第3話生徒会長 古井円華の依頼 体育祭編

五月病。子供の頃に誰もが1度はなったことがあるのではないだろうか?

特に新入生や新社会人等がなりやすいらしいが。

俺は常に五月病の症状が出ているんだが、どうしたらいいですかね?

そんなことを考えながらも無意識に身体は学校へ向かっていた。

あぁ今日もまた俺が学校生活が始まる。


黒井「え〜。今年も体育祭の時期が来た!2年B組は赤組に決定した。それで、体育祭開催に向けて実行委員を募集するがやりたい者はいるか?」


黒井先生の問いかけに手を上げる者はいなかった。当然だ。実行委員なんて面倒なことを率先してやりたい者などいないだろ。

そう思っていると。


長谷川「先生!私やります。実行委員。」


黒井「おぉ〜。長谷川。やってくれるか。」


長谷川「はい。1年の時にもやった経験があるんで力になれると思います。」


マジか。流石はクラス委員長と言ったところか。率先して面倒な仕事をやろうとするとは。

長谷川清美(はせがわきよみ)は2年B組のクラス委員長である。

性格も明るく誰とでも分け隔てなく接している印象だ。

まさにTHE委員長って感じの女の子だ。


黒井「よしっ。女子は決まったな。あとは男子も1名決めなきゃならんのだが。誰かいるか?」


再び黒井先生から問いかけられたがその瞬間クラスの男子全員が下を向いた。


黒井「まぁいい。もし実行委員になりたい者がいたら私の所まで来なさい。以上。」


ホームルームが終わり俺はいつも通り部室に向かった。

それにしても体育祭か。

運動が出来る奴にしたら確かにお祭りかもしれんがそれ以外の奴からすると只々面倒なだけだ。

こういうイベントにはあまり関わらないに限るのだ。

そんなことを考えながら歩いていたら部室に着いた。

俺はゆっくりと部室の扉を開けた。


茜「あっ。先輩!お疲れ様っす!」


昌磨「あぁ。お疲れ。今日は助っ人はないんだ?」


茜「そうっす!今日は相談部の先輩2人と遊ぼうと思いまして。ジャン!トランプ持ってきたっす。」


昌磨「遊びって一応部活動って言いなさい。誰かに聞かれたら面倒だ。」


茜「すみませんっす。じゃあ部活動やりましょう!」


昌磨「しょうがないな。」


茜「アイリス先輩もやるでしょ?」


アイリス「私は遠慮しとこうかしら。」


茜「アイリス先輩もしかして勝つ自信ないんすか?」


アイリス「そんな簡単な徴発には乗らないわよ。」


茜「ちぇ。あっそうだ!もうすぐ体育祭っすね!先輩方は何組っすか?私は赤組っす!」


アイリス「私は白組よ。だから、B組の昌磨は赤組でしょ?」


昌磨「そうだよ。」


茜「体育祭楽しみっすね。」


昌磨「茜ちゃんは体育祭好きだろうなって思ってたよ。運動得意だし。」


茜「色々な競技をやるの楽しいじゃないっすか!」


アイリス「私にはいまいち楽しさが分からないわ。」


茜「じゃあ、今年は楽しい体育祭にしましょうよ!」


アイリス「そうね。善処するわ。」


コンコン!

そんな他愛もない話をしていたら部室の扉をノックする音が聴こえた。


アイリス「はい。どうぞ。」


古井「失礼する。」


入って来たのは女性だった。見た感じ上級生かな?とても堂々とした立ち振る舞いだ。


茜「どうぞどうぞ。」


古井「すまないな。ありがとう。」


アイリス「それで、用件を聞かせてもらってもいいかしら?生徒会長。」


昌磨「生徒会長?!」


茜「生徒会長さんっすか!はじめましてっす!1年の河井茜っす。」


古井「そんなにかしこまらなくていいよ。3年の古井円華(ふるいまどか)だ。一応生徒会長をやらせてもらっているよ。」


古井「ここに来たのは君達相談部に相談したいことがあってね。」


アイリス「はい。」


古井「相談事とはもうすぐ開催される体育祭についてだ。」


昌磨「体育祭ですか。」


古井「体育祭である人物に良い思い出を作ってやりたくてな。」


昌磨「ある人物というと?」


古井「私の弟の古井真一(ふるいしんいち)だ。」


昌磨「弟さんも同じ高校なんですか?」


円華「そうだ。1年生だ。」


茜「古井君なら知ってるっすよ。同じクラスっすから。」


円華「いつも弟が世話になっているな。」


茜「いえいえ。そんな世話なんてしてないっすよ。」


アイリス「それで、その弟さんに体育祭を楽しんで欲しいって話で良かったかしら?」


円華「あぁ。その解釈で構わないよ。」


昌磨「ちなみに、なんで弟さんに楽しんで欲しいんですか?」


円華「弟は幼い頃から虚弱体質でな。高校に入るまで運動会に参加したことが無かったのだ。だが、弟も高校生になり今年は体育祭に出ても大丈夫だろうという話になった。」


円華「だから、姉としてそして生徒会長として弟に初めての体育祭を良い思い出にしてやりたいのだ。」


アイリス「なるほど。相談事は分かりました。それで、私達は弟さんが体育祭で活躍出来るようにサポートすればいいのかしら?」


円華「うーん。少し解釈が違うかな。別に活躍する必要はないんだ。先程も説明したが弟は運動があまり得意ではない。だから、今から練習しても対して結果は変わらないであろう。」


