第7話 世界の欠片
遺跡は地下に続いているらしく、入り口から階段を降りていく。
遺跡にある若干青く光っている床や壁にある動線のような金属に見える物体。
他の遺跡でもあるらしく遺跡のどこにもある、と予想されている。
その予想通り、俺らが見つけた遺跡にもある。
若干の明かりを頼りに階段を降りる。
しばらく階段を降りた後は通路が続いていたのでそれを進んでいく。
不意に袖が引っ張られたのでそちらを見るとサージュが不安そうに俺の袖を掴んでいた。
「もしかしてだが…魔力が回復してないのか?」
「っ!?」
図星を突かれたように驚く。
「…やっぱりお兄様には敵いませんね」
口ぶりからしてあっているようだ。
「お兄様の予想通り、少し魔力が回復しきれていないのです、その影響なのか…暗がりが怖くて」
まぁ、そういうことなら仕方ないか。
久しぶりというわけでもないが、手を握ってあげる。
「っ…お兄様?」
「こっちの方が安心するだろ?」
サージュは驚いていたが、その表情は段々と微笑みに変わっていた。
「ふふ、そうですね…落ち着きます……もう離さないでくださいね」
「……善処する」
アクアマリンを先頭に三人で通路を移動していると少し開けた場所へ出る。
角は少し角張っているが八角の長方形の部屋に左右に等しい感覚で台があり、その上にガラスのケースがある。奥には扉らしきものがある。
割れているケースもあれば、割れてなく中身があるケースもある。
「ふむ、まずはここから調べてみようか」
俺らへ視線を向けてそう確認を取る。
「はいよ」
「分かりました」
俺らの返事を聞いてからアクアマリンは割れていないガラスケースから調べ始めた。
「ここなら俺のことも見えるし手分けして探索してみようぜ」
「…あとで頭撫でてください」
そんな要求されますか、まぁ大丈夫だろう。
「あぁ、良いぞ」
俺が了承するとサージュは手を離し自身で気になるところを見に行ってようだ。
「さて、俺も調べるかね」
俺が真っ先に行ったのは扉である。先に行く方法がなければ俺が調べたいことも調べられないからな。
今は開いていない扉に触れてみるが、金属のようで金属ではないような材質に驚きはしたが、周りに操作するボタンらしきものを探すが無い。
扉を開けれないか少し押してみるか。
そう思い押してみると、途端に機械音でもなく、何かが起動したような音が部屋全体に響き渡る。
それと同時に少ししか光っていなかった青い光が強く光だして部屋全体が明るくなる。
俺ら三人が驚いきつつも部屋全体に目をやる。
「何かがトリガーで光りだしたのか?」
「私にも分からない、何せこうなったのは初めてなんだ…充分驚いているよ」
その表情はいつもの笑っている顔ではなく少し驚きと焦りのようなものが見える。
サージュも不安そうにしており、俺の後ろに隠れる。
そのときだった、激しい頭痛に苛まれる。
「っ!?頭が…!?」
あまりの唐突な激痛によろめいて足が崩れる。
「お兄様!」
「ジェスター君!しっかりするんだ!」
二人の声がするがそんなの気にすることすら出来ない。
そうしていたら声がする。
頭痛がする中で頭に直接流れるような声。
「新規マスターを承認中……完了」
その声は少女のような声をしている。しかし、感情は一切感じられない。
「分類ユールシアス大陸遺跡、遺跡No.12緊急モードに変更中…十%……三十七%………七十二%…………百%メインシステムオールグリーン、二十三個のシステムオプションの破損を確認、修復を試みます。….失敗、急遽メンテナンスを要求します。現在、メインシステムを稼働中」
その声がすると途端に頭痛が止む。
さっきまでの頭痛が嘘みたいに無くなる。
頭痛を受けた疲れはあるが立ち上がる。
「お兄様大丈夫ですか!?」
「立ち上がって大丈夫なのかい?ジェスター君」
二人に心配をかけてしまったようだ。
「あぁ、大丈夫だ…頭痛がしたが、途端に止んだんだ」
「それよりも……今の声はなんだったんだ?」
この遺跡が稼働した声、アナウンスとは違う。
直接の声、不気味だな。
「声?何か声がしたのかい?」
「えっと、私には聞こえませんでした…」
どうやら二人には聞こえてないようだ。
どういうことだ?それにさっき聞こえた新規マスター…もしかして俺のことか?
