第2話男子バスケ部部長 中山秀樹の依頼

相談部が出来てから1週間ほど経った。

俺達は有意義な時間を過ごしていた。

アイリスさんは読書。

俺も読書。

河井ちゃんは今日は確か女子バスケ部の助っ人。

このまま平和に暮らしたいものだ。

だが、束の間の平和をそいつはぶち壊した。


河井「お疲れ様っす!先輩方!仕事っすよ!」


アイリス「河井さん。扉はゆっくり開けてと言ってるわよね?」


河井「あっ。すんませんっす!そんなことより仕事っす!」


昌磨「仕事?俺達に相談したい人がいるってこと?」


河井「そうっす!呼んでいいっすか?」


マジか?!こんな変な部活にマジで相談しにくるやつがいるとは、信じられない。


中山「もう入ってもいいかな?」


河井「どうぞ、どうぞ!こちらに座って下さい。」


河井は客人に椅子を差し出した。


中山「ありがとう。河井さん。」


河井「いえいえ。」


アイリス「それで、私達に相談したいことって何かしら?中山君。」


中山「僕の名前知ってくれてるんだ。驚いたよ。」


アイリス「同じ2年生の名前なら全員覚えているわ。」


昌磨「すごいな。生徒会長でも目指してんの?」


アイリス「これぐらい普通でしょ?それより貴方の方が詳しいんじゃないの?同じクラスなんだから。」


昌磨「名前なら知ってるよ。まだそんなに話したことがないだけだ。」


中山「そうだね。でも、驚いたよ。まさか海城君が相談部に入っていたなんて。」


昌磨「えっ。相談部ってそんなに有名なの?」


中山「有名だよ。なんせ有名人が2人いるんだからね。」


河井「有名人って私のことっすか?照れるっす。」


アイリス「そんなことより私達に相談があるんでしょ?」


中山「あぁ。相談って言うのは僕が所属している男子バスケ部についてなんだ。」


中山「僕は4月から男子バスケ部のキャプテンになったんだけど、今男子バスケ部には問題が起きていてね。」


中山「その問題というのはある1年生が部活を休んでいるということなんだ。」


アイリス「なるほど。それで貴方としてはその1年生に部活に参加して欲しいと。」


中山「そうだね。でも、もしどうしても参加したくないのなら無理強いするつもりはないよ。」


昌磨「中山君はその1年生とは話せてないのか?」


中山「あぁ。僕の話を聞いてくれなくてね。」


アイリス「ちなみに、その1年生って言うのは誰かしら?」


中山「杉山勝也(すぎやまかつや)君。」


河井「杉山君なら知ってるっすよ。同じクラスっすから。」


アイリス「なら、とりあえずその杉山君に話を聞かないといけないわね。」


昌磨「そうだな。河井ちゃん。明日杉山君を部室に誘っておいてくれない?」


河井「了解っす!」


中山「なんだか悪いね。」


アイリス「仕事だから気にしなくていいのよ。」


中山「僕も明日居たほうがいいかな?」


アイリス「いえ、結構よ。」


こうして明日部室で杉山君と話すことになった。

翌日。


俺はアイリスさんと一緒に部室で河井ちゃんが杉山君を連れてくるのを待っていた。


河井「すみません!逃げられたっす!」


勢いよく部室に入って来たのは河井ちゃんだ。


アイリス「落ち着きなさい。逃げられたって誰に?」


河井「杉山君っす!」


