第24話 最近変な奴に絡まれがち
この日は朝から一日中歩き回り、何体か目標の怪物を討伐したものの例のササミと思われる存在は見つける事は出来なかった。
そもそも猫に擬態出来る訳だから、猫を探す方が手っ取り早い。
しかしそんな事を二人に言う訳にもいかないし、そもそも信じて貰えるか分からない。
明らかに大きさも違うから、当然だろう。
まぁ結局、何事もなく夜の8時を回った辺りで解散となった。
そして明日からは、夜から朝に掛けて動く手筈にした。
昼間は人通りも多いから、敵もダンジョン内に潜んでいる可能性がそもそも高い。
外に出てる個体はそもそも知性も高くないから、弱い個体の可能性が高く、ソレを狙っての競合相手が多い。
つまり強い個体の討伐するなら必然的に夜になる。
今回、運良く昼間から遭遇したがやはり他のギルド連中と獲物を取り合いになって人間同士の乱闘になるって事も少なくないのだ。
「全く、困ったものだよなぁほんと……。
まぁ夜でも別にいいんだけど………」
一人そんな事を呟きながら、一人で帰り道を歩く。
ここから歩いて2、30分程度の距離。
急げばすぐだが、帰りに二人へのお土産でも買おうかと思い、俺は近くのスーパーに立ち寄る事にした。
「エリスに携帯買ってあげた方がいいよな。
いやでも色々手続きが面倒だよな……エリス達って」
買い物をしながらそんな事を思った。
割引のシールが貼られた商品を幾つか眺め、良さそうなのが無いかと思っていると………。
「お兄さん変わった力を持ってるね」
声を掛けられ、振り向くと高校生くらいの少女がそこにいた。
学生服って訳ではないが、なんというか恐らくエリスと同年代で………彼女のように異国風の雰囲気を放っている端正で整った顔立ちした銀髪の美少女。
「君、俺に何か用?
てか、この時間に一人は危ないよ」
「大丈夫ですよ、一応連れが居るので………」
「連れって、もしかしてどっかのギルドの方?」
「どちらかというと協会側ですかね。
国際モノリス協会所属って言えばわかります?」
「協会所属って……君くらいの子が?」
「見た目で判断は甘いですよ。
この国の法律だと年齢制限がありますが、私の方だと実力あれば良いってくらいなので……」
「そうなんだ………」
変な奴に絡まれた……。
が、なんというか無視出来ない魅力があるというか彼女を見ているとエリスの存在が脳裏に過ぎる。
何処となく彼女に似た雰囲気を感じる、というか見た目はかなり似ている気がする………。
「お兄さんの力、既視感あるんですよね?」
「協会所属なら、俺達みたいな連中は沢山見てきてるだろ?
特に、俺みたいな下っ端じゃないようなさ……」
「確かに、この前百花繚乱ってところへ仕事で伺ったんですけど、その方達とお兄さんは少し違うんですよね?
色々と……」
「違うって何がどう違うと?」
「そうですね……なんというか強い人の雰囲気?」
「強い人ね、それはどうも」
「嬉しくないんですか?」
「俺より強い奴なんて沢山いるからだよ。
確かに嬉しいが、それでももっと強くならないといけないからな」
「ふーん。
強くなって、お兄さん何がしたいんです?」
「助けたい人がいる。
力になってあげたい人がいる。
その為に俺は強くならないといけないんだよ」
「………なるほど、つまり正義の味方的な?」
「そうだな、確かに正義の味方になりたいのかもな」
「なれるといいですね、正義の味方に。
あ……そろそろ私、連れに呼び戻されるので失礼しますね」
「はいはい、勝手にしていろ」
「私、アリシアと言います。
ではまたの機会に、お会いしましょう。
正義の味方のお兄さん」
何処か不思議な雰囲気を醸し出しながらアリシアと名乗った彼女は俺に笑顔を振り撒きつつ去っていく。
そのまま、彼女言っていた連れと思われる黒いコートを纏った黒髪の男の元に駆け寄ると店を後にした。
距離が遠く顔がはっきりとは見えないが、素顔を仮面のようなモノで隠している模様。
正直、不審者である、
アレが国際モノリス協会の使者とはね………。
それに子供まで居るんだな、いや俺も彼女とはそこまで年齢が離れてる訳でもないが……。
さっさと俺も帰ろう、変な奴にまた絡まれるのは御免だからな……。
●
「という訳で、例の彼で多分間違いないと思うよ」
「勝手に動いておいて何をやってるんだよ」
「えー、せっかくあなたの代わりに私が探りを入れたんだよ?」
彼の隣を歩きながら、私は先程出会ったお兄さんの事を報告していた。
どのみち接触は避けられない訳だし、ならいっそ私の方から動いた方が良かったし。
彼はご覧の通り、顔を隠しているので辺に怪しまれる。
さっきの店でも付けたままだし、ほんといつも何を考えているのやら………。
「それで、どうだったんだ?」
「彼の事、気になる?」
「お前が聞いてきた事だろう?」
「まぁ、そうなんだけど……」
まぁ聞いたと言っても雑談を少しくらい。
それでも、彼の放つ特有のソレは紛れもなく本物であり、例の器が目覚めたのは確実であった。
「あの人、やっぱり例の器と関係している。
本人がどの程度自覚しているかは分からないけど、野放しにするのは危ないかもね。
その気になれば、この世界だって簡単に滅ぼせる力を有してる訳だし」
先程彼から貰ったアイスの棒で彼の方を指しながら、私はそのまま言葉を続ける。
「本人の性格は、悪い人って訳ではない。
でも、力を求めるのは間違いない。
理由は、あなたとやっぱり似てる……。
正義の味方になりたい、ね………。
男の人ってみんなそうなの?
あるいは、あなた達が特別そうなったの?」
「どうだかな、昔の事は覚えてないんだ。
ただ、昔の事が俺にとって邪魔になりかねない。
だから、こうして顔を隠し昔の自分を知る者との接触を避けている。
だからこそのこの仮面だ……ある意味正義の味方には見えるのかもしれないが………」
「………、まぁ止めはしないよ。
私はただあなたに力を与えるだけだからさ。
あなたを王にする為にね」
「………王になれば世界を救えるのか?」
「うーんどうだろう?
まぁでも、世界を救いたいなら全ての王を倒さなきゃ
そして、私の姉様を手に入れる事も必要」
「やはり、いずれは刃を交える訳か………」
「そういうこと、でも貴方なら大丈夫。
私の見出した最強の候補者だからね」
「どうだかな、まぁ負ける気もないが……」
「頑張ってね、私の王様」
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