考えにくいが、俺だけ頭痛したこと、俺にだけ声が聞こえたこと、二点から俺の可能性が高い。
一応聞いてみるか?応答してくれるか分からないが。
「どうして俺にだけ声が聞こえるのか答えてくれ」
俺が誰もいない場所に向かって話しかけてみる。
二人は不思議がっていたが、なんとなくに発言の意図を汲み取ったのか納得した様子だ。
「了解しました。理由としては貴方様が遺跡のマスターとして登録されたからであり、現在の設定では他の人にシステムの声は聞こえません」
言葉の抑揚はないが、分かりやすく、人形がしゃべっているように聞こえる。
それと設定と言っていた。なら設定を変えれば二人にも聞こえる?
「なら、二人にも聞こえるように設定を変えてくれ」
「不可、現在設定を変えるオプションが破損しているため変更できません」
まじか、なら二人に聞こえるようにする方法を考えた方がいいな。
二人に聞こえないままじゃ何かと不便だしな。
それに俺が誰もいないところで話してる痛い奴に見えるからな。
「二人に声が聞こえるようにできないか?」
「方法は二つほど、一つは先ほど申した通り破損したオプションを修理すれば可能となります。もう一つはシステムを実体化しホログラムとして顕在させることです」
ホログラムか、確か実体を持たず、しかし容姿と声を本物に限りなく寄せてみせる技術…だったか。
それで見えるのならそっちの方が良いな。
「ホログラムとして姿を見せてくれ」
「了解しました。システムの設定を一部変更中…二十五%……六十三%……八十八%……百%……完了しました。事前に設定された姿を投影します」
その声が聞こえなくなると共に目の前が青く光だし、思わず目を閉じる。光がある程度収まり目を開けると青く光り宙に浮かんでいる少女ががいた。
ふんわりと浮かんでいた少女は床に足をつけ目を開いた。
その姿は黒いキャミソールワンピースを着て裸足。背が小さく黒髪で脛まであり目は黄色だった。
その光景を見て俺を含め二人も声を失っていた。
俺たちは世間知らずというわけじゃない、それどろかその最先端を理解している。だからこそ、今の技術ではこんな芸当ができないことを痛いほどに理解し、目の前にいる少女が人ではなく作られた存在であることも理解した。
「現在ホログラム機能に変更中」
その声は脳に直接ではなく少女から発せられたものだとわかるが、先ほどと声は変わらず、あのシステムの声だと分かった。
本当にシステムだったとはな……これで聞きたいことが聞けそうだ。
まず世界にある遺跡はどこにあるのか、俺がマスターに選ばれた理由、このシステムは何のか、聞きたいことは沢山ある。
幸いにもこの周りには認識阻害のようなものがあるようだ、おそらく遺跡から出てるのかもしれないけどな。
…もしかしたら世界中にまだ遺跡があるのかもしれない。この認識阻害の機能があるから見つけられてないのかもしれない。
……そもそも俺らは何で見つけれたんだ?
まぁ、聞けばいいか。
「んで、改めて聞きたいんだがお前さんは誰なんだ?」
「回答、私はユールシアス大陸内にある遺跡No.12の管理人であり世界全体のシステムの管理をしているシステムそのものです」
「システムそのもの…」
こいつ自体がシステム、なるほど…システムに判断を持たせることによって悪用を防いだのか。
「お前さんのことは何て呼べばいい?」
「固有名は決まっていません、ご自由にお呼びください。もし、思いつかないのであれば私の旧名でお呼びください」
「旧名?」
「はい、現在は以前のマスターがいなくなられ継続されていたシステムがなくなったので名前が設定から外されました。しかし、履歴として残っています」
「なら、その旧名は?」
「回答、私の以前までの名前はラミナと呼ばれていました」
ラミナ…いや葉理か。
「なら俺らもラミナと呼ばせてもらうわ」
「了解しました。私の名前をラミナと再設定します」
「私からも質問良いかい?」
アクアマリンがそう言う、笑っている表情ではなくいつにもなく真面目な表情をしている。
「可、何でしょうか?」
「世界には幾つの遺跡があるんだい?」
「回答、ここを除きユールシアス大陸に残り三箇所、アーレンス大陸に五箇所、スネェーフリンガ大陸に三箇所あります」
となると世界で計12箇所か、多いな。確か、ユールシアスで一つ、アーレンスで一つ、スネェーフリンガで二つ見つけられているはずだ。
「私も良いでしょうか?」
「可、何でしょうか?」
「遺跡に認識阻害のようなものはあったりするのでしょうか」
「回答、この遺跡では認識阻害の機能は稼働中です」
やっぱりか、俺の予想が当たったな。
だから世界で遺跡が見つけられていないんだ。扉が開けられなくて中に入れないとかならわかるが場所さえも分からないはおかしいのだ。しかし、俺らには効果がないように思える…なぜだ?魔力を扱うことに長けているからか?