アイリス「なら、どうすればいいのかしら?」


円華「運動以外で楽しませてやってほしい。」


茜「運動以外っすか。うーん。難しいっすね。」


アイリス「体育祭で運動以外。何があるかしら?」


昌磨「応援団とかってどうかな?」


アイリス「応援団?」


昌磨「そう。応援団の応援合戦。あれ、もしかしてこの学校には無い?」


アイリス「去年はそのような催しは無かったと思うけれど。」


昌磨「そうか。なら、別の案を考えるか。」


円華「いや、悪くない案だ。確かに最近では応援合戦は行われていないが過去には行われていたという記録もある。」


円華「それに、無いからといって今年もやらないと決めつけるのは早い。まだこれから如何様にも出来よう。」


昌磨「それじゃあ、応援団をやるって方向でいけばいいですか?」


茜「応援団!いいっすね!」


円華「それを決めるのは私ではない。体育祭実行委員だ。」


アイリス「それじゃあ、体育祭実行委員に応援団をやるように働きかければいいのかしら?」


円華「働きかけるか。少し弱いな。それでは、応援合戦が開催される可能性は低くなる。」


昌磨「確かに、毎回開催されてるならまだしもわざわざ新しいことをやろうって考える奴は少ないか。」


円華「そうだ。だから、君達の中から実行委員になる者を決めればいい。」


昌磨「あぁ。やっぱりそうなりますか。」


円華「まぁ無理にとは言わんがな。」


アイリス「分かりました。やりましょう。実行委員。」


昌磨「マジか。」


円華「うむ。それでは、とりあえずはその方向で頼む。私も協力は惜しまないよ。お互い良い体育祭にしようではないか!」


こうして生徒会長の弟さんに体育祭を楽しんでもらうという新しい依頼が始まった。


昌磨「さて、生徒会長からの相談事の件だが、実行委員をやった方が良いということなんだが実行委員は各クラスから男女1名ずつ選ばれるみたいなんだけどそっちのクラスはもう決まってたりする?」


アイリス「私のクラスはまだ決まっていないわ。」


茜「私のクラスもまだっすね。でも、実行委員って何をするんすか?」


アイリス「簡単に言うと体育祭開催に向けての準備ね。体育祭で何の種目をやるのかや資料の作成。当日はテントの設営や種目に必要な物の配置や選手の誘導等かしら。」


茜「うわ〜。大変そうっすね。そうなると競技にもあまり出られなくないっすか?」


アイリス「そうね。まぁ2種目ぐらいかしら?」


茜「それなら、私は実行委員パスしたいんすけど、駄目っすか?」


昌磨「別にいいんじゃないか?実行委員になるのは応援合戦をやる為に提案するぐらいだから最悪俺かアイリスのどちらかがなればいいと思うけど。」


アイリス「でも、確実に応援合戦をやるには1人より2人の方がいいかもしれないわよ?」


昌磨「まぁ確かに1人の意見より2人の方がいいか。」


アイリス「なら決まりね。私と貴方が実行委員をやり応援合戦を提案する。」


昌磨「あとは無事に採用されてからだな。」


という訳で俺とアイリスは実行委員に立候補することにした。

部活帰りに俺とアイリスは職員室に行き互いの担任に実行委員になりたいと伝えた。

2人共無事に実行委員になることが出来た。

それからしばらくして体育祭実行委員での集まりに招集された。


円華「皆集まったな。生徒会長の古井だ。今日は体育祭実行委員会の初めての集会ということで私も臨席させてもらう。次回以降は今日決めることになる実行委員長に進行を委ねることとする。」


円華「それでは早速だが委員長になりたい者はいるか?」


一瞬にして静寂が訪れる。

この状況ではなかなか手を挙げられないだろうしな。

そう思っていた時、1人が静かに手を挙げた。


長谷川「はい!私やってみたいです。」


委員長だ。マジかこの人本当に凄いな。


円華「ふむ。長谷川君か。他にはいないか?いなければ彼女で決まりだが?」


他に手を挙げる人はいなかった。


円華「よし。それでは今年の体育祭実行委員長は長谷川清美君に決まりだ。」


生徒会長が拍手しつられて皆拍手しだした。


長谷川「どうもありがとう!」


円華「さて、委員長が決まったことだしこのまま副委員長も決めてしまおうか。長谷川君は誰かやってもらいたい人はいるか?」


長谷川「うーん。それじゃあ、アイリスさんどうかな?」


まさかのアイリスを指名か。委員長とアイリスって面識あったんだな。


円華「アイリス君か。ご指名だがどうだ?アイリス君?」


アイリス「別に構わないわ。」


長谷川「ありがとう。」


円華「それでは、改めて委員長と副委員長が決定した。これからよろしく頼むよ。」


長谷川「はい。頑張ります。」


長谷川「それでは早速ですが今日の議題について話し合いたいと思います。今日の議題は体育祭で行う競技種目について話し合いたいと思います。」


長谷川「今から去年行われた競技種目をホワイトボードに書いていきます。」


アイリス「手伝うわ。」


長谷川「ありがとう。」


2人は去年行われた競技種目を書き始めた。体育祭では良く見る競技ばかりだ。まぁそれが普通なのだが。


長谷川「この中以外で何か取り入れたい競技種目はありますか?あったら挙手して下さい。」


アイリスがこちらをチラチラ見ている。

分かってますよ。

俺がわざわざ実行委員になった目的はこの為といっても過言ではないからな。

俺はそっと手を挙げた。


長谷川「はい。海城君。」


昌磨「えっと、応援合戦をやりたいです。」


長谷川「応援合戦ね。ありがとう。」


俺はそっと腰を下ろした。


長谷川「さて、他にも意見がある方はいますか?」


誰も手を挙げなかったので話し合いが再開される。


長谷川「応援合戦が増えたので必然的に競技種目を1つ減らす必要があります。そこで、皆さんにはいらないと思う競技種目を1つ選んで紙に書いて集計して決めたいと思うんだけど、どうかな?」