昌磨「もう少し詳しく教えてくれ。」


河井「今日の放課後に相談部の部室に来て欲しいってお願いしたっす。でも、行く理由がないって断られてしまって。」


河井「でもでも、私は諦めなかったっす!それでも誘い続けた結果。来てくれることになったっす。」


アイリス「それで?」


河井「それで一緒に部室に行くことになったんすけど、トイレに行きたいから待っててくれって言われて教室で待ってたんす。」


河井「それから10分ぐらい待ったんすけど、戻って来なかったんで近くにいた男子生徒にトイレの中に杉山君がいるか確認してもらったっす。」


昌磨「そしたら居なかったと。」


河井「そうなんすよ!やられたっす!」


アイリス「どうするの?また明日にする?」


昌磨「ん〜。ちょっとだけ探して居なかったら明日にしよう。」


河井「了解っす!それで、どこを探すんすか?」


昌磨「学校には居ないだろうから駅前とかかな。」


アイリス「それじゃあ、行きましょうか。」


昌磨「悪いけど、玄関で待っててくれないか?俺は中山君に杉山君の行きそうな所を聞いてくるわ。」


河井「了解っす!」


俺は1人で体育館に向かった。

体育館ではバスケ部が活動していたがやはり杉山君の姿は無かった。

俺の姿を見て中山君がこっちに来てくれた。


中山「どうしたんだい?」


昌磨「部活中に悪いな。杉山君について少し教えて欲しいんだけど、杉山君が行きそうな場所って知ってるか?」


中山「すまない。分からないな。」


昌磨「そっか。あともう1ついいか?」


中山「何かな?」


昌磨「杉山君ってもしかして…」


中山「そうだよ。良く分かったね。河井さんから聞いたのかな?」


昌磨「まぁな。ありがとう。部活頑張ってくれ。」


中山「ありがとう。依頼の件も悪いけど頼むよ。」


昌磨「やるだけやってみるさ。」


俺は中山君と別れ玄関に向かった。


昌磨「待たせたな。」


河井「それじゃあ、行きましょう!」


アイリス「無駄足にならなければいいけど。」


昌磨「俺の予想だと多分何処かで暇をつぶしてると思うんだよな〜。」


アイリス「そう思う根拠は何かしら?」


昌磨「俺は中山君が今回の依頼をしてきた時に少し疑問に思うことがあってさ。それは、1人の部員が来なくなったからといってわざわざ対応するのかってことだ。」


河井「特に変ではないような気もするっすけど?」


昌磨「部活に来なくなった部員がいてその部員に話を聞きにいくところまでなら俺も理解出来る。でも、中山君は杉山君と話が出来ないほど関係が拗れてしまっている。」


昌磨「それなのにまだ杉山君に部活に戻って欲しくて俺達相談部にまで相談しにきた。入部したばかりの1年生にそこまでする理由はなんなのか。」


アイリス「確かに少し人が良すぎるかしらね。」


昌磨「それだけなら確かに中山君がいい奴ってことになるかもしれないがもう1つ気になることがある。」


昌磨「それは、杉山君が何故部活を辞めないのかだ。」


河井「それは、バスケがやりたいからじゃないっすか?でも、何らかの理由で部活に行けなくなった。」


昌磨「そう。杉山君はバスケがしたい。バスケ部じゃなきゃ駄目なんだと思う。でなきゃとっくに部活を辞めてる筈だ。なら、何でバスケ部じゃなきゃいけないのか。バスケ部にこだわる理由は?」


