第6話鳴海京弥の恋愛相談 修学旅行編
季節は秋になり少し肌寒くなってきた。
最近では地球温暖化の影響で夏がめっちゃ暑いと思ったら急激に寒くなりあっという間に冬になる。
秋の期間はかなり短く感じている。
今に四季というのはなくなってしまうんじゃないかとさえ思えてしまう。
そんな秋に高校生2年生にとって1番のイベントと言っても過言ではない学校行事がある。
修学旅行である。
大半の学生にとっては最高の行事だろうが一部の学生にとっては正直行きたくないという学生もいるだろう。
そんな修学旅行の説明を今まさに黒井先生から聞かされている。
大半の生徒は先生の話を聞かずに何処に行こうかと目を輝かして楽しそうに話している。
そして、俺はというと相変わらずクラスに馴染めずにいた。
何人かとは話したりするが友達ではない。
単なるクラスメイトの1人に過ぎないのである。
修学旅行ではクラス内でグループを作り団体行動をしなくてはならない。
そのグループは大抵は仲が良い者達でグループを組む。
そして、さっきも言ったが俺にこのクラスには友達はいない。
つまり、余り物なのだ。
余った者同士が強制的にグループにされる。
案の定俺は余り物として余った者同士でグループを作らされた。
この半年近く同じクラスにいるが殆ど話したことがない者同士で修学旅行の間行動を共にしなくてはならない。
まぁここから友情が芽生える可能性もないとは言い切れないがほぼないだろうな。
そんなことを考えながらも修学旅行の話しは進んでいった。
放課後になり俺はいつも通り部活に向かおうとした時に思わぬ相手から話しかけられた。
鳴海「よぉ。ちょっといいか?話があんだけど。」
彼の名前は鳴海京弥(なるみきょうや)俺と同じクラスで修学旅行で同じグループになった人だ。
鳴海君は背が高く少し近寄りがたい雰囲気を出している印象があるが勉強はちゃんとやっているしサッカー部で活躍しているのは知っている。
そんな鳴海が俺と話したい事となると修学旅行関連かな?
昌磨「いいよ。ここで話す?」
鳴海「いや、ちょっと場所変えてもいいか?」
昌磨「分かった。」
俺は鳴海君に付いて行くと体育館裏まで連れて来られた。
俺は今からカツアゲされるのか?
そんなことを考えているが鳴海君から話す様子がない。
少し緊張しているように見える。
俺は恐る恐る鳴海君に話しかけることにした。
昌磨「えっと、話って修学旅行の件かな?」
鳴海「あぁ、そうだ。実は海城に頼みたいことがあってな。」
昌磨「頼みたいこと?」
鳴海「海城はアイリスさんと同じ部活だよな?」
昌磨「えっ?アイリス?確かに同じ部活だけど、それがどうかした?」
なんでアイリスの名前が出てくるんだ?
鳴海「いいか?今から言うことは誰にも言うなよ?」
昌磨「あぁ、分かった。」
鳴海「俺はアイリスさんのことが好きなんだ。」
昌磨「えっ?!マジか。」
衝撃的展開だ。まさか鳴海君がアイリスのことが好きって鳴海君とは今までそんなに話したことも無かったのにいきなりそんな秘密を共有する関係になるなんて誰が想像出来る?