周りからは反対意見は出なかったので多数決で決めることになった。

配られた紙に各々がいらないと思う競技種目を記入していく。

ここからは運だな。

俺とアイリスは応援合戦以外を書くがそれ以外の人は全くわからんからな。

集計が終わりホワイトボードに集計結果をアイリスが書いていく。


長谷川「結果は組体操が1番票が多かったので組体操を外して応援合戦をいれたいと思います。それでは次に開始する順番を決めたいと思います。」


その後も話し合いは続いた。

とりあえず応援合戦をやることになり第1段階はクリアかな。

第2段階についてはこれからまた話し合わないといけないな。


放課後。相談部の部室で今日は次の段階についての話し合いをすることになっている。


昌磨「なんとか応援合戦は実現出来そうだな。」


茜「流石先輩方っす。」


アイリス「問題はここからね。」


昌磨「そうだな。生徒会長の弟さん、古井真一君をどうやって応援団に入ってもらうかだな。」


アイリス「実行委員会の話し合いで応援団は各クラスから5名ずつが選ばれることになっているけれど応援団に入るかどうかは自分で決めるしかないわ。」


昌磨「真一君は茜ちゃんと同じクラスなんだよね?」


茜「そうっすよ。」


昌磨「体育祭でやる種目の説明と振り分けについては今日の帰りのホームルームであったと思うんだけど、まだ話し合いとかしてないよね?」


茜「まだっすね。今度また別で時間を設けるみたいなことは言ってたっす。」


アイリス「それならあまり時間はないわね。」


昌磨「ていうか、生徒会長から言ってもらうわけにはいかないのかな?」


アイリス「それが難しいから私達に頼ってきたのでしょ?私達で説得するしかないわ。」


昌磨「でも、茜ちゃん以外初対面の俺達からいきなり応援団に入って欲しいってお願いするのもな。」


茜「怪しさMAXっすね。」


昌磨「とはいえ、あまり時間もないしな。ここは駄目もとで説得しに行ってみるか?」


茜「はいはい!私に良い案があるっす!」


アイリス「何かしら?」


茜「ご飯をご馳走してあげるっす!そうすれば、大抵のことは解決するっすよ。」


昌磨「ご馳走するって払うのは俺じゃないだろうな?」


茜「依頼達成のためっす!部長!」


昌磨「そういう時だけ部長呼びしやがって。仕方ない。今回は払うよ。」


アイリス「それで、どうやって古井君を呼び出すつもりかしら?」


茜「それは、まだナイショっすけど、明日の昼休みに中庭に古井君を呼び出すんで先輩方は少し離れた場所にいて欲しいっす。」


昌磨「分かった。」


茜「私が合図したらこっちに来て欲しいっす。」


アイリス「分かったわ。今回は貴方に任せましょう。」


茜「それじゃあ、明日の昼休みに中庭集合でよろしくっす。」


その日は解散となった。

次の日の昼休み。

俺は中庭に向かっていた。中庭にはテーブルと椅子が何ヶ所か別れて置いてあり晴れの日は結構皆中庭で食べている。

俺は1度も中庭では食べたことがないが。

周りを見渡すと茜ちゃんが1人で座っていた。

その少し離れた場所にアイリスがいた。

俺はアイリスのテーブルに向かって歩き始めた。

すると、アイリスがこちらに気付いたようだ。


昌磨「よっす。古井君はまだ来てないみたいだな。」


アイリス「そうみたいね。」


昌磨「昼飯でも食べながら待ちますか。」


俺は購買で買ったパン2つと飲み物を出して食べ始めた。

それを見てアイリスも鞄から弁当箱を取り出し食べ始めた。


昌磨「自炊してるんだな。」


アイリス「えぇ。とは言ってもほとんど冷凍食品を温めただけだけどね。」


昌磨「それで十分だろ。冷凍食品も最近じゃ品数も増えたよな。」


アイリス「そうなのよ。冷凍だから日持ちもするし温めるだけで直ぐに食べられるし家計にも優しい。」


アイリスがここまで冷凍食品が好きだったとはな。

そんな話をしていると茜ちゃんのテーブルに男子生徒が1人近づいて来た。

彼が古井真一君だろうか。


茜「こっちこっち!」


真一「俺を呼び出したのは河井さんだったのか。それで、なんの用?」


茜「まぁまぁ座って座って。古井君もお昼まだでしょ?一緒に食べよう!」


真一「いや、俺何も買って来てないんだけど?ていうか、河井さんが俺を呼んだってことは河井さんがこの手紙書いたんだよね?」


茜「そうっす。」


真一「手紙に昼ご飯は持たずに来てくださいって書いてあったから持ってきてないんだけど。」


茜「大丈夫!用意してあるっすから。はい、この中から選んで下さい。」


茜ちゃんはテーブルの上にいくつかのパンと飲み物を2つ出した。


真一「選んでいいの?」


茜「どうぞどうぞ!」


真一「それじゃあ、これとこれで。」


真一君はパンを2つと飲み物を1つ選んだ。


