第14話 世界に解はある
前方で一人が気絶している。銃弾は実弾ではなくゴム弾のようで殺傷より無力化を目的にアクアマリンは撃ったようだ。
俺としても前方で気絶している男、ゼラニウムが敵対することはないだろう。とりあえず、俺は待機することにした。サージュが傷を診てくれたので多様は痛みもマシになってきた。互いに拳や蹴りを放って防御、去なしては諸に喰らったりしていた。
「あんまり、無茶しないでください…私の情緒が壊れますよ?お兄様」
冷静な言葉でも声は泣きそうなほどに震えていた。
手当した後に俺に抱きついて体温を感じていたいからと数分間隣にいた。
アクアマリンはゼラニウムが染み込ませていた魔力について調べている。あの魔法、かなりの魔力が必要なはずだ。それに魔力は放放出して保存するにしても少しずつでしか蓄積できないはずだ、一体どれくらいの期間広範囲で貯め続けていたんだ?こいつは。
アクアマリンに任せているのは、こういった魔力の性質に関しては専門外だからである。ちょっとした知識は持っているが、それぐらいである。
「ある程度、分かったよ」
調査が終わったのだろうアクアマリンが戻ってくる。
「んで、どうだった?」
「ここの魔力は、一番古いもので八年前の魔力が検出できた、つまりここら一帯を八年前から染み込ませて戦場に整えていたようだ。ゼラニウム君が追放され他のがちょうど九年前、そこから此処に辿り着いて此処に長年携わっているのだろう、見た目は大きく変えてバレないようにしているみたいだしね」
なるほどな、こいつの言動から追放から冤罪か又は罪滅ぼし、と言ったところだな、まぁなんとなくそんな気はしていたが、こいつもこいつで不憫な人生送ってんな。此処の街は少し都から離れているが近い方だ、此処に貴族も来るだろう、だがふぉティア国の貴族はどうしようもない奴が多い。ゼラニウムは俺たちがそう言う存在だと思ったんだろう。
こいつは好き好んで殺害をしない、それがわかるだけでこいつが襲ってこないことがわかる。
俺やアクアマリンが殺さなかった理由はお互い無駄な摂政を好まないからだ。数が多い、無力化が難しい時はやむ終えないが、極力控えている。
「んあ?...殺されていないのか」
俺らがそう会話しているとゼラニウムが体を起こした。
「別に俺らは殺生が好きってわけじゃない、お前さんを殺す必要がないからな」
「そう、か。君たちは僕が出会った貴族とは違うんだな。すまんかった」
そう言って下向いた、罪悪感だろうか?
「別にいいだろ、んでお前さんはどうするんだ?」
そう聞くと顔を上げるが、そこに敵意がないことがわかった。
「一応、君たちに着いて行こう。長年此処にいるがこの先の洞窟については知らなくてな。君たちがどうして此処に来たのかを知っておきたい」
「なるほどな…どうすっか、お前らはどうだ?」
ゼラニウムの言葉についてどう判断するかの前に二人の意見を聞いておく。
「私は問題ないと思います。天才の一人であるのなら、知っていても乱用する事はないかと思いますし」
「アクアマリンはどうだ?」
「私も同意見だ。もし協力してくれるのならありがたい、戦力が増えて困る事はないからね」
二人とも問題ないようだ、正直俺も同じだ。こいつが情報を知って俺らに敵対することなんてないだろうし。
「んじゃ、ゼラニウム。俺たちはこの先にある遺跡について調べにいく、とんでもない情報ばかりあるがそれでも大丈夫だと思えるならついて来てくれ」
ゼラニウムの手当は多少なりともしているため、痛みも引いているはずだ。
ゼラニウムは立ち上がり俺らについてくることになった。
洞窟の中に入って歩いていく。
中は暗いかと思ったが、所々地面が沈んでいてそこにある青く光る植物が洞窟内を照らしていた。歩く場所はあったから俺らはそのまま歩いていく。
「僕もこの洞窟内は初めて行くからね、あまり道案内は出来ないよ」
「ん?あぁ、大丈夫だ。最初から当てにしてないからな」
「酷くない?確かにその先のことを知らない的なことは言ったけど、情報として知ってそうとか思わないのか君は」
「いや、俺もサージュも当てにしてなかったぞ」
「何か理由でもあんの?」
「冴えないから」
「冴えないからです」
「冴えないことに対する偏見が凄くない?君たち」
がっくしと肩を落としながら歩くゼラニウムの背中を少し強めに叩きながら俺らも歩いていく。