鳴海「それで、相談なんだが今度の修学旅行の時に告白しようと思ってる。だから、協力してくれないか?」
昌磨「修学旅行で告白ってそもそも鳴海君はアイリスとどんな関係なんだ?」
鳴海「海城は転校してきたから知らないかもしれないが、アイリスさんとは去年同じクラスだったんだよ。」
鳴海「去年の俺は今と同じでクラスに馴染めなくてさ。周りの奴らが俺と距離をとっていたのにアイリスさんは俺に普通に接してくれたんだよ。」
なるほどな。アイリスらしいと言えばらしいか。
鳴海「そんなアイリスさんに俺はなんで俺に構ってくれるのか聞いてみたんだよ。そしたら、クラス委員だから委員長として行動しているって言われてさ。」
鳴海「そりゃあそっかって思ったんだけどよ。でも、今まで俺にこんな風に接してくれる奴いなかったからさ。気が付いたら惚れてたんだよな。」
昌磨「なるほど。それで修学旅行の時に告白しようと思ったってことか。」
鳴海「あぁ。2年生になって話す機会もなくなってさ。このままじゃ駄目だと思ってよ。だから、告白しようって決意した。」
昌磨「分かった。出来る範囲で協力するよ。」
鳴海「マジか?!ありがとうな。海城!」
昌磨「それで、どうやって告白するつもりなんだ?」
鳴海「いや、それは全く考えてない。なぁどうしたらいいかな?」
昌磨「うーん。告白するなら二人っきりにならないといけないだろ?修学旅行中に二人っきりになれるとしたら自由時間の時じゃないか?」
鳴海「なるほどな。なら、自由時間の時にアイリスさんを呼び出せばいいんだな。」
昌磨「そうだな。でも、呼び出していきなり告白しても厳しいんじゃないか?」
鳴海「確かにな。驚かせちまうか。」
昌磨「告白する前にデートをするのはどうかな?」
鳴海「デート?!アイリスさんとか。いや〜厳しくないか?」
昌磨「確かにデートに誘う口実が必要だな。」
鳴海「ていうか、多分二人っきりでデートはキツイって。海城も居てくれよ!」
昌磨「俺も?いや、俺がいたら意味ないだろ?もし不安なんなら少し離れた場所からサポートするとかの方が良い気がする。」
鳴海「分かった。ならもう何も言わねぇよ。指示は任せた。」
昌磨「そうなると呼び出す口実を考えないとな。」
アイリスを自由時間に呼び出す口実。
普通に呼び出しても断られそうな気がする。
何かしらの理由が必要だな。
昌磨「うーん。上手くいくか分かんないけどこういうのはどうかな?」
俺は鳴海君に俺の考えを伝えた。
鳴海「なるほどな。それならアイリスさん来てくれるかもしれないな。」
昌磨「とりあえず、アイリスに自由時間の予定があるかどうか確認してから聞いてみようか。それじゃあ、今から一緒に部室に行こうか。」
鳴海「分かった。」
俺と鳴海君は相談部の部室に向かった。
部室に向かうとアイリスだけが部室に居た。
茜ちゃんは部活の助っ人かな?
昌磨「よっす。依頼人を連れて来た。」
鳴海「久しぶりだな。アイリスさん。」
アイリス「そうね。1年生の時以来かしら。依頼人は鳴海君でいいのかしら?」
鳴海「あぁ。実は相談部に相談したいことがあってさ。俺からは言い出しにくいから海城頼む。」
昌磨「分かった。鳴海君なんだけど、実は女性と上手く話せないことに悩んでるらしいんだよね。」
アイリス「女性と上手く話せない?何か心当たりはあるかしら?」
鳴海「中学の時は男子校でさ。女子と話す機会が無かったんだよな。それでアイリスさんも知ってると思うけど、高校でもあまり周りの人と話せなくてよ。」
鳴海「けど、このままじゃ駄目だと思ってさ。だから、修学旅行を利用するのはどうかと思ってさ。」
アイリス「なるほどね。だけど、具体的にどうしたらいいかしら。」
昌磨「それで、実は俺と鳴海君は修学旅行で同じグループになったんだけど、良かったら自由時間の時にアイリスと一緒に3人で行動するのはどうかなって思ったんだけど、どうかな?」