茜「それじゃあ、残り物を貰うっす。それじゃあ改めていただきます!」


茜ちゃんは1人で昼食を食べ始めた。

古井君も困惑しながらも昼飯を食べ始めた。


茜「それじゃあ、古井君をここに呼んだ目的を話したいと思うんすけど、準備はいいっすか?」


真一「あぁ。大丈夫。」


茜「もうすぐ体育祭っすね。クラスでは何の種目に出るかの話で盛り上がってるっすけど、古井君は何か出たい種目はあるんすか?」


真一「いや、特にないよ。俺運動得意じゃないし。余ったやつでいいかなって思ってる。」


茜「そうっすか。それなら、応援団とかどうっすか?」


真一「応援団?無理無理。1番向いてないよ。」


茜「そんなことないっすよ。応援団入ってくれないっすか?」


真一「なるほど。それが俺を呼んだ目的か。でもなんで河井さんが俺を応援団に入らせたいの?」


茜「理由は古井君に体育祭を楽しんで欲しいからっす。」


真一「体育祭を楽しむ?それで応援団に入って欲しいってこと?」


茜「そうっす。きっと楽しいっすよ。応援団。」


真一「河井さん。俺に何か隠し事してるでしょ?」


茜「ギクッ。何のことっすか?」


真一「いや、普通に怪しすぎるでしょ。今までそんなに話したことないのにいきなり体育祭を楽しませたいから応援団に入ってくれって。本当は何が目的なの?」


茜「目的は本当っすよ。」


真一「目的は本当か。でも、河井さんが言い出したことじゃなくて誰かに頼まれたんじゃない?」


茜「ギクッギクッ。いや〜。何のことやら。」


茜ちゃんは古井君には見えないようにテーブルの下でスマホでこちらにメッセージを送ってきた。

HELPと。


アイリス「それじゃあ、行きましょうか。」


昌磨「そうだな。」


俺とアイリスは茜ちゃんのテーブルに向かった。


アイリス「こんにちは。茜さん。私達もご一緒していいかしら?」


茜「勿論っす。あっこちらの2人は私の部活の先輩で海城先輩とアイリス先輩っす。」


真一「あっ。ども。ていうか、さっきから河井さんがチラチラ見てたから気にはなってたんだけど、なるほど。そういうことか。」


昌磨「察しがいいね。多分もう分かってると思うけど、古井君を呼び出したのは茜ちゃんというよりは相談部なんだよね。」


真一「そうですか。じゃあ、改めて聞いてもいいですか?」


昌磨「うん。」


真一「皆さんの目的はなんですか?俺を体育祭で楽しませたいですか?」


昌磨「そうだね。それで間違いないよ。」


真一「でもそれは相談部に誰かが相談したってことでいいですか?」


アイリス「その通りよ。」


真一「そうですか。なんとなく分かりました。姉さんですか?相談してきたのは。」


昌磨「こちらとしては相談してきた人が誰なのかは答えられないよ。」


真一「はぁ。分かりました。それで、俺を応援団に入れたいと。」


茜「そうっす。だから、応援団に入ってくれないっすか?」


真一「だから、無理だって。」


茜「そうっすか。でも、古井君食べたっすよね?昼飯。」


真一「あ〜。それでか。うーん。でも、それはちょっと卑怯じゃない?」


茜「卑怯でもなんでも食べたもんは食べたっす!」


真一「分かったよ。でも、こっちにも条件がある。」


茜「なんすか?」


真一「俺は漫画研究部に所属してるんだけど、今次のコンテストに出す漫画を皆で描いてるんだけど、煮詰まっててね。協力して欲しいんだ。」


昌磨「なるほど。じゃあ、漫画研究部を手伝えば応援団に入ってくれるってことでいいかな?」


真一「はい。」


昌磨「分かった。それで俺達は何を手伝えばいい?」


真一「詳しくは放課後部室で話しますんで漫画研究部まで来てください。」


昌磨「了解。」


こうして俺達は放課後漫画研究部に行くことになった。


昌磨「失礼します。」


真一「あっ。お待ちしてましたよ。相談部の皆さん。部長!相談部の皆さんが来ました。」


漫研部部長「待っていたぞ!相談部!なんでもタダで我等漫画研究部の手伝いをしてくれるとはまことか?」


昌磨「えっと、まぁ一応。」


部長「そうかそうか!ならば早速だが今の現状を説明しよう。我等漫画研究部は現在次の漫画コンテストに向けて漫画を執筆中なのだ!」


部長「だがしかし!現在進捗が良くない。それは何故なら我等には恋愛経験がないからである。」


茜「恋愛経験?なんでいきなり恋愛の話が出てくるんすか?」


部長「とても良い質問だ!何故なら今我等が描いている漫画が恋愛ものだからだ!」


昌磨「でも、それだと俺達もあまり力にはなれないと思うが。」


部長「フッ。心配無用だ。何故ならそちらにはアイリス氏がいるではないか!我等の作戦を教えよう。現在執筆中の漫画を完成させるために、アイリス氏とわっ我がでっデートをすることだ!」