アイリス「それこそ本人に聞かないと分からないわ。」


昌磨「そうだな。だが、今俺が言った2つの疑問点からある可能性が浮かび上がってくる。」


河井「ある可能性っすか?」


アイリス「疑問っていうのは中山君が杉山君を部に戻したい理由と杉山君がバスケ部に固執する理由かしら?」


昌磨「そう。この2つの疑問から俺は杉山君はスポーツ推薦で入学したんじゃないかと思った。」


河井「スポーツ推薦っすか。」


昌磨「スポーツ推薦で入学したのならバスケ部を簡単には辞められないし中山君としても即戦力の杉山君をバスケ部に戻したいと思っている。」


昌磨「だけど、まだ仮説の段階だったからさっき中山君に聞いてきた。そしたら、やっぱり杉山君はスポーツ推薦で入学したらしい。」


アイリス「なるほどね。だとしても結局何故バスケ部に行かなくなったのかは本人に聞くしかないってことね。」


昌磨「そうなるな。」


アイリス「それで貴方は何処かで時間をつぶしてる確率のほうが高いと考えたわけね。」


河井「ちょっと待って欲しいっす!それで何で自宅に帰ってるんじゃなくて何処かで時間をつぶしてる確率のほうが高くなるんすか?」


昌磨「スポーツ推薦で入学してる以上親は部活をしてると思ってるだろうからな。こんなに早くは自宅に帰れないだろ。」


河井「あぁなるほどっす。」


アイリス「それで杉山君が何処にいるのか聞けたのかしら?」


昌磨「いや、やっぱり分からないみたいだ。だから手分けして探すしかないな。」


河井「了解っす!見つけたら連絡しますね。あっでも連絡先知らないっす。」


アイリス「はぁ。しょうがないわね。連絡先を交換しておきましょう。」


昌磨「そうだな。」


アイリス「変なことに使わないでよ。」


昌磨「使わないって。そんなに信用ないかね。」


アイリス「信用出来るだけの関係を築いてないから仕方ないわね。」


河井「これから仲良くなるっす!」


俺達は連絡先を交換してから杉山君を探し始めた。

とはいえ俺もまだ引っ越してきて1ヶ月ぐらいしか経ってないから土地勘がないので何処に何があるのかも分からない。

そのためぶらぶらと歩き回るしかないのだが。

ぶらぶら歩いているとゲームセンターを見つけた。

俺はゲームセンターに入り杉山君を探した。

すると俺と同じ学校の制服を着た学生が格ゲーをやっていた。

俺は杉山君の顔が分からないのでとりあえず2人に連絡した。

しばらくして2人がゲームセンターにやってきた。


アイリス「見つけたの?」


昌磨「河井ちゃん。あの人なんだけど。」


河井「ん〜。あっ杉山君っす!おーい!杉山君!」


杉山「ん?あっ河井。お前こんなとこまで来たのかよ。」


河井「当然っす!約束を破るのは駄目っすよ!」


杉山「約束なんかした覚えはないっての。お前が一方的に主張してただけだろ。」


河井「でも、最終的には分かったって言ってたっす!」


杉山「そう言わないとお前どこまでも付いて来そうだったからな。まぁ結局こんなとこまで付いて来ちまってるし。ていうかそちらの2人が相談部の先輩か?」


河井「そうっす!アイリス先輩と海城先輩っす!」


昌磨「海城昌磨だ。」


アイリス「アイリスよ。」


杉山「はぁ。そんで俺に用ってなんすか?」


アイリス「貴方と同じバスケ部の部員から貴方を部活の練習に参加させて欲しいという依頼がきたのよ。だから、貴方に話を聞きにきたのよ。」


杉山「やっぱりそのことか。バスケ部に戻るのは別にいいですよ。但し俺をレギュラーに入れるのならね。」


アイリス「それがバスケ部に戻る条件ってことかしら?」


杉山「そうだよ。でなきゃ戻らないよ。」


昌磨「杉山君の主張は分かった。ちなみに、練習に行かなくなった理由を聞いてもいいかな?」


杉山「まぁ別にいいですけど。俺は中学の時にバスケで全国大会までいったこともあってスポーツ推薦でこの学校に入学しました。だから、高校でもバスケで全国大会を目指すために頑張ろうと思ってました。」


杉山「けど、この学校の今のバスケ部は勝つことより楽しくやることに重点を置いていて正直俺とは方向性が合わないと思いました。でも、俺だけでも強くなって俺がこのバスケ部を全国大会に連れていけばいいと思って練習を頑張りました。」