アイリス「私と?でも、鳴海君は私となら普通に話せてるじゃない。他の人の方がいいんじゃないかしら?」
昌磨「だからこそアイリスが適任なんだよ。アイリス以外の女子だと鳴海君と会話すら出来ないからね。」
アイリス「分かったわ。私で力になれるか分からないけど、協力するわ。」
鳴海「ありがとう。」
なんとかアイリスと一緒に行動することが出来そうだ。
それからしばらくして修学旅行の日を迎えた。
行き先は京都、奈良方面で初日は観光名所を周り2日目も観光名所を周るのと伝統工芸の体験等を行った。
今は今日泊まる旅館でくつろいでいるのだが、鳴海君が明日の自由時間の事で話したいということで旅館の外で2人で話すことになった。
鳴海「明日なんだけどさ、こんな感じで周ろうと思ってるんだけど、どうよ?」
鳴海君は明日行く場所ややりたい事が書かれたメモ帳を見せてきた。
昌磨「えっと、これは鳴海君が行きたい場所とやりたい事を書いたのかな?」
鳴海「そう。アイリスさんに俺の事を知って貰おうと思ってよ。」
昌磨「なるほど。俺は恋愛経験がないからこれが駄目なのかどうかは分からないけど、もう少しアイリスの行きたい場所とかも入れてみたらどうかな?」
鳴海「アイリスさんが行きたい場所か。俺はアイリスさんが好きな物とか何にも知らないからな〜。海城は何か知ってるか?」
言われてみると俺もアイリスのことは何も知らないな。
本を読むのが好きなのと紅茶を確か良く飲んでるイメージかな。
昌磨「ごめん。俺もそんなに知らないからアイリスに俺から聞いてみようか?」
鳴海「そうだな。頼む。」
俺はアイリスに電話をかけた。
アイリス「はい。貴方から電話なんて珍しいわね。要件は明日のことかしら?」
昌磨「察しが良くて助かるよ。明日の自由時間なんだがアイリスは何処か行きたい場所とかあるか?」
アイリス「私?そうね。元々適当に街中を散策して本屋さんにでも行こうと思ってたのだけれど特に行きたい場所というのはないわ。だから、貴方達に任せるわ。」
昌磨「分かった。じゃあ、また明日。」
アイリス「えぇ。また明日。」
鳴海「どうだった?」
昌磨「特には決めてないそうだ。だから、鳴海君が考えたデートプランでいいんじゃないかな?」
鳴海「了解だ!じゃあまた明日は頼むな。」
そして迎えた修学旅行最終日。
最終日は朝から自由時間で夕方にはホテルに帰って来なくてはならない。
そしていよいよ鳴海君とアイリスのデートが始まろうとしていた。
鳴海君は駅前でアイリスを待っているところだ。
俺は少し離れた場所でその様子を伺っている。
アイリスには3人で行動すると伝えたが急遽俺が来れなくなったという事にして今から2人でデートをしてもらう。
アイリスには騙すような真似をして悪いと思うがこれも依頼を達成する為だ。
終わったら何か奢ろう。
昌磨「あ〜。もしもし?聴こえてる?」
鳴海「あぁ、聴こえてるぞ。」
昌磨「もう少しで約束の時間だからそろそろ来ると思うから頑張れよ。」
鳴海「あぁ、頑張るよ。」
鳴海君と連絡が取れる事を確認し終えたところで向こうからアイリスがやって来た。
アイリス「お待たせ。早かったわね。」
鳴海「おぅ。アイリスさんを待たせる訳にはいかないだろ?あと海城だけど急遽別の用事が出来たらしくてよ。来れなくなったらしい。」
アイリス「あらそうなのね。なら仕方ないわね。」
鳴海「まぁ時間も勿体ないしそろそろ行くか?」
アイリス「えぇ、行きましょう。」
俺はアイリスにバレないように距離を空けながら2人に付いて行った。
最初の目的地は伏見稲荷大社だ。
真っ赤な鳥居が千本以上あるらしい。
鳴海「すげぇこんなに沢山の鳥居を観るのは初めてだ!」
アイリス「そうね。凄く綺麗だわ。」
鳴海「だけど、なんでこんなに鳥居があるんだろうな?」
アイリス「なんでも江戸時代に願いごとが「通るように」または「通った」ことへのお礼として、鳥居を奉納する習慣があったそうよ。」
