じつは義妹が義妹の親友と買い物に出かけまして……

あるふぁ

晶はひなたとショッピングセンターに行ったらしい

「ただいま――」


 その声を聞いて、俺は先程までやっていたエンサム3を急いで片付け始める


 ちょうど片付け終わったところで、義妹いもうとの晶がリビングに入ってきた。今にも飛び跳ねそうな様子で。


「おかえり晶。ひなたとのショッピングは楽しめたか」


 晶の表情からして、聞くまでもないが一応聞いておく


「もちろん♪ ひなたちゃんと話すのが楽しくて、あっという間だったなぁ」

「目的のものは買えたか?」

「買わずに、試着して写真だけ撮ってきた! ひなたちゃんは買ったみたい」


 晶は、買いたいものがあるから、ひなたと二人で選んでくると言っていた。晶曰く、ひなたも同じものが必要だったそうだ。俺は、晶やひなたが何を買おうとしていたのか知らない。今の話からすると洋服だろうか。


「兄貴。お出かけの話もいいけど、僕は大好きな兄貴としたい! というか、今からする!」

「OK!」


 そういう流れになるとは思っていたので心の準備はできている。というか、そのために何度も練習した。今日もしたし、大丈夫だろう。


 一つ想定外だったのが、「大好きな兄貴」という空耳が聞こえたことだが、それは所詮空耳なので無視だ


「それじゃあ、しよっか……でも、その前に。兄貴、もしかしてさっきまでやってた?」


(す、鋭い……)


 晶の指摘通り、俺は晶が出かけている間、エンサム3の練習をしていたのだ。流石に、これ以上連敗記録を更新するわけにはいかない。


 否定することでもないので「そうだ」とだけ答えておいた。晶も「そう……」とだけ。いつもより控えめだな、と思った矢先


「もしかして、僕に勝とうとしてるの?」


 といつも通り、わざとらしく煽ってくる。

 そんな挑発に、もちろん乗った


 そして、結果は――完敗。惜しいと言うこともなく敗北。

 というか、晶、やるたびに強くなってるような……


「ありがとう、兄貴。でも、兄貴はもう少し、しないとね? 良いストレス発散にはなったけど」


 腹立つ言い方。でも、事実なので否定しようがない。

 それに、相手が弱すぎるのもつまらないだろ――いや、晶はそういうタイプじゃないか


「負け続けた兄貴には僕からご褒美があります!」

「なんだいきなり。ご褒美?」

「そう、ご褒美。兄貴が気になってることに答えてあげるよ!」

「俺が……気になってること?」

「兄貴、僕が今日、何を見にいってたのか気になってるでしょ?」

「いや、気になって――」

「気になってるよね? ね?」


 圧が凄い。普段は、あんなに可愛らしいのにどうしてこんなに迫力が出るのだろう。


「はい。そうです」

「よろしい」

「ところで、これのどこがご褒美なんだ?」

兄貴にとっては、気になることでしょ?」

「何で知ってんだよ!」


 そういいながら俺は心のなかで叫んだ


(晶まで知ってるのかよぉおおおおお)


「認めてるし」

「……学校でそう言われてるって聞いたから」

「まあいいや、それじゃあ、何を買ってたのか発表します――」


 正直、助かった。晶が話題を転換してくれないと、気まずい感じになっていただろう。俺の経験がそう言っている。


「水着です」

「みずぎ?」


 思わずオウム返しをしてしまった。

 え? 水着? あの水着?

 俺は、正直混乱していた。海水浴の季節はとっく過ぎているのになぜ?


(こんな時期に買いに行くか、普通?)