杉山「部活が終わった後も居残りで練習して自分で言うのもなんだけど多分バスケ部の中で1番上手いと思います。それからしばらくして他校との練習試合が決まりました。」


杉山「俺は絶対レギュラーに選ばれると思ってました。けど、実際は。」


昌磨「選ばれなかった?」


杉山「はい。うちのバスケ部は顧問は名前貸してるだけの先生で実質監督は部長で部長が試合に出るメンバーを選んでます。だから、俺は部長になんで俺がレギュラーじゃないのか聞きに行きました。」


杉山「そしたら、夏の大会で3年生は引退するから夏の大会までは3年生を主体にメンバーを決めるのが定例なんだよって言われて。俺の主張は聞いてもらえなかった。」


杉山「それから一気にやる気がなくなって練習に行かなくなった。」


昌磨「なるほどな。けど、今の話を聞いて気になることがあるんだけど、杉山君は何で啓進高校を選んだんだ?バスケで全国大会を目指すんなら強豪校に進学したほうが良かったんじゃないか?」


杉山「それは、兄貴がこの学校の卒業生だったからです。」


アイリス「お兄さんも同じ学校だったのね。もしかして部活も同じバスケ部だった?」


杉山「そう。兄貴も同じバスケ部でした。俺は兄貴がバスケしてるのを見てバスケを始めたんですよ。最初は兄貴と一緒に遊びたくて始めたんだけど、やってる途中から兄貴に勝ちたくなってて気づいたらバスケが好きになってた。」


杉山「兄貴はずっと高校で全国大会に行くのが夢だって言っててそのために毎日練習してました。だけど、3年の最後の大会前に怪我で出場出来なくなって結局兄貴の夢は叶いませんでした。」


杉山「だから、俺が兄貴の代わりに兄貴と同じ学校で全国大会に絶対行ってやるって思ってこの学校を選びました。」


昌磨「なるほどな。話してくれてありがとう。とりあえず、杉山君の主張は依頼主に話しておくよ。」


杉山「はい。まぁ無理でしょうけどね。」


昌磨「それじゃあ、俺達は帰るか。」


アイリスさんと河井ちゃんに話かけるとアイリスさんは格ゲーの筺体を凝視していた。

まぁアイリスさんならゲームセンターに来るのも初めてだろうしな。


河井「海城先輩!せっかくだし私達も遊んで行きたいっす!ねっアイリス先輩!」


アイリス「私はどちらでもいいわよ。貴方達が遊びたいのなら付き合ってあげてもいいわよ。」


昌磨「ぷっ。」


河井「先輩。笑ったら駄目っすよ。」


昌磨「お前こそ笑うの我慢してるじゃねぇか。」


アイリス「2人共覚悟は出来てるかしら?」


河井「すみませんっす!遊びたいっす!ねっ海城先輩!」


昌磨「そうだな。俺も久しぶりにやりたくなってきたぜ!そうだ!杉山君。暇なんだろ?一緒に遊ぼうぜ!」


杉山「はい?まぁいいですけど。」


昌磨「よしっ。じゃあ杉山君がやってる格ゲーやろう!」


河井「やりましょう!これどうすればいいんすか?ボタンがいっぱいあって分かんないっす。」


アイリス「いっぱいってそんなにないでしょう。」


昌磨「まぁ最初は俺と杉山君でやるから隣で見てろって。」


河井「了解っす!」


昌磨「えっと、どのキャラにしようかな。」


河井「コイツが強そうっすよ先輩!このデカイ奴!」


アイリス「身体の大きさだけで強さは分からないわ。案外こっちの小さいキャラが強いかもしれないわよ。」


河井「いーや、絶対こっちっす!」


昌磨「お前らうるさい。こういうのは主人公キャラが結局バランスとれててやりやすいんだって。まぁ見てろって。」


杉山「なんでもいいんで早く選んで下さい。」


キャラをお互い選んで対戦スタート!


