第5話 石片と声を求めて
モノリスが発見されたのは、ダンジョンの調査開始から実に2年が過ぎた頃に初めて生還者が現れた事をきっかけにその存在が発覚した。
彼等は、ダンジョン内部から数多の金銀財宝とそしてスマホに似た黒く四角い謎の石片等を持ち帰ってきたのである。
この石片が後にモノリスと名付けられたモノ。
これ等の調査や解析、研究の結果は人体に埋め込む事で例のダンジョンから現れる怪物達に極めて有効的な攻撃を与える能力が得られる事が判明する。
能力というのがファンタジー系のゲームやアニメ、漫画とかに出てくる魔法や異能力の類いの力に近いというかそのものに思える
更には、このモノリスが新たなエネルギー産業としての利用価値がある事が後に判明。
今後の人類の発展の為に、モノリスの需要は高まる一方であった。
モノリスから得られる力で人類はようやく、怪物達に抵抗する力を身に付けたが、かのダンジョンは依然として世界中で更にその数を増やしていく一方である。
しかし俺を含めての多くの人類は地下深くに眠るモノリスの魅力により、危険に構わずダンジョンの奥深くを目指すようになっていく。
これが俺を含めた人類がモノリスを求める理由である。
●
人々がダンジョンにモノリスに魅入られ続々と向かう中で、俺こと四之宮玲もその一人だ。
命の危険があるにも関わらず、ダンジョンに眠るそれ等を求めてここに来ている。
金は確かに欲しかった、俺がソレに固執するのはより優れたモノリスを手に入れたいからである。
自身の右腕に埋め込まれた、黒く四角い石片のソレが俺の持つモノリスである。
ダンジョン内に巣食う怪物達に唯一対抗出来る異能力をコレは秘めている。
俺はコレを学生時代にバイトに明け暮れどうにか貯めた100万によってようやく手に入れたのだが、護身用にはあまりに心許なく最低限ダンジョンの運搬作業に入れる参加権に等しいソレである。
モノリスにはランク及び質がある。
モノリス協会とかいう公式から出されているモノリスの区分ついては、SSランクからEランクまであり俺の持つのは下から二番目のDランクのモノリス。
ちなみに、Eランクの代物は発電機等に使われる質の悪いモノリスであり、人体に埋め込むには適さないモノなのだと。
俺の扱える能力は、身体強化と水系統の能力。
少し運動神経が上がって、水を用いての何かしらが出来るそうだが……元のモノリスが質が悪いので正直無いに等しいと思っていい。
それでも、かなり莫大なエネルギーを秘めているだけあって小指サイズのモノリスでも同量のウラン以上のエネルギーを秘めているらしい。
そんなモノリスを手に入れるのに最低でも10万以上、人体に埋め込む手術が医療手当の範囲外なのでモノリスを埋め込むまでに100万以上の金が掛かるのだ。
高いモノリスだとより高額な代物、確かこの前輸入されたモノがAランクのかなり良い奴でで確か2000万くらい価値があるとテレビで報道されたばかりである。
ランクの低いモノリスの力しかない俺はマンガやアニメの主人公のような圧倒的な力などあるはずもなく、日常生活が少し便利になるくらいの力かな?
いや、人間一人の能力に少し毛が生えた程の能力。
それでも、この業界で残れてるくらいには実力はあるつもりである。
しかし、このダンジョン内に巣食う怪物達の力には為す術もないのも同然の力と言っていい。
直接の交戦は避けるべきで、一戦交えようものなら撤退あるいは味方のサポートに回るのが良いだろう。
俺はこの状況をなんとかしたい為に、新たなモノリスを求めて再び金を稼いでいる。
幸いにも、この業界に入ってからの方が収入はかなり上がっていた。
更に上のランクのモノリスを求めて、ゆくゆくは最低でもSランクのモノリスが欲しいところと欲をかく日々。
命を賭けてでも果たさなきゃならない夢の為に、野望の為にこんなところで死ぬ訳にはいかないのだ。
「何だこの音……?」
不意に耳鳴りのような不快な音が聞こえた。
例の怪物達が近いのか、辺りを警戒するも何かが違う事に気づいた。
目の前は以前として、闇の中。
しかし、この先に何かがある事を俺の直感が告げた。
「………、」
急かすように、何かに惹かれるように俺は足を止めることなく進み続けた。
声が聞こえる、誰かの声が………。
右腕に存在する自身のモノリスが惹かれるように、淡い光を放ち輝いていた……。
俺の直感が偶然ではない事を悟り、足を止める理由が尚更消えそのまま先を急ぐ。
「………ダレカイルノ……?」
何者かの声が、俺の頭の中に語り掛けてくる。
先程の不快な音の正体、明らかに人知を超えた存在からの声………。
日本語なのが少し驚いたが。
俺はとにかく走り続けた。
声の存在に惹かれるように、己の確信を証明する為に
そして、ソレは遂に俺の前に現れた。
「………此処は一体?」
走り抜けた先には、広い空間があった。
そして、何かの門のような堅い扉がそこにある。
ダンジョンの最深部、此処がそうなのか?