漫画研究部部員A「ちょっと部長。待って下さいよ。デートする相手は僕では?」


部長「バカをいうな。貴様ら如きがアイリス氏とデートなんぞ100万年早いわ!」


部員B「ふざけるな!」


昌磨「なんか揉め始めたな。」


茜「なんでもいいっす。でも、デートは面白そうっすね。」


部長「仕方ない。それじゃあ、あれで決めるほかあるまい。」


部員A「まさか。あれをやるつもりですか。」


部長「そうだ。あれを開放する。古に伝わりしジャンケンだ!」


部員B「よっしゃ!やってやるぜ!」


アイリス「ちょっといいかしら。」


部長「はい。どうしましたか?」


アイリス「貴方達勝手に話を進めてるけど、私はデートなんか行かないわよ?」


部長「なっ?!オイ!真一!話が違うじゃないか。どうなっている?」


真一「あ〜。ちょっと待って下さい。」


真一「相談部の皆さん。これはどういうことですか?」


アイリス「それはこっちの台詞かしら。なんで勝手に私がデートに行く話になってるのかしら?」


真一「いや、だから漫画研究部の手伝いをしてくれるって話だったじゃないっすか?」


昌磨「まぁそうなんだけど、まさかそんな内容だとは思ってなかったからな。」


真一「まぁ詳しく説明してなかったコチラも悪かったですけどね。でも、俺に応援団に入って欲しいんですよね?」


茜「アイリス先輩!デート嫌なんすか?」


アイリス「お断りよ。」


昌磨「ちなみに、茜ちゃんじゃ駄目なのか?」


真一「今回のヒロイン的にアイリス先輩の方がキャラが近いので出来ればアイリス先輩がいいんすよね?部長。」


部長「そうだ。アイリス氏しか勝たん。」


真一「ていうことなんですけど、どうですか?」


アイリスは多分梃子でも動かんな。さて、どうしたもんか。


昌磨「とりあえず、一旦今日は帰っていいか?また後日返事をするわ。」


真一「分かりました。でも、なるべく早くお願いします。」


こうしてこの日は解散となった。

後日、日曜日。

俺は駅前に来ていた。

ある人物と待ち合わせをしていたからだ。

その人物とは。


アイリス「待たせたわね。」


昌磨「いや、そんなには待ってない。それじゃあ行くか。」


アイリス「えぇ。」


俺は今日アイリスと出掛ける約束をしていた。

事の経緯を説明すると、漫画研究部から出た後俺はもう一度1人で漫画研究部に向かった。

そして、漫画研究部の連中に交渉をした。

交渉内容は俺が漫画研究部の代わりにアイリスと買い物に行くということだ。


勿論最初は反対されたがこのままでは絶対にアイリスはデートには行かないであろう事を伝えた。

そして、俺が行く代わりに会話の内容をイヤホンを通じて漫画研究部の連中に聞かせてやることと漫画研究部からの指令も可能な限りやることを約束した。

漫画研究部の連中も渋々了承してくれた。


だが問題なのはどうやってアイリスを買い物に誘うかだ。

そこで俺は茜ちゃんからアイリスが気になっている物の情報を聞きだして誘うことにした。

成功するか不安だったがなんとか成功した。


そして、今に至る。

俺達2人の様子は遠くから漫画研究部の部長と古井君が見ている。


俺達は駅前近くのライブハウスに来ていた。


昌磨「アイリスはライブとかよく行くの?」


アイリス「いえ、今回が初めてよ。」


昌磨「そっか。俺は何回か行ったことあるけど、ライブハウスに行くのは初めてだな。」


アイリス「まぁ私も行こうか悩んでいたんだけどね。茜さんがどうしても行こうって誘ってくるから行くことにしたのに肝心の茜さんが行けなくなって貴方が来ることになったのには少し驚いたわ。」


昌磨「まぁ別の用事が出来たらしいから仕方ないだろ。」


本当は俺が変わって貰っただけなんだけどな。


昌磨「だけど、うちの軽音部がここでライブしてるのは知らなかったな。」


アイリス「私は知っていたけど、私には関わりがないことだと思っていたわ。だけど、貴方達と出会って色んな人と関わるようになったわ。人との繋がりって不思議ね。」


昌磨「そうだな。」


そんな話をしながら歩いているとライブハウスに着いた。

お金を支払いライブハウスの中に入った。中は薄暗く他のお客さんでいっぱいだった。

俺達も他のお客さん同様立ったまま始まるのを待った。

しばらくして軽音部の人達がステージに現れライブが始まった。

ステージからの距離が近いことやライブハウス自体が狭いのもありかなり音の迫力が凄い。

曲に合わせてお客さん達も身体を動かして全体が一体となってライブを楽しんでいる感じがした。


そして気づいたらライブは終わっていた。


昌磨「凄かったな。まさかここまでとは。」


アイリス「そうね。でも、少し疲れたかしら。」


昌磨「そうだな。それじゃあ、近くの喫茶店にでも行くか?」


アイリス「えぇ。そうしましょう。」


俺達は一旦近くの喫茶店に行くことにした。

喫茶店に入るとウエイトレスさんから席の案内をされた。


円華「いらっしゃいませ。お二人様でよろしかったでしょうか?」


昌磨「はい。ていうか、会長?ここでバイトしてたんですか。」


円華「君達か。ほう。君達は付き合っていたのか。」


昌磨「いや、違いますよ。たまたま一緒に軽音部のライブを見に行くことになっただけですよ。」


円華「あぁ。そう言えば、今日だったか軽音部のライブは。まぁいい。好きな席に座りたまえ。」


昌磨「はい。」


俺達は好きな席に座りメニューを開いた。


昌磨「会長ここのバイトは長いんですか?」


円華「そうだな。私が高校に入ってからお世話になっているよ。そんなことより注文は決まったのかな?」


昌磨「それじゃあ、俺はコーヒーをお願いします。」


アイリス「私は紅茶をお願いするわ。」


円華「かしこまりました。少々お待ち下さい。」


昌磨「なんか会長に接客されるのは変な感じだな。」


アイリス「そうね。少し落ち着かないわね。」


昌磨「会長もバイトするんだな。まぁ別におかしくないけど。」


アイリス「学生なんだから不思議ではないわ。」


昌磨「アイリスはバイトとかしたことあるの?」


アイリス「少しだけならあるわ。どうしても人手が足りないと頼まれてね。」


昌磨「へぇ。まぁ俺もバイトというか居候先が喫茶店をやってるからその手伝いをするくらいかな。」


円華「お待たせ致しました。コーヒーと紅茶になります。」


昌磨「ありがとうございます。」


円華「ちなみに、私の相談事の件だが、進捗はどうかな?」


今まさにその為に活動してるんだよな〜。


昌磨「弟さんを応援団に入れる為に奮闘中です。」


円華「そうか。色々すまないがよろしく頼む。ここの支払いは私が払っておこう。」


昌磨「そんな悪いですよ。」


円華「大丈夫だ。そのくらいはさせてくれ。それじゃあ、ごゆっくり。」


昌磨「まぁ厚意は有り難く頂くか。」


アイリス「そうね。」


俺達はしばらくして喫茶店を出た。

それから駅前に戻り解散することになった。


昌磨「今日は一緒に来てくれてありがとう。貴重な経験が出来たよ。」


アイリス「コチラこそありがとう。それと、漫画研究部の連中にも宜しく伝えておいてくれるかしら?」


昌磨「あっ。バレてた?」


アイリス「当然よ。貴方が誘って来たのも怪しかったし漫画研究部の2人の尾行もバレバレだもの。」


昌磨「あはは。でも、お陰様で漫画研究部の依頼もこれで完了すると思うよ。」


アイリス「それならよかったわね。それじゃあ、また学校で会いましょう。」


昌磨「あぁ。」


俺達はその場で解散した。


昌磨「おーい。漫研部の2人聞いてただろ?もう出てきてくれ。」


漫研部部長「大義であった。本当なら我がデートしたかったのだがそれはまたの機会に取っておこう。」


真一「お疲れ様でした。協力してもらってありがとうございました。」


昌磨「それじゃあ、応援団の件もOKってことでいいかな?」


真一「はい。ここまでしてくれたのに入らなかったら何されるか分かりませんから。」


部長「応援団?何の話だ?」


真一「いや、こっちの話です。部長は気にしないで下さい。」


部長「まぁいい。しかし今日は豊作であったな。これなら執筆作業も進むぞ!それに、まさか生徒会長殿があそこで働いていたとはな。生徒会長殿のウエイトレス姿も眼福であった。」