河井「そこでパンチっす!そこそこ!」


昌磨「うるさくて集中して出来ん。あ〜負けた。」


河井「あ〜。だからあそこでパンチ打たないから。」


昌磨「はいはい。すみませんでした。まぁこんな感じだけど分かったか?」


河井「画面見てて操作の方は分かんなかったっす。」


アイリス「大体理解したわ。」


昌磨「よし。じゃあ次は2人で対戦してみ。」


河井「了解っす!こんなのは気合でなんとかなるっす!」


アイリス「相手が誰でも容赦しないから。」


河井ちゃんは身体が大きなキャラを使いアイリスさんは小さいキャラを選んだ。

対戦が始まった。

河井ちゃんのキャラの攻撃は大振りで力こそパワーって感じのキャラだ。一撃一撃の攻撃力が高そうだ。

それに比べてアイリスさんのキャラは攻撃力は低いが動きが速く相手を翻弄している。

河井ちゃんのキャラの攻撃は当たらずアイリスさんのキャラの攻撃がジワジワと体力を奪っていき見事アイリスさんが勝利した。


河井「うぎゃぁーやられたっす!悔しいっす!もう一回っす!」


アイリス「返り討ちにしてあげるわ。」


杉山「楽しそうっすね。」


昌磨「だな。」


杉山「こういうのも悪くないですね。」


昌磨「そうだな。まぁ遊びにしろなんでも真剣に取り組むことが大事なんじゃないか?」


杉山「真剣に取り組むか。」


昌磨「悪いなんか変なこと言ったな。」


杉山「いや、ちょっと兄貴のことを思い出しました。兄貴も同じことを言ってたなって。」


昌磨「そっか。」


それからしばらくゲームセンターで遊びその日は終わった。

翌日。

俺は杉山君の主張を中山君に伝える為に相談部の部室に中山君を呼んでいた。


昌磨「バスケ部に戻る条件は杉山君をレギュラーに入れること。それが、杉山君の主張なんだけど、どうかな?」


中山「そっか。わざわざありがとう。杉山の主張は分かったよ。」


昌磨「それで、その条件は呑めそうかな?」


中山「うーん。正直今の状況だと厳しいね。杉山からも聞いてると思うけど、今の男子バスケ部の方針としては夏の大会までは3年生を主体にメンバーを決めてるんだ。」


中山「勿論。杉山の方が個人の戦力的には高いと思うけど、バスケはチーム戦だからね。個の力よりもチームとしての力の方が大切なんだよ。」


アイリス「それはつまり杉山君にもチームプレイが出来ればレギュラーになれる可能性があるって事でいいかしら?」


中山「うーん。そうだね。でも、さっきも言ったが基本的には夏の大会までは3年生を使うのが定例だからね。」


昌磨「部員皆が楽しくプレイするのが男子バスケ部の方針だからか?」


中山「そうだね。」


河井「でも、その皆の中には杉山君も入ってるっすよね?でも、今のままだと杉山君はその皆の中に入れないっす。」


中山「それは、そうなるけど、あくまでも理想というかなんというか。難しいね。」


昌磨「中山君。君の依頼は杉山君を部活動に参加させることだよね。でも、正直今のままだとそれは厳しいと思う。男子バスケ部側が折れるか杉山君が折れるしかない。」


中山「そうなるかな。」


昌磨「だけど、それは多分男子バスケ部の方針である皆で楽しくにはならなくなってしまう。だから、俺に提案があるんだけど聞いてくれるかい?」


中山「提案?何かな?」


昌磨「男子バスケ部と女子バスケ部で交流戦をやって欲しい。」


中山「交流戦?別に構わないけどそれが今回の件とどう関わってくるんだい?」


昌磨「まぁ上手くいくかは分からないけれど杉山君と男子バスケ部を繋ぐきっかけにはなるとは思うんだけどね。」


アイリス「どういうこと?もう少し詳しく言いなさい。」


河井「そうっすよ!でも、交流戦は有りだと思うっす!楽しそうっす。」


昌磨「まず交流戦の対戦メンバーに必ず杉山君を入れてくれ。」


中山「杉山を?別に構わないけど。」


昌磨「残りのメンバーは出来れば3年生がいいかな。あと、中山君は今回の交流戦には出ないでくれ。あくまでも今回の交流戦は杉山君と中山君以外の男子バスケ部との関係修復のきっかけ作りの為の試合だからね。」


