王様と羊

にしおかゆずる

王様と羊

「この国の羊を、すべて集めよ」

王様がお触れを出した。

東から――

西から――

北から――

南から――

羊と羊飼いたちが、都にやってきた。

「一番素晴らしい羊に、王様が褒美をくださるそうだ」

「都に化け物が出て、羊を取って食っちまうんだって聞いたぜ」

「羊の毛を刈って、世界一大きなじゅうたんを作るんだと」

「えっ、みんなで焼肉パーティじゃないの?」

口々に噂する羊飼いたち。誰にも本当のことはわからなかった。

「みなの者、聞くがよい」

広場に集められた彼らに、将軍が言った。

「それぞれに自分の羊を連れて、一列に並ぶのだ。いいか、一列にだぞ」

一列になった羊と羊飼いたちの前に、槍を持った兵隊たちが立ちふさがる。そして――


「王様」

大臣は報告した。

「わが国の羊は、全部で百五十九万六千七百四十一頭でございます」

「うむ」


しかし、王様の不眠症は治らなかった。

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王様と羊 にしおかゆずる @y_nishioka

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