しかし、何度か他のダンジョンの最深部には来た事があるから分かるが、今回のは規模があまりに大き過ぎる。
本来の最深部には、小さな小部屋のような場所でありその中に多くの金銀財宝とモノリスが数個程存在している。
最も大きな規模で、せいぜい我が家の1LDKの物件程度の広さなのだ。
しかし今回は明らかに違う、学校とかの体育館よりもましては野球ドームと大差ない程の広い空間が広がっているのだ。
俺以外の存在が誰一人として居らず、そのあまりの規模に思わず言葉を失う……。
今回の報酬は期待出来そう、いやそうでなくては俺達が困る………。
期待に胸を膨らませ、いざ堅く閉ざされた巨大な扉の前に立つ………。
さぁ、夢にまでみた財宝達を前にする時がすぐそこに来ているのだ!
「………。」
いやちょっと待て、どうやって開けるんだコレ?
鍵を入れる穴もなく、いやそもそも鍵で開けたとしてこんな巨大な扉をどうやって開けるんだ?
少なく見積もって、俺の5人分もあると思われる巨大な扉………。
数人掛かり、いや今回動員した20名程度の人員でも開くとはとても思えない程に大きな扉なのだ。
扉を前に落胆し、思わず扉を怪我をしていない右手で軽く殴る。
正直めちゃくちゃ痛い、しかしその瞬間俺の右腕に存在するモノリスが光を放ち扉がゆっくりと開いていく。
扉は上下に別れゆっくりと開いていき、その内部が明らかになっていく。
しかし、見えたのは再び広い空間だった。
勿論、誰も居らず……俺は驚きつつも落胆しそのまま中へと入っていく。
そして、ここに来ても金銀財宝の類いは見えない。
目立つようなモノといえば、部屋の奥に見える玉座に似たような台座がそこにあった。
台座の方へと足を運ぶと、そこには手のひらより少し小さな石片のようなモノが一つだけ存在している。
俺はソレを見てすぐに目当てのモノリスかと思ったが、目の前のソレは少し違うように見える。
俺の腕にあるソレと見比べて一目瞭然で分かるように、モノリスは黒い物質である。
しかし目の前のソレは違う、白いのだ。
これもモノリスなのか?
しかし、白いモノリスなんて俺は聞いた事がない。
白いモノリスのような物を俺はまじまじと見つめどうするべきかを悩んでいると、先程まで聞こえていた声が再び聞こえてきた。
「………ソコニ……ダレカイルノ?」
あの声だ、先程の声が再び頭の中に直接語り掛けてくる。
しかし、どこにも声の主の姿はない。
声からして、女性だとは思う。
いや、流行りの男の娘属性とかいうので女のフリをしている可能性も十分に考えられる。
とにかく、助けが来るまでここで待機した方が安全かもしれない。
金銀財宝が無いのは少し残念だが、モノリスぽい謎の物体を見つけたのは割と大きい功績だろうか。
俺はゆっくりと目の前の台座に右手を伸ばし、例の白いモノリスに触れる。
すると、僅かに光を放った後にソレはすぐに崩れ去ってしまった……。
灰に触れたかのように跡形もなく消えてしまい俺は思わず、砂と化したモノリスのソレを掻き集めるが。
まぁ、当然元には戻らない訳で………。
「おいおいまじかよ………」
財宝もモノリスも無い事が確定し、思わず膝をつく。
これまでの疲労が襲いかかり、俺は台座に背中を預け座り込む。
こうなるとあとは助けを待つしかない……。
僅かな希望に期待しながら、俺は迫る微睡みに身体を委ねていく。
「ワタシヲタスケテ………」
意識の切れ目に聞こえた声、助けを乞うその声を気のせいだと振り払い、俺は身体を休めた。
ーーーー
モノリス及び能力について
モノリスには、様々な能力が存在し身体に埋め込む事で初めて能力を使用出来る。
モノリスには容量が存在し、容量の範囲内であれば別のモノリスから能力を入手したり同じ性質を持つ能力であれば能力を強化する事が出来る。
代わりに容量を超える能力を保有する事は出来ない。
モノリスにはランクが存在し、ランクが高い程に最初に入っている能力や容量が多くなる。
しかし、本人の生まれ持った素質がランクが高い程に影響されやすく、モノリスの適合に失敗するリスクが非常に高くなる。
モノリスの適合に失敗した者は、遺跡内に存在する異形の怪物となってしまい、ランクの高いモノリスを所持している程に怪物は強化されてしまう。
元々体内に埋め込まれいるモノリスを身体から引き剥がすと、元の持ち主の能力の権限が無くなる。
そして奪った能力は、新たな持ち主が使用する事が可能
モノリスのランク、容量、適合率
SS 10000〜15000 10%
S 10000〜7000 20%
A 5000〜7000 30%
B 3000〜5000 50%
C 2000〜3000 80%
D 1000〜2000 100%
E 〜1000 100%
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