第7話

「うわ!なんだあれ」

 後ろの方で古くからの友人の2人が言った。

「ちょ、止まって!」

 なんだよ、と心の中で悪態をつきながらハザードをつけて端によせ停めた。

「事故ったら危ないから驚かせるなよ」

「ごめんて、でもあれほら」

 後ろの人が指差す方を見ると車が道から外れ横転していた。

 助手席の友人も気づいたらしく、なんだあれ、と言っていた。

「あれ、警察に言ったほうがいいんじゃないか…」

「救急車もいるかな?」

「見に行こう、俺、警察に連絡しながら行くよ」

「うん、頼んだよ」

 そう言って、スマホのライトをつけて行った。

 どうやら車線を越えて反対車線から道を外し転がったようだ。

「あれ、誰もいない」

 シートベルトは締まったまま人だけが居なくなっていた。特に爆発する気配もなく、後ろには大量の食料が積んである。

「自力で逃げたんじゃないか?」

「でも窓もドアも開いてないけど…」

 夜なせいか、吹く風に体がぶるりと震えた。

「な、なあ、今日、やめないか?」

 誰の言葉だろうか。分からないが、皆も同じ考えらしく、そうだなと言って車に戻った。

「警察来るらしい。ここじゃあ何もないからここの警察署に来てくれって」

 と、通報した彼がスマホで地図を開いて見せた。

 夏と言うのに肌を舐めるような嫌な寒気。それを消すように、飲み会で失敗したネタなどを言い合った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る