか節操がないとかって思わないけど……」
柏崎はコーラを口に含む。
「好きになるだけなら何人好きになったって良いわけだし」
「え?」
「大事なのはそこから一人を選ぶことだと思うんだよな。難しいけど」
たしかに……言われてみればそんな気がしてきた。
そうなると、もう一つ問題が浮かんできて……。
「もし、仮に一人選んだとして……その二人の女の子の関係に亀裂が入ったりとか……」
「まぁ……場合によっちゃあるかもね」
どくりと心臓が跳ねる。
もしかしたら……俺の選択のせいで二人の友情に亀裂が生じるかもしれない?
渚と雫が険悪になるのは俺が望むものじゃない。
「やっぱり優しいな南雲」
「…………?」
「あたしたちの関係を気にしてくれんだろ?」
「気にするだろ!三人が仲良く笑いあってるのを見るのが好きなんだ……それを壊したくない」
「それは南雲が気にすることじゃないよ。同じ人を好きになるってそういうことだろ」
あっけからんとした態度で言う。
その未来は柏崎だって他人事では無いのに……。
「恋愛は傷つくものだしな。一瞬気まずくはなるだろうけど……南雲が思ってる最悪にはならないよ」
「……なんで言い切れるんだ?」
「親友としての勘?」
「おい……」
「こういうのは傷つけないようにって考えると逆に深く傷つけることになるから、率直に伝えた方がいい」
そう……なのかなぁ。
「二人のことを気にかけるなら、手心を加えようなんて考えるなよ?」
「……わかったよ」
「それにしても……意外だな」
柏崎は頬漬けをついて口にする。
「なにが?」
「いやぁ……あの二人が南雲の事を好きだってのは前々から知ってたけど、まさか南雲もそうなるとは……」
「…………まぁね」
「楽しみだなぁ〜どっちとくっつくんだろう」
柏崎はルンルンとしていた。
絵に書いたような他人事だった。
柏崎と別れ、家に向かう途中で携帯が鳴る。
「ん?渚?」
『お話があります。交遊公園に来て欲しいです』
まさかな……。
これから、気持ちの整理をしようと思った矢先に……??
公園に向かうと渚と――
「やっほ、和葉」
雫がいた。
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