アイリス「なるほどね。共通の敵が出来れば協力するしかなくなる。そういう感じかしら?」


昌磨「まぁこれで関係が修復するかは分からないけど、何もしないよりかはマシかなと。」


中山「分かったよ。君達相談部の言う通りにしてみよう。女子バスケ部には僕の方から伝えておくよ。日時が決まったら連絡すればいいかな?」


昌磨「あぁ。頼む。あと、出来れば当日は河井ちゃんを女子バスケ部の助っ人として使いたいのと女子バスケ部の監督を黒井先生に頼みたいんだけどいいかな?」


中山「黒井先生を?それはどうして?」


昌磨「こっちの指示を俺を通じて黒井先生から女子バスケ部にしてもらう為にね。」


中山「まぁ分かったよ。何か考えがあるってことかな?」


昌磨「まぁ上手くいくかは分からないけどな。」


中山「分かったよ。」


昌磨「杉山君にはこっちから連絡しておく。」


中山「悪いね。それじゃあ、よろしく頼むよ。」


昌磨「そっちもな。」


中山君は部室から出ていった。


昌磨「まぁそんな感じだから日程が決まったら杉山君に伝えておいてくれないか?河井ちゃん。」


河井「了解っす!」


昌磨「あと勝手に交流戦に出ること決めて悪かったね。」


河井「大丈夫っすよ。楽しそうっすから。」


昌磨「それと黒井先生の件なんだけど。」


アイリス「私から伝えておくわ。」


昌磨「そっか。ありがとう。」


アイリス「当日私は何かやることあるかしら?」


昌磨「うーん。女子バスケ部の補佐とかかな?」


アイリス「分かったわ。」


なんかすんなり決まったな。もう少しなんか言われると思った。


部活終わり職員室


アイリス「黒井先生。」


黒井「ん?どうした?」


アイリス「今度男子バスケ部と女子バスケ部で交流戦をやることになったんだけど、女子バスケ部の監督を先生にお願いしたいのだけれど。」


黒井「なんで私なんだ?女子バスケ部にも顧問の先生がいるだろう?」


アイリス「海城君が先生を通じて女子バスケ部に指示を出したいそうです。」


黒井「ふーん。なるほどね。この私を通訳として使うとはいい度胸だね。かっ。面白いじゃないの。いいわ。手伝ってあげる。」


アイリス「ありがとうございます。」


黒井「ところで、調子はどう?」


アイリス「特に問題ありません。」


黒井「そうか。相談部の方はどう?」


アイリス「海城君は突拍子も無いことを言い出すので驚かされることがありますね。河井さんはうるさいですね。」


黒井「そっかそっか。ならいい傾向だね。海城君を文芸部に連れて行ったのは正解だったね。」


アイリス「それでは失礼します。」


黒井「さて、これからもその調子で楽しませてくれ相談部。」


交流戦当日


俺は体育館の上から交流戦の様子を観戦することにした。ここからスマホの通話機能で黒井先生に指示をする予定だ。

体育館内では既に男子バスケ部も女子バスケ部もウォーミングアップを始めていた。

その中には杉山君の姿も見える。

女子の方には河井ちゃんもいるな。


昌磨「黒井先生聞こえますか?」


黒井「聞こえてるぞ。」


昌磨「今日はわざわざすみません。」


黒井「別に構わないさ。私は相談部に顧問だしな。それに可愛い教え子たちからの頼みだ無下には出来んだろ。」


昌磨「流石。教師の鑑ですね。」


黒井「だろ?それで、私はどうすればいいんだ?」


昌磨「男子バスケ部の対戦メンバーには杉山君を入れるように指示してあるのでまずは杉山君はノーマークでいいです。」


黒井「ほう?大丈夫なのか?」