歩いていると湖の音が鮮明に聞こえて来たので何かと思っていると、洞窟の壁が無く、右側に湖が近くで見えた。
「あぁ、此処のことだったのね」
「何か知っているんですか?」
「おう、ここは昔、とある式典で使われていたらしくてさ、昔は此処に光を詰めるのを躊躇っていたらしいのよ、見た目にそぐわないとかそんな理由でね。それで壁を開けて太陽の光と月光で見えるようにしたんだとさ」
「そんなことがあったのですね、ここで式典が…でも聞いたことないですね」
「それは俺もだな」
「でも、僕もこればっかりは聞いた話だから本当かどうかなんて分からんのよ」
それからはあまり話さずただ歩いて行った。
そうしていると、前方に目的の場所に辿り着く。
見る限りじゃ森での見た目と同じだ。そしてここが確か世間では公開されていない遺跡の一つか。
「話だけ聞いていたけど、こんなところに移籍がね…」
「んじゃ、中に入るか」
「ちょっとちょっと、遺跡は全部行き止まりになってんよの?そんなすぐ行くったってどうもないでしょうに」
「いや、それも含めてついて来てくれ」
俺が遺跡に近づくと遺跡は青く光だす。
ゼラニウムはそれに驚いている。真面目に驚いているようだ。
「どうなってやがるんだ…?」
「ほら、行くぞ」
「あ、おい!」
惚けていたゼラニウムを横目に俺らは淡々と中に入っていく、それを後ろから追いかけるようにゼラニウムが来る。
また長ったらしい階段を歩いていく。
降りていき通路が見える場所まで来ると突然前方が光出す。
俺らも驚きつつ、俺はその光が何を示すか理解すると光がなくなった時に出て来た少女に声をかける。
「よ、ラミナ」
「ご無沙汰しております。ジェスター様」
「どう言うことなんだ?君たちは…何を知っているんだ?」
「話しながら歩くか、ラミナ、中央へ案内してくれるか?」
「了解しました」
そういや言葉が最初と違って流暢と言うか、人間ぽくなったというか。それをラミナに聞いてみると俺から情報を取ったから言葉の使い方をより理解したからだそうだ。
それで歩きながらゼラニウムにこれまでの経緯を軽く話していった。まず、俺とサージュが旅をしている理由、奇襲をしてきたクラシクス・ディエティティスを探していること、それから王都に行きアクアマリンと行動を共にし此処まで来たことを伝える。それからファレンス村に遺跡があることを伝え、そこで重大なことを言ったことを言う。
「森の遺跡でな、俺が遺跡を作った古代の人たちの血筋らしくてな、俺が遺跡に近づけば遺跡が本来の機能を取り戻すみたいだ」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ、君が末裔だって…いや今まで機能しなかった遺跡がいきなり機能したことは前代未聞だしな…信じざるおえないんだろうなぁ」
驚いていたが自己完結したのか、言及する事はなかった。
「んで目の前にいる少女がラミナ、この遺跡を管理するシステムだってよ、んで俺は遺跡の権限を全て持っているみたいだ」
「なるほどねぇ、それで此処に情報を集めに来たのね」
「そう言うわけだな」
俺らが歩いているとラミナが止まる。どうやら目的地のようだ。
「こちらがメインホールとなります。そちらにソファーがありますので腰掛けてください」
「んじゃ、遠慮無くっと」
意外と弾力があった、時間がかなり経っているにも関わらず機能を果たしているソファーに俺は静かに感動した。
「ふかふかですね」
「いや〜おっさんには有難いねぇ」
それぞれが反応を示しつつ、ラミナに俺は向き直る。
「んで、此処で得られそうな情報はありそうか?」
「複数あります。ますは此処の遺跡の奇形探知の機能が残っているので此処周辺の地形マップを更新することができます。それと記録室に残っていた書類が一つあります」
書類か、それは後で持って帰って読むとして、先に地形を更新した方が早そうだ。それで他の遺跡の詳細な場所が分かればいいんだがな。
「なら地形マップの更新を頼む」
「了解しました」
それと共に前方にあったモニターが映り、調べてくれているであろうマップに周辺が徐々に更新されていく。広さ的にはユールシアス大陸のほぼ全域であった。そこに残り二つの遺跡が版権された。
「この二つがユールシアスに残ってる移籍だな」
「そのようだね、それで、気になるのが」
アクアマリンの言葉に此処にいる俺含め四人が同じところを見る。