鳴海「へ〜。流石アイリスさんだな。」
アイリス「別に大したことじゃないわ。それよりお参りしましょうか。」
鳴海「え〜と、なんかお参りの時のやり方があったよな。何だっけ?」
昌磨「二礼二拍手一礼な。」
鳴海「あ~、そうだった。思い出した。」
鳴海君とアイリスは無事にお参りを済ませた。
鳴海「アイリスさんは何をお願いしたんだ?」
アイリス「お願いなんてしてないわ。今日までの出来事を報告しただけよ。」
鳴海「なんだそれ?お願い事とかないのか?」
アイリス「願い事は誰かにお願いするのではなく自分で叶えるものだと私は思うわ。」
鳴海「なるほどな。じゃあお願い事をした俺がバカみたいじゃねぇか。」
アイリス「そんなことはないわ。人それぞれ考え方が違うだけよ。ちなみに、何をお願いしたのかしら?」
鳴海「ナイショだ。もし、願いが叶ったら教えるよ。」
アイリス「そう。なら、願いが叶うと良いわね。」
2人は伏見稲荷大社から次の目的地に向かった。
次の目的地は京都水族館だ。
京都水族館には日本最大級のオオサンショウウオがいる。
鳴海「水族館なんて久しぶりに来たぜ。」
アイリス「私は初めて来たわ。」
鳴海「マジか。子供の頃に家族とかと来なかったのか?」
アイリス「そうね。行かなかったと思う。」
鳴海「そうなのか。なら、多分今日は驚くと思うぜ。」
アイリス「そうね。楽しみだわ。」
2人は水族館の中に入り展示されている魚を見ている。
その2人を遠くから見ている俺。
俺は何をやってるんだと一瞬思ってしまった。
鳴海「おっ、あれがオオサンショウウオか。でけぇな。」
アイリス「最大で全長150センチメートルまでなるそうよ。」
鳴海「マジか。そんなのに出くわしたら流石にビビるな。」
アイリス「鳴海君でも苦手な物はあるのね。」
鳴海「そりゃあ、あるだろ。アイリスさんも何かあるんじゃないか?」
アイリス「私?私は虫かしら。」
鳴海「虫か〜。確かに女子は苦手かもな。」
アイリス「さぁ次に行きましょう。」
鳴海「おっおぅ。」
アイリスの後ろを鳴海が追いかけていくあんなに積極的なアイリスは初めて見た。
どうやら水族館を楽しんでいるようだな。
俺も置いていかれないようにしないとな。
2人が向かった先にはペンギンが展示されていた。
鳴海「ペンギンだな。水中だとあんなに早いのに陸だとヨチヨチ歩きなのが面白いよな。」
アイリス「そうね。あの元気なペンギン茜さんに似ているわ。」
鳴海「茜さんって誰だ?」
アイリス「貴方は会っていなかったわね。私と同じ相談部の後輩よ。」
鳴海「そうなんだ。その茜って子はそんなに元気なんだ?」
アイリス「そうね。いつも元気で元気過ぎるぐらいね。あの子にもお土産を買っていかないといけないわね。」
鳴海「そう言えば、アイリスさんは何で相談部に入ったんだ?」
アイリス「成り行きでかしら。最初は本が読めればそれでいいと思っていたのだけれど、昌磨や茜さんに振り回されて気が付いたら相談部の一員になっていたわ。」
鳴海「そうか。でも、その顔を見るにそこまで嫌でもないんじゃないか?」
アイリス「その顔って私どんな顔をしていたのかしら?」
鳴海「楽しそうな顔をしていたぞ?」
アイリス「そう。」
鳴海「そろそろ次に行くか?」
2人はそのまま次の魚を見に行った。
それから一通り見て回り水族館から出てきたところで2人は昼ご飯を食べることにしたようだ。
近くの飲食店に入って行った。
俺はコンビニでパンと飲み物を買い外で2人の会話を聞きながら昼食を食べることにした。
アイリス「依頼の件だけれど私とは普通に話せているようだし他の人とも大丈夫じゃないかしら?」
鳴海「そうだな。アイリスさんのお陰で少し自信が持てた。ありがとう。」
2人は食事を終えてお店から出て来た。
アイリス「それでこの後はどうするのかしら?」