昌磨「多分大丈夫だと思います。それから先は展開を見てからまた指示します。」


黒井「分かった。」


そろそろ試合が始まりそうだ。

中山君に事前に伝えておいた通り男子のメンバーには杉山君が起用されているようだ。

さて、作戦通り上手くいけばいいが。


試合が始まった。

俺が先生に指示した通り女子は杉山はノーマークでプレイしている。

その為杉山はフリーの状態だが誰も杉山君にはパスをしない。

女子は杉山君をマークしていない為1人分余裕が出来る。

つまり、このゲームは5対5ではなく5対4なのだ。するとどうなるか。

答えは簡単だこちらが有利にゲーム展開を運ぶことが出来る。

これにより女子バスケ部との点差が開いていく。

だが、このまま終わる筈がない。


杉山(くそ!このままじゃ勝てない!俺にパスする気がないなら俺1人でやってやる。)


痺れを切らした杉山君がパスカットをしてワンマンプレーをしだした。

予想通りの展開だ。


昌磨「先生。一回タイムアウトを入れて下さい。」


黒井「分かった。」


先生の指示で試合が中断された。


昌磨「思っていた通り杉山君が痺れを切らしてワンマンプレーをしだしました。次は杉山に河井ちゃんを付かせて下さい。それで、杉山君がボールを持ったら杉山君に1番近い選手が杉山君にマークしに行って杉山君がボールを持った時点で2人でマークする状況を作って下さい。」


黒井「分かった。」


試合が再開され俺の指示通り河井ちゃんが杉山君をマークしている。

杉山君は素早い動きで河井ちゃんのマークを解きパスカットをしてボールを持つ。

その瞬間近くにいた女子バスケ部の1人が杉山君にマークに行き河井ちゃんと2人がかりで杉山君の動きを止めます。

元々女子バスケ部の子がマークしていた男子バスケ部の人がノーマークになったので通常ならその人にパスすればいいのですが、杉山君はパスをしない。

何故なら自分もパスされなかったからだ。


杉山(クソ!舐めんな!)


杉山君は無理やり前に出ようとした。


河井「うわっ。」


ピピーッ


審判「ファル。女子ボール。」


審判「君大丈夫かい?」


河井「大丈夫っす。ちょっとつまづいただけっすから。痛っ。」


審判「足を捻ったんだろう。無理をしたら駄目だ誰か彼女を保健室に運ぶのを手伝ってくれ。」


河井「申し訳ないっす。」


アイリス「心配いらないわ。あとは私に任せなさい。」


河井「アイリス先輩が出るんすか?」


アイリス「えぇ。だから、貴方は大人しくしていなさい。」


河井「分かりましたっす。」


河井ちゃんは保健室に運ばれて行った。

河井ちゃんの代わりにアイリスさんが出ることになったみたいだ。

アイツ大丈夫なのか?

そしてしばらくして前半が終わった。

勝負は後半戦だな。

ここで変わらなければ男子バスケ部も杉山君も勝てない。


昌磨「とりあえず、後半も今の感じでお願いします。」


黒井「分かったが流石に後半は何か作戦を変えてくるんじゃないか?」


昌磨「そうなるといいんですけどね。」


黒井「なるほどな。分かった。」


中山「このままだと多分勝てないと思います。」


バスケ部A「そうだろうな。ていうか向こうの作戦はなんだ?こっちの動きは筒抜けというか。」


バスケ部B「それが狙いなんだろ?中山。だから、杉山をメンバーに入れてるんだろ?」


中山「そうです。正直向こうがどういう作戦でくるのかは分かりませんでした。でも、多分向こうの作戦を考えた人は今の男子バスケ部の問題点を指摘しているんだと思います。」