昌磨「古井君は会長があの店で働いてるのは知ってた?」


真一「いや、知らなかったです。バイトしてるのは知ってたんですけど、詳しくは。姉さんはいつもそうなんですよ。肝心なことは何も言わないで1人で背負うんですよね。俺のこともまだ子供だと思ってるんでしょうね。」


昌磨「そっか。なら、応援団を頑張ればきっと会長も見直してくれるんじゃないかな。」


真一「そうですかね。まぁやるからには頑張ります。」


昌磨「あぁ。また明日からよろしく。それじゃあ、今日は解散ということで。」


俺達もその場で解散した。

なんとか古井君に応援団に入って貰うことが出来た。

これで後は体育祭を成功させるだけだ。

それから数日後。

初めて応援団で集まる日が来た。

1年生から3年生まで各クラスから5名が選ばれるから全員で15名になる。

1年生の中には古井君が参加している。

俺は赤組の応援団のサポート役として選ばれたので申請に必要な書類の作成や進行状況の確認等をすることになっている。

今日は初めての会合なので応援団員の自己紹介と団長を決めたり簡単にどんな内容の応援合戦にするのかの話し合いをする予定だ。


昌磨「えっと。2年B組の海城です。赤組で実行委員をやってます。今日は皆さんに簡単に自己紹介と団長を決めてもらいたいと思います。」


俺の呼びかけで自己紹介が始まった。

全員の自己紹介が終わったので次に団長を決める工程に進む。


昌磨「それじゃあ、早速だけど団長になりたい人はいますか?」


いない場合は経験豊富な3年生から決めるしかないかな。


泉「はいはーい!私が立候補しようかな。」


昌磨「えっと。3年B組の泉真奈(いずみまな)さんですよね?立候補してくれてありがとうございます。」


泉「いいよ〜。」


昌磨「他に立候補者はいませんか?いなければ泉先輩で決定になりますが。」


他に誰も立候補しなかった為、泉先輩が赤組の応援団長に決定した。


昌磨「それじゃあ、ここからは泉先輩に進行してもらっていいですか?」


泉「ok!任せてよ。それで、何をすればいいのかな?」


昌磨「とりあえず、簡単にどんな内容の応援合戦にしたいのか話し合って決めてもらっていいですかね?音楽を流すなら何の曲にするとか。一応申請しないといけないので。」


泉「ok!」


そして、赤組の応援団員どうしでの話し合いが始まった。

泉先輩が明るい性格だからか和気あいあいとした雰囲気で話し合いが進められた。

話し合いによっておおよその形は見えてきたがまだ決まりそうには無かった。

その日は解散となり翌日までに各々考えてくることになった。

翌日。

昨日の続きで話し合いが行われている。

話し合いの結果、曲に合わせて皆で踊ることに決まった。


泉「海城君。曲が決まったから申請よろしく!」


昌磨「分かりました。」


俺は早速実行委員が集まる空き教室に向かった。

体育祭までは実行委員が自由に使っていいことになっている。


昌磨「水嶋先輩。お疲れ様です。これ、赤組の応援合戦で使う曲の申請書です。」


水嶋「了解。そこに置いておいて下さい。後で確認しておきます。」


彼女は3年A組の水嶋利恵(みずしまりえ)先輩だ。俺と同じ実行委員で書類等の管理をしている。

さて、応援団の方はこれから踊りの振り付けとかを考えて練習って感じかな。

ちょくちょく様子を見ながら実行委員の仕事をこなすか。


アイリス「昌磨。あれはどうなってる?」


昌磨「あ〜。ちょっと待ってくれ。今からやるよ。」


こんな感じで副委員長様は俺に異様に仕事を押し付けてくる。まぁ別にいいけど。

それから数日が経ち。

応援団の方も順調に練習が進んでいるようだ。


夜の古井家。

夕飯の食事中。

母親は仕事で遅くなる為、夕飯はほとんど姉さんと俺の2人で食べている。

その姉さんも部活や生徒会で忙しい為、家事はほとんど俺がやっている。


円華「真一。応援団の方はどうだ?」


真一「なんとかやっていけてるよ。ダンスなんてやったことないから苦戦してるけど。」


円華「そうか。どれ、お姉ちゃんが少し見てやろうか?」


真一「え〜。」


円華「そう言うな。ほら。」


真一「分かったよ。」


それから少し姉さんの前でダンスを踊り姉さんから指導されることになった。

いつものパターンんだ。

勉強とかもいつも見てくれる。

自分の方が忙しい筈なのに。


真一「ありがとう。姉さん。」


円華「あぁ。またいつでも練習に付き合うぞ。それと、当日は母さんが弁当を作ってくれるみたいだぞ。」


真一「お母さんが?そっか。なら、頑張らないとね。」


円華「そうだな。でも、無理はするなよ?」


真一「わかってるよ。」


それから更に数日後。

応援団の練習は順調に進んでいた。


長谷川「そう言えば、海城君。」


昌磨「ん?どうかしたか?委員長。」


長谷川「赤組で使う曲の申請ってどうなってるのかな?」


昌磨「えっ?前に提出しましたけど?」


長谷川「こっちには来てないようなんだけど。」


昌磨「水嶋先輩に提出した筈なんだけど、水嶋先輩。俺、曲の申請書提出しましたよね?」