鳴海「この辺を少し散策でもするか。」
アイリス「分かったわ。」
2人はこの辺を散策するようだ。確かこの後は京都タワーに向かうはずだな。
アイリス「ごめんなさい。お手洗いに行ってくるから少し待っててくれるかしら?」
鳴海「了解。」
アイリスはどうやらトイレに向かったようだ。
昌磨「もしもし?俺だけど聴こえてる?」
鳴海「あぁ、聴こえてるぞ。」
昌磨「傍から見てたが問題なさそうだな。」
鳴海「あぁ、何とかな。」
昌磨「この後はしばらく散策してから京都タワーに行って展望室で告白するんだよな?」
鳴海「あぁ、少し緊張してきたぜ。」
昌磨「今の調子で頑張れよ。」
鳴海「あぁ、ありがとうよ。」
それからしばらく待ったがアイリスはトイレから戻って来なかった。
鳴海「流石に遅くないか?」
昌磨「そうだな。まさか迷子にでもなったんじゃないだろうな?」
鳴海「少し様子を見に行くか。ん?すまん。電話だ。」
昌磨「誰からだ?アイリスとはまだ連絡先交換してないよな?」
鳴海「あぁ、非通知だ。出てみるぞ。もしもし?」
非通知の相手「鳴海京弥だな?」
鳴海「あぁ、お前は誰だ?」
非通知の相手「お前の女は預かった。返して欲しかったら今から指定する場所まで1人で来い。来なかったらこの女がどうなるかわかるな?」
鳴海「分かった。お前の指示に従うからその子には手を出すな。」
それから非通知の相手は鳴海君に指定した場所を教えて電話を切った。
昌磨「誰からだったんだ?」
鳴海「分からない。ただアイリスさんが拐われたようだ。」
昌磨「拐われたってマジか?!」
鳴海「向こうは俺1人で指定した場所に来いって言ってきてる。つまり、相手は俺に会いたいらしい。」
昌磨「会いたいってそんなの罠に決まってるじゃないか。相手に心当たりはないのか?」
鳴海「ある。俺は中学の時に不良のチームに入ってたんだよ。そんでチーム内で揉めて結果的にはチームは解散になった。だから、その事を根に持ってる奴の可能性が高い。」
昌磨「その連中がアイリスを拐って鳴海君を罠に賭けようとしてるのか。」
鳴海「あまりもう時間がねぇ。俺は今から指定された場所に向かうから海城も付いてきてくれねぇか?アイリスさんが開放されたら安全な場所に連れて行って欲しい。」
昌磨「分かったけど、鳴海君は?」
鳴海「俺が巻いた種だ。俺がなんとかするさ。ほら、行くぞ!」
俺達は非通知の相手が指定してきた場所に向かった。
場所は何処かの会社の倉庫みたいだ。
鳴海「入り口はあのシャッターと隣にドアが1つか。」
昌磨「外からじゃ中の様子が分からないね。」
鳴海「仕方ねぇ。俺は1人で行くからアイリスさんが開放されたら後は頼む。」
昌磨「ちょっと待って誰か出て来た。」
倉庫のドアから1人出て来た。格好はジャージにパーカーを被っていてマスクもしていて顔は見えづらい。
鳴海「連中の仲間だろうな。トイレにでも行くのか?」
昌磨「鳴海君。俺にちょっと考えがあるんだけどいいか?」
倉庫内
倉庫内には20人ぐらいの不良が集まっている。
その中には女性の姿もあった。
アイリスだ。
アイリスは両手が縛られて口にもロープで縛られていて喋れない状態だった。
倉庫内では不良達が雑談をしながら鳴海が来るのを待っていた。
倉庫内のドアが開くとさっきトイレに行った奴が戻ってきた。
不良A「鳴海が来た。」
その不良の後直ぐに鳴海がドアから中に入ってきた。
鳴海「約束通りに1人で来たぞ。その子は離せ。」
林田「良く来たな。京弥。久しぶりだな、中学以来だな?」
鳴海「林田。やっぱりお前らか。」
林田「なんだよ、つれねぇな。昔みたいに源って呼べよ。」
林田源(はやしだげん)中学の時に鳴海と同じ不良のチームに入っていたメンバーの1人。
鳴海「俺はもうお前らとつるむ気はねぇよ。いいからあの子を開放しろ。俺に用があんだろ?」