「ジェスター君、君が抱いている疑問は私が抱いている疑問と同じだろうね。だが、私にも分かりかねることでもある」
多分、誰もが分からないことでもある。目の前にいる少女、ラミナに聴かないと何も分からない。
入ってしまえば未知との遭遇でもある。俺らの常識と知識では理解するのに限界がある。
「なぁラミナ、どうして俺らは認識阻害に遭わなかったんだ?」
俺ら三人が疑問に思っていることを聞く。
「回答、それは」
感情が無くどう思っているかも分からない声で俺らの予想外もいいところな答えが返ってくる。
「マスター様が古代人類の末裔であるからです」
「…は?」
流石に理解できない、俺が古代人類の末裔?急展開も清々しいくらいの回答だな。
しかし、アイツらがそうだとは思えない。そもそも俺の家系はどうなってるのか知っちゃいない。興味なんて無かったからだ。
だが、身近で知ってそうな奴は親父くらいか。
サージュもアクアマリンも困惑しているようだがアクアマリンは謎に納得している様子だった。
「血が繋がっているから最初にジェスター君にしか声が聞こえなかったと?」
「回答、その通りです」
「流行りか、ますますジェスター君と行動を共にした方が面白いことが起きそうだねぇ」
ふふふ、と不的な笑みと笑いをするアクアマリン。
……完全に不審者にしか見えん、怖いんだが?
俺にも恐怖を抱く対象はいる、それは俺からみてもやばいと感じる不審者。
そして俺と同レートの奴、言い換えれば同族嫌悪である。
兎にも角にも疑問に思っていたことはある程度わかった。
呑み込みはできてないが理解はした。
「しっかし、情報量が多すぎるな…」
今回で移籍やら何やらの謎が一気に改名しそうだ。
世界の歴史に触れることになるのなら一つ一つ情報を整理しないと理解出来ない。
記憶力が良い天才と言えど吸収できる情報量には限界がある。
俺やアクアマリン、サージュと同じように。
「一度、ここで情報を整理しようか」
アクアマリンの提案に俺もサージュも頷く。
「それじゃあ、何から整理しようか」
「まずは世界にある遺跡について整理するぞ」
「わかった、ラミナと言う少女から聞いた話から世界には十二個の遺跡があるみたいだね、そのうち四つ、私たちが見つけたこの遺跡を入れて五つの遺跡を発見した。と言うことになるね」
「残るは七箇所か、案外残ってるもんなんだな」
「そうみたいだね、世界にはまだ得られる知識や技術がまだまだありそうだ」
遺跡はこんなもんか、んで次に気になるのは。
「システムそのもののラミナと言う少女が気になるね」
「あぁ、ラミナは恐らく遺跡が出来たころ…つまり千年以上前からいたことになる」
「現実的な数値ではないが、システムと言える存在でありホログラムを見せられたのだ、認める以外にないだろう」
「それと全体の管理者と言っていたな、他の遺跡の認識阻害機能を外させることもできるんじゃないか?」
「やってみる価値はありそうだね、それに他の遺跡を調べるときに調べやすくなりそうだ」
多分、俺もアクアマリンも遺跡を調べる方向にあるし、まぁ他にも問題は多くあるから一つ一つ解決しないといけないな。
確かに俺は人をあまり信じれない、だがそれは物事をよく見ようとしない人間だけが対象だ。考え方が違えど目の前にある事実のみ信じる馬鹿を俺は好きになれん。
だが、俺だって人間だ。死にそうな人間、困っている人間がいれば良心が働く、全く俺の心は寛大だな。
にしてもラミナか、どうみても少女なんだよな。
ラミネに俺は視線を送る、それに対応するように小首を傾げるラミナ。
反応も人間のようだ、事情を知らない人に見せれば人間と間違えるほどに。
ただ、少しだけ体が透けている、ホログラムだからだろうか。
というか見た目少女だよな?ラミナ作った奴もしかして……ロリコン?