水嶋「ん?あぁすまない。委員長に回して無かったか。今回すよ。ちょっと待ってくれ。」


水嶋「ん〜。あれ、見当たらないな。すまないが紛失してしまったかもしれない。」


昌磨「マジっすか。」


水嶋「すまないがもう一度書いてもらっていいかな?」


昌磨「分かりました。」


俺は1度泉先輩の所に行きもう一度使う楽曲を確認して書類を作成し水嶋先輩に提出した。


昌磨「はい。水嶋先輩。」


水嶋「すまないな。今すぐそっちに回すよ。」


水嶋先輩から委員長に申請書類が回り委員長が確認している。


長谷川「ん?これはまずいな。海城君。これが赤組の使う楽曲で間違いないんだね。」


昌磨「あぁ。何か問題でもあるのか?」


長谷川「いや〜。まさかこんな偶然あるんだね。白組の使う楽曲と同じ楽曲なんだよ。」


昌磨「マジで?!」


いや、ありえんだろ。いくらなんでも同じ楽曲を選ぶなんて。


長谷川「これは困ったな。このまま白組も赤組も同じ楽曲で応援合戦をやるわけにはいかないだろうな。」


アイリス「そうね。そうなると、どちらかの組の楽曲を変更してもらうしかないかしら。」


長谷川「そうだね。でも、もう両方とも結構練習してしまっているからね。今から別の曲に変えるのは日数的にも厳しいね。」


水嶋「すみません。私が書類を紛失してしまったせいで。」


長谷川「私も確認が遅れてしまった。水嶋先輩だけの責任じゃないよ。」


アイリス「私達だけで話し合っていても仕方ないわ。白組と赤組の団長にも話し合いに参加してもらって決めましょう。」


長谷川「そうだね。すみませんが赤組と白組の団長を連れてきてもらってもいいですか?」


それからしばらくして赤組と白組の団長が教室にやってきた。


泉「どうしたのかな?」


白組団長「僕達を呼ぶということは何かあったのかな?」


長谷川「忙しい時にすみません。こちらのミスで白組と赤組の使う楽曲が同じであることについさっき気付きまして。それで、どうするのかの話し合いをしたいと思い両組の団長に来てもらったんだ。」


泉「楽曲が同じ。だからさっき海城君が確認に来たんだ。」


昌磨「はい。」


白組団長「そんなことがあるのか?まさか、赤組の誰かがコチラの使う楽曲を聞いて真似したのではないか?」


泉「はぁ?そんなことする訳ないじゃん。そんなことしたってこっちになんの徳もないじゃん。」


白組団長「まぁそれもそうか。だが、さっき赤組団長が妙なことを言っていたな。さっきそこの実行委員が楽曲の確認に来たと。」


泉「そうだけど。何が変なのさ。」


白組団長「つまり、今回の件はそちらの赤組の実行委員のミスなんじゃないのか?なら、赤組側が曲を変えるべきだ。」


長谷川「いや、今回のミスは実行委員全体のミスで個人のミスじゃないんです。」


白組団長「そうか。まぁ実行委員側としてはそう言うしかないよな。」


水嶋「すみません。私の管理ミスで。」


長谷川「もう大丈夫ですよ。水嶋先輩。」


泉「利恵。なるほど、あんたが委員会にいたのか。」


昌磨「泉先輩?」


泉「海城君。君が提出した書類って利恵。つまり、水嶋利恵が管理していた?」


昌磨「そうですけど。」


泉「やっぱりね。あんたがわざと無くしたんでしょ?そして、白組に赤組の楽曲の情報を流した。」


水嶋「真奈ちゃん。私がそんなことしてなんの徳があるの?」


泉「私に勝ちたいんでしょ!妹である私に!」


泉先輩と水嶋先輩が姉妹?!


水嶋「例えそうだとして証拠はあるの?」


長谷川「お二人共落ち着いて下さい。」


泉「分かったわ。じゃあ、楽曲に関してはこちらが変更します。これで納得やろ。利恵。でも、勝つのは赤組や!」


そう言うと泉先輩は教室から出ていってしまった。


白組団長「やれやれ。姉妹喧嘩は他所でやってほしいね。まぁコチラは今まで通りにやらせてもらうよ。それじゃあ、失礼する。」


白組団長も教室から出ていった。


長谷川「ふぅ。やっぱり揉めてしまいましたね。」


アイリス「仕方ないわ。」


長谷川「それにしても水嶋先輩と泉先輩は姉妹だったんですね。」


水嶋「えぇ。高校に入ってからしばらくして親が離婚してね。だから、名字が違うの。」


長谷川「そうだったんですか。」


アイリス「昌磨。赤組のことだけど。」


昌磨「あぁ。フォローしてくるよ。」


俺は早速赤組の応援団員達がいる所に向かった。

俺が向かうと既に泉先輩が楽曲変更について説明をしていた。


泉「という訳で楽曲を変更しないといけなくなった。何か他にやりたい曲あるかな?」


赤組の応援団員達は皆複雑な面持ちをしていた。楽曲変更に納得いかない者や今から変更して大丈夫なのかや皆不安な様子だ。


昌磨「泉先輩。少しいいですか?」


泉「ん?どうしたん?」


俺は赤組の応援団の前に出た。


昌磨「今から楽曲を変更しても練習が間に合わない可能性が高い。それじゃ白組に勝てない。でも、まだ諦めるには早いと思う。だから、改めて今俺達に出来ること残された可能性を考えませんか。」