林田「コイツを開放するかはお前次第だ。京弥、俺達のチームに入れ。」
鳴海「さっきも言ったがもうお前らとつるむ気はねぇよ。」
林田「お前に拒否権なんかねぇよ。おぅ!お前ら教えてやれや!」
林田の号令で他の不良達が鳴海を殴り始めた。
林田「殴られて少しは冷静になったんじゃねぇか?もう一度聞くぞ?俺達のチームに入れ!」
鳴海「お前は昔と何にも変わらねぇな。」
林田「何だと?」
鳴海「下の奴らを使ってお前は何もしねぇ。まだ俺に負けたことを気にしてんのか?」
林田「言うじゃねぇか。なら、お前の挑発に乗ってやるよ。お前らは下がってろ俺がコイツを教育しなおす。」
鳴海「何が教育だ。まともに学校に行ってねぇ奴が。」
林田「うるせぇんだよ。てめぇは!」
林田は鳴海を殴り始めた。
林田「俺はお前が気に食わなかった。兄貴に認められたお前が。」
鳴海「だから、俺がお前の兄貴からチームのリーダーに任命された時にお前は俺にタイマン張れって言ってきたんだよな。けど、結果は俺の勝ちだった。」
林田「だから、俺は俺のチームを作ってお前らをぶっ潰すつもりだった。なのに、お前は勝手にチームを解散させやがった。」
鳴海「俺は元々不良のチームなんかに興味無かったんだよ。けど、お前の兄貴には憧れてたから誘われた時は嬉しかったのを覚えてる。」
林田「お前は勝手にチームを解散してお前だけが俺達の前から姿を消した。けどよ、そんなのが許されると思ってんのか?俺の拳はもう上がってんだよ。」
鳴海「なら、気がすむまで殴れや。」
林田「言われなくてもそうしてやるよ。」
林田は鳴海を殴り続けた。周りの不良も黙ってそれを傍観している。
そんな時に1人の男が声をあげた。
不良A「そこまでだ!もう鳴海君を殴るのは止めろ!」
その男の方を全員が注目すり。
林田「あ?何やってんだお前?何勝手にその女を開放してんだよ!」
不良A「何でって俺が鳴海君の仲間だからに決まってるだろ?」
不良Aは被っていたパーカーをずらしてマスクもとり素顔を見せた。
林田「誰だてめぇは?」
昌磨「お前らに名乗る必要はないだろ?そんなことより今すぐにここから逃げた方がいいんじゃないか?俺はここに入る前に警察に通報しておいたんだ。そろそろ警察が来る頃だぞ?」
不良B「兄貴。どうします?」
林田「ちっ。仕方ねぇ、行くぞ。」
不良B「京弥はもういいんですか?」
林田「コイツはもういい。こんな腑抜けをチームに入れてもしょうがねぇしな。」
そう言うと不良達はバイクに乗ってシャッターを開けて逃げて行った。
昌磨「ふぅ。何とかなったな。あっアイリス今口の縄も解くな。」
俺はアイリスの口に結んであった縄を解いた。
アイリス「貴方その格好は何?ていうか何でここに?」
昌磨「これはここの不良から借りた。そんなことより俺達も行くぞ。歩けるか?」
アイリス「えぇ。私より鳴海君が心配だわ。」
昌磨「そうだな。鳴海君。大丈夫か?今救急車を呼ぶから。」
鳴海「悪いな。けど、助かったわ。お前のお陰でアイリスさんを助けられた。」
昌磨「俺は大したことしてないよ。あんまり無理するなよ。あんなに殴られたんだから。」
鳴海「俺なら大丈夫だ。殴られ慣れてるからな。それより、アイリスさんも怖い思いさせて悪かったな。」
アイリス「私は大丈夫よ。今は自分の心配をしなさい。」
鳴海「あぁ。ありがとう。」
それから救急車が到着し俺達は病院に運ばれた。
その後鳴海君は病院で治療された。
先生も集まりかなり怒られた。
こうして俺達の修学旅行は終わったのだった。
結果的に鳴海君はアイリスに告白することが出来なかった。
修学旅行から数日後に鳴海君と話して告白するのはもう少し後にすると決めたようだ。
その時はまた協力させられるんだろうか?
まぁ仕方ないか。
それが相談部の仕事だからな。
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