バスケ部A「問題点?杉山を外せばいいだけだろ。」


杉山「なっ。俺のせいっすか?」


バスケ部A「そうだろ。お前が俺達にパスすればなんの問題もない。けど、それが出来ない。なら外すしかないだろ。」


杉山「それは、先輩達も同じじゃないっすか。俺にボール回してくれさいすれば勝てますよ。」


バスケ部A「実際勝ててないだろ。」


中山「止めて下さい。俺は正直ずっと悩んでました。男子バスケ部の方針は皆で楽しくプレイすること。だから、3年生の先輩達には最後の夏の大会までは悔いがないようにして欲しくて3年生主体でレギュラーを選んできました。」


中山「けど、それで負けても悔いはないんですか?皆で楽しくは勿論ですけど、俺はやっぱり勝ちたいです。」


中山「バスケ部全員で戦って全力出してプレイしたいです。それで負けたら仕方ないと思いますし諦められる。でも、今のままじゃ多分俺は後悔することになる。あの時ああすれば良かったって。」


中山「だから、皆で楽しく全力でプレイしませんか?」


杉山「分かりました。中山キャプテンの言う通りっすね。俺もそうしたいです。今まで俺は自分が1番上手いから自分中心で物事を考えてました。」


杉山「でも、間違ってたと思います。すみませんでした!これからはチームのことを考えてプレイするんでよろしくお願いします。」


杉山は男子バスケ部員達を頭を下げた。


バスケ部A「まぁ俺達も反省すべきだな。中山がそう言うんなら部長の指示に俺達は従うよ。」


中山「ありがとうございます!よしっ!後半勝ちにいくぞ!」


そして、後半戦が始まった。

後半にはなんと中山が加わっていた。

どうやら勝ちにきたみたいだな。


黒井「どうする?」


昌磨「しばらくは様子を見ます。もし向こうの問題が解消されていればもう俺の出番はありません。」


黒井「そうか。でもアイツは勝つつもりらしいぞ。」


昌磨「あぁ。アイリスさんですか。まぁ彼女のことは彼女に任せます。」


黒井「そうか。お前もだいぶアイツの扱い方が分かってきたようだな。」


昌磨「そうですかね。」


そして、後半戦が始まった。

3年生と中山君そして杉山君が連携してプレイしている。前半とはまるで別チームだ。

女子バスケ部も食らいついているが男子バスケ部の勢いに押されている感じだ。

アイリスさんも頑張ってはいるが流石にキツそうだな。

そのまま男子バスケ部が点数を重ね女子バスケ部に勝利した。


昌磨「お疲れ様でした。今日は本当に助かりました。」


黒井「いや、コチラも面白いものが見れたよ。」


先生はそのまま体育館から出ていった。

男子バスケ部は全員で勝利を分かち合っている。

とりあえず、依頼は完了かな。

俺は河井ちゃんの様子を見に保健室に向かった。


昌磨「失礼します。」


河井「あっ。先輩。」


アイリス「遅いわよ。」


昌磨「悪い悪い。足は大丈夫?」


河井「平気っすよ。これぐらい。」


アイリス「無理はしないようにしなさい。」


河井「了解っす。でも、先輩方に見舞いに来てもらえるなら頑張ったかいがあったっす。」


昌磨「あぁ。ありがとう。助かったよ。アイリスさんも。」


アイリス「アイリスでいいわ。」


昌磨「へっ?」


アイリス「名前よ。いちいちさん付けしなくていいわよ。代わりに私も昌磨って呼ぶわ。」


昌磨「分かった。アイリス。」


河井「私も!私も名前で呼んで欲しいっす!」


昌磨「分かった、分かった。茜ちゃん。」


茜「えへへ。改めてよろしくっす。アイリス先輩。昌磨先輩!」


それから杉山君は男子バスケ部の練習に参加する様になり皆で楽しく全力でバスケをプレイしている。

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