泉「私達に出来ること。残された可能性?」


昌磨「俺達赤組のメンバーを見て皆で出来ることを考えてみて下さい。」


皆が一人一人を見て何が出来るのか考えてみた。


真一「ライブ。」


昌磨「古井君。今なんて言った?」


真一「いや、俺この前たまたま軽音部のライブを見に行く機会があって。それで、赤組に軽音部の皆さんが揃ってるからライブ出来ないかなって思って。」


泉「ライブか。それいいな。ライブなら軽音部を主役にして周りを私達が曲に合わせて踊ればいい。そうすれば、ダンスメインじゃないからなんとかなるかも。」


泉「軽音部の方はどうかな?」


軽音部A「私達なら大丈夫です。むしろ自分達の演奏が出来るならやりたいです。」


泉「よっしゃ!なら、早速なんの曲やるか決めよう!」


昌磨「古井君ナイスアイディア!」


真一「いや、海城先輩がヒントくれたから。」


昌磨「俺はただ皆で考えようって言っただけだよ。」


泉「ほら、そこの2人も早く来なさい!」


昌磨「俺もっすか?」


泉「当たり前やろ!時間ないんやから早うしてや。」


それから軽音部が出来る曲の中から盛り上がる曲を選びその曲で練習することになった。

さっきまでとは違い皆やる気に満ち溢れていた。

俺は楽曲の申請の為、実行委員がいる教室に戻った。


昌磨「水嶋先輩。曲の申請お願いします。」


水嶋「もう決まったんですね。了解です。」


そして、無事に申請が通りあとは当日まで練習するだけとなった。

体育祭当日。


長谷川「ようやく本番当日だね。」


昌磨「そうだな。あと一踏ん張りだな。お互い頑張ろう。」


俺は実行委員の仕事をこなしつつ自分が出る競技にも参加して体育祭を満喫していた。

昼休みの時間になった。

ここまでは白組が少しリードしている展開だ。

昼休み後に応援合戦が控えている。

昼飯は舞さんが用意してくれたお弁当を玲花ちゃんと3人で食べることになった。


舞「昌磨君。実行委員頑張ってるようね。」


昌磨「ここ最近お店の方を手伝えなくてすみません。」


舞「大丈夫よ。代わりに玲花が頑張ってくれてるから。」


玲花「そうそう。だから、体育祭が終わったら何かしてもらはないとね。」


昌磨「分かったよ。」


舞「昼休み後も2人共頑張ってね。」


昼休みが終わり応援合戦の時間になった。

先に白組の応援合戦が始まる。

白組は全員が曲に合わせてダンスを踊っている。

沢山練習したのだろう。息がピッタリだ。

最後までミスなくこなし白組の応援合戦が無事に終わった。

次に赤組の応援合戦の時間だ。

赤組は軽音部のライブがメインで周りで他の応援団が踊ることになっている。

軽音部の曲に合わせて応援団員達が踊っている。

そして、曲が盛り上がるにつれて周りのお客さん達も身体を動かし始めた。

これこそがライブの真骨頂である。

自分達だけでなく会場のお客さん達全員を巻き込み盛り上げる。

こうして赤組の応援合戦も無事に終わった。

その後も競技は続き無事に全競技が終了し閉会式が始まった。


長谷川「皆さん。お疲れ様でした!皆さんの協力のお陰で無事に体育祭を終えることが出来ました。それでは、皆さん気になっていると思う点数の発表を行いたいと思います。」


長谷川「総合得点の発表前に応援合戦の勝敗を発表したいと思います。応援合戦の勝敗発表は副委員長からお願いします。」


アイリス「それでは、発表します。応援合戦の勝者は赤組です。」


勝敗が発表された瞬間赤組の生徒達は皆歓声をあげた。


長谷川「応援合戦は赤組が勝利しましたが総合優勝はまだわかりませんよ。それでは発表したいと思います。総合優勝は白組です!」


発表された瞬間白組側の生徒が喜び歓声をあげている。

赤組側は落ち込んでいるが仕方ないといった感じかな。

両方とも全力を出し切った。


長谷川「以上で今年の体育祭は終了致します。お疲れ様でした!」


その後あと片付けをしてから最後実行委員で集まった。


長谷川「皆さん本当にお疲れ様でした。色々ありましたがなんとか無事に体育祭を終えることが出来て良かったです。ありがとうございました。副委員長からも最後に一言お願いします。」


アイリス「えっと。皆に協力してもらわなければきっと成功しなかったわ。ありがとう。」


両方の挨拶が終わり体育祭の実行委員は解散となった。


水嶋「真奈ちゃん。」


泉「総合優勝はそっちの勝ちやな。でも、応援合戦で勝てたからよしとするわ。」


水嶋「そうね。まさか、あそこから立ち直るとはね。」


泉「まぁこれであんたとのいざこざも最後になるんかな。」


水嶋「そうね。もう後は大人しく卒業するのを待ちましょうか。」


泉「そうやな。お互い早く親の縛りから開放されたいな。」


水嶋「そうね。その時はまた私をお姉ちゃんと呼んでくれるかしら?」


泉「アホか。誰が呼ぶか。でも、たまにお茶ぐらいなら付き合ってあげるわ。」


体育祭が終わり数日が経った。


茜「体育祭終わっちゃったっすね。」


昌磨「そうだな。ようやくあの忙しい日々から開放される。」


茜「お疲れ様でした!茜は今回特に手伝えなかったっすけど、依頼の方は上手くいったんすか?」


昌磨「さぁね。まぁやれることはやったつもりだけどね。」


円華「失礼する。」


茜「あっ。噂をすれば生徒会長じゃないっすか!」


円華「少しいいかな?」


アイリス「どうぞ。」


円華「今回の私からの相談事の件だがありがとう。君達相談部のお陰で弟も体育祭を十分に楽しめたと思う。改めてありがとう。」


昌磨「いえいえ、上手くいったなら良かったです。」


円華「実行委員の方でも色々大変だったようだがなんとかなったようでなによりだ!これからも何かあった時は頼む。勿論こちらも協力するよ。それじゃあ失礼する。」


そう言うと生徒会長は去って行った。


昌磨「相変わらず嵐のような人だ。」


これにて生徒会長の依頼も完了である。

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