まずいな……世界の汚い部分に触れてしまったような気がする。
だが……俺には効かない、何せスキルセットは埋まってしまっているからな、ロリコンと言うスキルは入れれないのさ。
つまりは俺に他の属性を入れ替えることはできない。スキルセットにある弱点さえ突かれなければ最強の壁だ。
ふっ…俺きも。
さて自虐はここまでにしてどうすっか。
まだ聞いてないのは俺が古代人類の末裔だと言うことと、奥の扉が開くかどうかだな
一応先に扉が開くかどうか聞いてから俺のことを聞くか。
「ラミナ、多分奥に続く道はあると思うが……扉を開くことはできるか?」
「可、遺跡の権限は全てマスターにあります」
権限が全て俺にあるのか…何となく面倒なことに後々なりそうだな。
俺の人生色々すごいな、はぁ……引きこもりの人生送りたかったが、無理そうだな。
まぁ、怠けたツケだ。そろそろ払うとするかね。
「なら、奥の扉を開けてくれ」
「了解しました」
難無扉は開いた。
本当に俺に権限があるみたいだ。
しっかし言葉一つでこうなるとはな。
便利には便利だが、俺に一存なのは少し重荷になりそうだ。
扉を開けることができたし、ここから一番気になっていることを聞くとしようか。
「俺が古代人類の末裔っていうのはどういうことだ?」
天才三人を持ってしても分からない謎、というか分かりようがないって言った方があっているか。
「回答、言葉の意味通りです。マスターの一族は魔法文明に初めて触れた存在でもあります。その一族の末裔としてマスターが祖先が残した遺跡の権限を受け取った。という形になります」
俺の一族がねぇ…。
「で、でもお兄様の一族…クロッカス家は三百年に満たない歴史ですよ、お兄様の祖先が古代人類なんて…」
「それに関しては幾つか可能性があるよサージュ君、例えば歴史が三百年分しか残っていなかった、何かしらの隠蔽がある、とかね」
「…そうですね……結婚相手の一族が古代人類の一族だった可能性もありますね、少なくともお兄様には古代人類の血が入っているという事になりますね」
それが本当かどうかなんて当事者しかわからない事だが、可能性の一つとして残しとう。
なら歴史を遡れば魔法の技術に世界のことも分かりそうだな。
なぜ魔法があるのか、調べれそうだ。
「同意、私も皆様が申した可能性が一番納得できるものと考えております」
ラミナもそう感じているようだ。
「まぁ、今考えてもわからんもんは分からん、先に奥の方を調べるとしようぜ」
俺の発言にアクアマリンもサージュも納得した様子だ。
今はこの遺跡に残っている情報を集めて、ラミナにも色々応えてもらってって感じだな。
俺たちはまだまだ情報収集の為に奥の方へ足を運ぶ事にする。
私たちは奥へと進んで行っている。
ラミナ君が案内を務めてくれるという訳だから私とジェスター君、サージュ君はその後を追うように歩いている。
しかし、私も今日は刺激的な一日に既になっている。これならば私の目標も叶いそうだ。
ジェスター君の一族についても気になるが、あまり記載はないだろう、私はこれでも国同士の情勢は把握している方だ。
何分研究者だからね、私の研究結果は国同士が争うほどに手にしたい代物ばかりらしい。
正直、私はそういった人同士の争いなど興味の欠片もないからね。好きにやってくれという感想を残す。
今は世界の真相を知りたい、謎を改名したい欲でいっぱいだからね。
それはそうとあの兄妹は面白い、ジェスター君は世界の根幹に関わる重要人物、元々面白い人間だとは感じていたが、まさか古代人類の末裔だとはね、それは予想外だったよ。
そしてサージュ君、彼女は彼がラミナと会話している時や移動している時、ジェスター君の服を掴んでいたね。彼は気づいてないようだったけれど、彼女はかなり彼に依存しているようだね、過保護とは違う、守ってほしいと言った感じかな。
しかし、あくまで私から見ての主観である事には間違いなく、政治上での人間関係ならば慣れているが、家族や友人、恋人などの個人的に広げる人間関係は疎い、特に兄弟や姉妹については分からない。私にいるわけでもなければ誰かから話を聞くわけでもないから、そう言った話を知らないからこそ何かを言うことができない。
その主観で言うのならあの兄妹は異常だ。
折れても不思議じゃない、墜ちてもおかしくない、なのに。
どうしてそのままでいられるのか私には理解できない。
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