「まさか、この機能に地中を調べる機能があったのは驚きだが、遺跡のところにこの機能では調べられていない大きな空間が一つあることが気になるね」
「私の予想では、そこに私のオリジナルがいる可能性が高いです」
俺以外の三人が驚いた、俺先に知ってたんだよな。
なんか悪いな。
「とりあえず、そのオリジナルが情報を持っている可能性が高いから言ったほうが、良い。そんな感じか?」
「はい、私のオリジナルなら情報を持っている可能性が高いかと」
なら今の目的地はその場所でいいか。
俺らの方針が決まったところで俺らはもう一つの情報について聞く。
「もう一つというのは、此処の遺跡にあるデータの内、一部破損していますが、大凡復元できるデータがありましたので復元いたしました。それを物質化することが出来ますがどうされますか?」
「なら、紙媒体で頼む」
「分かりました」
これなら持ち運びが可能だろうし一々戻って情報を確認する必要もないだろう。
「完了しました。こちらが復元した書類No.四の二十二です」
ラミナが渡してくれた書類は十枚ほどの情報が書かれた紙だ。
四人だが文殊の知恵に近い意味合いのことができるだろう。
多分一番情報を持っているのはアクアマリンだと思うが、多分俺らも考えることぐらいはできるだろう。
「よし、これで大丈夫そうだな」
「それと最後に伝えることがあります」
ラミナの言うことに俺らはラミナの方を向く。
「強くなった遺跡同士の通信で他の遺跡に接続はできずともどう言った状況なのかを調べました。その結果。昔に現れていた怪異が出現しつつあるようです」
「怪異?」
俺らは知らない名称に聞き直した。いや、怪異という言葉は知っているが、実際に存在するとは思わないからな。
「怪異とは遺跡が作られる前から存在する何か、とされるものです。詳細なデータは怪異の固体によって変わりますが、怪異事態についてはまだ判明していません。くれぐれも次の遺跡に行くのでしたら気をつけてください」
「怪異か、いやその為の魔法なのか?俺らの魔力は…いや断定するのは良くないな、とにかく確認するべきことが増えたな」
「怪異ですか、名前だけ聞くと童話や噂などでいうようなものなのでしょうか?」
「怪異ねぇ〜おっさんも知らないなぁ」
「魔法の意義がそこにあるのかもしれないなら怪異を調べる必要がありそうだね」
調べることは決まっているようなので、そのことも頭に入れつつ遺跡を出ることにする。ラミナは階段のところでまた消えてしまったが、俺らはそのまま外に出た、
時計を確認すると時間は一時間半くらい経っていた。それから俺ら四人は街に戻った。
俺らが止まった宿の近くに一人の老人が立っていた。
「町長の爺さんか?どうしてこんな時間にいるんだ?」
ゼラニウムは疑問に思い町長と読んでいた老人に近づいた、老人はそれに気づき俺らのことも認知して少々驚いたような顔をしていた。
「ヘンカー、おまえ…貴族の町への出入りは受け付けないんじゃなかったのか?」
「あぁ、それについてはこいつらは大丈夫って判断したのよ、それと町長の爺さん聞きたいんだが、あの洞窟に遺跡があること知っていたな?」
「…知ったか、そうじゃの、知っていた。と言うよりあそこの管理を管理していたのは儂じゃ」
「爺さん、なら僕に遺跡を調べてさせてくれ、僕も気になって知りたいんだ。身勝手かもしれないが、頼む」
「…儂らはお前さんを縛った覚えはない、好きにせい」
「…すまん、ありがとう」
「ゼラニウム、お前さんがそこまでする必要あるのか?別に俺らに付き合う必要はないぞ」
「お詫びってのもあるが、関わったからには知るのが責任だと思ったんだわ」
頭を掻きながら俺らに背を向ける。
「それと、俺にも何か生きる目的が欲しかったんでな、丁度良いんだわ」
それからゼラニウムと別れ、俺らは一旦宿の部屋に戻った。
戻ってから思い出したわ。
さて、今日は一人で寝れるだろうか。
サージュが毎回俺の入っているベッドに潜り込んでくるからマジで心臓に悪い。
と、思ったが今のサージュはどうだろうか?
考え方が変わった妹はもうしないんじゃないか?
そうだったら俺は凄く嬉しいぞ。
アクアマリンやサージュは先にシャワーを浴びに行き、俺は遺跡で得た情報である書類に目を通すことにした。
「一先ず何か気になるような情報のタイトルがあれば…ん?」
人が出来ないこと、知らないことなんて多くあるが、大きくあるのに知らないことなんてあるのか?