 これが俺の正直な感想だった。


「そう、水着」

「どうして?」


 俺は正直に疑問をぶつけた。


「水着が少し傷んでたから、母さんに相談したら『脆化ぜいかじゃないか』って」

「それでは、なぜ、水着の状態を知った?」

「着てみたから」

「なぜ」

「僕が水着でベッドに潜り込んでたら、兄貴がどんな反応をするか確かめるため……?」

「そんな必要はない」


 本当に、この義妹には困らされる。俺にできるのは、そんなことが起きないことを願うことぐらいだ。


「それで、試着した水着の写真、撮ったから見せるね」

「いや、見せてほしいとは一言も……」

「じゃあ、水着の写真、見たくないんだ……」

「…………」

「何、その間? やっぱり兄貴ってば見たくて仕方ないの?」


 なんて答えれば良いのだろう。正解がわからない。


「回答がないので、10秒後に!」


「5」

「4」

「3」

「待て、心の準備が……」

「こちらでーす!」


 写真を見た瞬間、騙されたと思った。

 なぜなら、見せられた写真のが商品の値札と水着の写真だったからだ。

 確かに、晶は「試着して写真を撮った」と言ったので、嘘はついていない。勝手に俺が勘違いしていただけ。

 しかし、相手が誤解をすると分かっていて、面白がってやっているのなら話は別。だが、それを指摘するのは、良い手とはいえない。


「残念がってるね、兄貴。期待してなかったはずでしょ?」

「いや、残念がってない!」

「残念がってる兄貴のために――」


 そう言って、晶は脱ぎ始めた。なんの前触れもなく。

 そうして現れたのは、水着――

 もっと言えば、水着の中でも、結構露出度高めのやつ……


「何で着てんだよ!」

「兄貴が見たいと思って」

「なぜそう思った」


 そう言いながら、俺は後ずさりを始める。近づかれたら、事態が悪化することが目に見えている。

 だから、危機回避行動をとることにした。


「ほら、遠ざからないで間近で見てみたら?」


 晶は、俺をからかってくる。自分自身も恥ずかしいはずなのに……


「兄貴が距離をと――――あっ……」


 駆け寄ってきた晶が延長コードに足を引っ掛けて――――


「あ……」

「あ……」


 互いに目が合う。俺が晶を受け止めようとしたら、晶が俺を押し倒す形になった。水着でこの体勢はヤバい……

 社会的にも、俺的にも。後者のほうがヤバいかもしれない。


 晶の顔が真っ赤だ。俺の顔もきっとそうなっているだろう。

 互いに身動きが取れなくなる――じゃなくて、一刻も早く体をどかさないと……

 押し付けられてる2つの物体も今は凶器と化している。


 一刻も早く動こうとした結果、次は俺が晶を押し倒す形になった。

 俺も、晶も、冷静さを欠いていた。一旦落ち着こう――って無理に決まってるだろぉおおおおお!




 気づかなかったが晶が、寝ていた。呑気に。


 寝ているときまで、顔が真っ赤なのはなぜだろう。そんなことを考え、現実逃避してしまうほどには、余裕がなかった。

 こっちはそれどころじゃないのに! というか、こんな状況下で寝られるメンタルが羨ましいわ!


 今すぐ文句を言いたかったが、押し倒した状態はどう考えてもマズいので、ひとまず起き上がることにした。

 先ほど、寝てしまった晶を起こそうとするが……一向に起きない。水着の状態で、床で寝かせるわけにもいかないので、ベッドまで運び、自分も休むことにしようと思ったのだが、どうやら、そう上手くはいかないらしい。

 ベッドに辿り着くまでの間、柔らかいやら良い匂いがするやらで大変な思いをすることになるのだった。






──────────

 今日は、ひなたちゃんとお出かけ!

 水着の件をLIMEで相談したら、一緒に買いに行こうって言ってくれた。

 ひなたちゃんも買い替えようとしてたみたい。小さくなってたらしくて……。

 ひなたちゃん、もうあんなに大きいのに、まだ大きくなってるなんて……。

 ちょっと羨ましい。

 11時待ち合わせだったけど、楽しみすぎて、待ち合わせ時間の30分くらい前に来ちゃった。

 そしたら、既にひなたちゃんも着いてた。

 余裕がある感じが流石だなって思った。

 一緒にランチ食べて、色んなお店を見て回って、水着見て、そんな感じですぐ終わっちゃった。

 ひなたちゃんといると時間があっという間。

 お出かけが終わって、家に帰って、兄貴とエンサム3をやった。今日も兄貴、弱かった。

 ご褒美にドキドキしてる兄貴がちょっとかわいいと思った。

 ハプニングも起きちゃって、転びそうになったとき、兄貴が守ろうとしてくれた。かっこよかった。

 結果的に兄貴を押し倒しちゃった。そのあと、兄貴に押し倒されて、ドキドキした……

 恥ずかしくて、寝たフリをしてたら、兄貴がベッドまで運んでくれた。やっぱり気づいてたよね……

 それでも運んでくれる。やっぱり優しい。

──────────

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