とにかく読んでみるか。
機密情報ファイルNo.四の二十二『鬼人』要約すると鬼人とは一般的に鬼と呼ばれる存在が実在しており、種として有る。鬼人の祖先、夜叉は神の手によって作られ、一人の女性と子を産み、一つの種として繁栄した。鬼人は身体能力が一般人の約数倍が平均としてあり、魔力は人と然程変わらず精神と大きく関わっていること。生命的部分で人と類似点が多いが異なる部分がある。鬼人の髪色は基本白、稀に黒であり、それは黄色や茶色といった髪色の人との子でも白か黒で決まっている。瞳の色も赤色で統一されている。これは鬼人の性質に近いのかもしれない。そして角が必ず生えると言うのがある。生えないのであれば鬼人としての遺伝子がなく人としての遺伝子が優っていることになる。角は二本生えるようになっており長さは定まっていないが平均として五センチメートルから十三センチメートルなことが多い。男女比率として女性が多く存在する。最後に大きく異なる部分である寿命について、鬼人は平均として二百五十歳から三百五十歳である。スネーフリンガ・ヒョ大陸の東部分に位置する遺跡は非常に大きく、その地下に種は密かに暮らしている。
読んだ情報をまとめるとしたらこんな感じか。
色々と考える必要があるな。まず、この種が神、神話に関係あるとしたら俺が単純に知らない、または発見されていない神話なのか。もし、もし神が他世界にいたら?
いや、ノートの隅に書いてあるような適当に漢字書いて当てて読む魔法技とは違うか。
それにしても鬼人、鬼と人間のハーフか。
俄には信じれない、だが信じざるおえない。理解に苦しむな…。
意識では理解しろと命令しても頭が理解を示さない。多すぎる情報は人の脳の処理能力を超えるというが、まさにこの事なんだろう。それでも、俺達はこの世界について、この魔力という力と魔法という技術について、知らなすぎる。ここ千何百年の俺たち人類は今ある力に疑問が生まれず、進歩させることに力を注いだのだろう。いや、疑問を示す者もいたかもしれんが、信じてもらえなかった、虚言と吐く人が多かったのかもしれない。俺達天才はそういった魔法という存在にやや疑問を抱くこともある。だが、一般的に魔法という存在は在るべきものとして幼少期から記憶されている。そこに疑問を抱くのは難しい。人はなぜ誕生したのかを根本的な部分から考えるようなものだ。そんなの情報も何もなければ考えるのなんて不可能だ。魔法も同じというべきだろう。
きっとここまで知っている人は世界を探しても一桁かもしれない。俺達は知るべきだ。この世界の真実を、神話に関係しているのならその神についても、天才として世界の実力者達として、この世界を知るべきだ。
ソファーに座って書類と睨めっこしていると、扉の音が聞こえた。
「お兄様、ただいま戻りました」
「私も戻ったよ」
どうやらタイミング良く二人が戻ってきたようだ。二人とも髪は真っ直ぐになっており風呂上がりなのは目に見えてわかる。
「おう、二人とも風邪ひかないうちに髪ちゃんと拭いとけよ」
特にサージュは神が長いからな、その分体温が冷えやすい。
二人は俺がまとめていた書類の情報とファイル本体に目が入ったようだ、
「お兄様、これは…ファイル内をまとめたものでしょうか?」
「あぁ、正直理解しきれていないが、解る部分を紙にまとめて置いた。その部分を読んどけば在る程度わかるはずだ」
「すまないね、一人で任せてしまって」
「あぁ、いや俺が暇潰しにやっていたことだ。気にすんな」
正直、ここまで疲労するとは思っていなかったけどな。
んじゃ俺も身支度をするか。
「俺も風呂に入るとする。今日はもう遅い、紙は明日読んだ方が良い、疲労も溜まっているだろ?」
「それがいいね、脳を休め、処理能力が回復している状態で読んだ方が理解も早いだろうからね」
「分かりました。お兄様、湯加減はちょうど良いものでしたしゆっくりしていってくださいね」
「あいよ」
それから俺は部屋を出て、風呂場へと風呂場へと向かっていく。部屋自体も綺麗で待遇も良い、さらに風呂も大きいときた宿、そりゃ客も殺到するわな。
それから俺は風呂に入る。
洗う部分を洗った後、俺は一人静かに風呂に浸かっていた。
静かだと考え事をしてしまうのが俺の癖、俺は俺自身のことを思い返していた。
若干長い前髪を片手で上げる。
やっぱり慣れない、食べ物も、俺が人と関わることも。
慣れないといけない事ぐらい解っている。
だが、昔を思い返すんだろ?本当に信用して良いのか?妹とは血は繋がっていない。
周りも幻滅するかもしれんぞ?だが、嘘をつき続けるのは無理だ。
「解ってる、話す時が来るまでに覚悟を決めるしかなさそうだ」
だが、もしまた独りになったら。
「のたれ死ぬのも悪くねぇな」
乾いた笑みを浮かべて一人、静かに呟いた。
だめだな、一人じゃナーバスになる。俺は風呂を上がり、体を拭いて服を着た。
髪は在る程度拭いたが、面倒に感じたから自然乾燥を待つ。どうせ風呂から上がったばかりだから目が冴えちまったしな。
部屋に戻ると照明は一部消されていて光っている照明も小さなものだった。
ベッドの方を見るとアクアマリンは一人で寝ていて、サージュは俺が寝る予定だったベッドに寝ていた。
俺は結局こうなるのかよ、と思いつつサージュが寝ているベッドに向かう。
サージュはまだブラコンなヤンデレのようで、それをどこか甘やかしている自分がいる。
「おやすみな、二人とも」
俺はさっきまで座っていたソファーで横になり目を閉じる。
案外すんなり寝ることができて俺はすぐに意識を手放した。
「…ま、にいさま」
声が聞こえる。
聞こえ覚えのある声に少しずつ意識を覚醒させようと脳が動く。
「お兄様!」
サージュの声で目を開けて、ソファーで寝ていた体を起こす。
窓を見ると日は登っていて日課は今日はやめとくかと呑気に考えているとサージュが顔を近づけてくる。
「どうしたんだ、サージュ」
「どうしたもこうしたもありません!ソファーではなくベッドでちゃんと寝て下さい!」
「つってもお前が寝ていただろ?」
「私と一緒に寝てくれれば解決じゃないですか!それに私もそのつもりでしたし、きっとお兄様はヘタレですから寝てくれないでしょうけど、その場合は私が無理やり寝かせますからね♡」
ヤンデレはヤンデレのようだ。そこの部分はもう諦めている。
俺は立ち上がり、状況を確認する。
「アクアマリンは外か?」
「お兄様が最後ですよ、アクアマリンさんもゼラニウムさんも外で待機してます。お兄様が最後でしたので私が起こしにきました」
「あぁ、すまんな。俺は普通に動けるし俺も出るとする」
サージュに先に外に出てもらって俺は着替えて武器や持ち物を持って、宿を出る。
「あ、お兄様♡」
俺が外に出るとすぐさまサージュは俺に駆け寄ってきて俺の腕に抱きつく。
ゼラニウムは少し気だるそうに、アクアマリンは昨日あった書類を読んでいる。
サージュの声で俺のことを認識する。
「ジェスター君も起きたようだね、なら次の目的地まで行く手段を考えようか」
「おぉ、おっさんを待たせすぎだぞ、僕はもうちょっと干からびそうだった」
「なら干からびとけ」
「昨日から思ったけど僕の扱い雑くない?」
「さぁ、お兄様、行きましょう」
「え?無視するん?」
「そんなもんで大丈夫でだろ、逆に信頼されてるって考えられるだろ、頑張れ中年」
「中年って言葉の響きがなんかいや〜イケおじって言うのだ若者よ」
「解った中年イケおじ」
「混ざってる混ざってる」
ふざけ合いながら俺らは目的を再確認する。
確かに互いに友人関係はない、だが、利害関係は時に友人関係に勝ると言う。俺らはこんな関係性で良い。
決めた目標としてはまず、謎の空間のある遺跡の調査をする。そしてラミナが言った怪異についての調査、それから鬼人との接触を試みること。この三つを一つ一つ片付けていくのが良さそうだ。その中でクラシクスについての情報を集めていこう。スノウがいつ襲ってくるかなんて解ったもんじゃない。あの女は危険だ。人間観察が得意な俺にとって、あいつは化け物とわかる。人を殺す人に殺されることに性的快楽を得ている奴は普通じゃねぇ。早めに仕留めるのが良いだろう。
「んじゃ、次の遺跡まで移動していくか」
世界の情勢も動きつつある、世界の謎も動きつつある。
俺達天才四人が奇妙、または奇跡と言える出会いで不思議な関係な俺達は世界の真実を知るために、俺達を襲った集団について、魔法の真実について。
『地形更新されば範囲ならば通信は可能です。私がナビゲーターをします』
「任せたぜ、ラミナ」
ラミナのナビの元、俺らはリーテル村を出る。
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