Episode.9...L is Over.

「ねえ、達郎。一つ聞きたいんだけれど」イリアは言った。「貴方を何であたしが選んだか教えてあげるついでに聞かせて、―――あたしを選んだ理由」

「君にしろ、と矢沢が一生懸命応援してくれたときかなあ、あの時の出会いは忘れないよ」達郎は言った。

 「―――、あたし実はね。細川さんから聞いたんだけれど、あたしも、聞いたの。星の声」そう言ってイリアはゾッとした顔をしている。「運命ってあるのかどうかは知らないけれど、ルーレットで出会いを決めるものではない、と言う事だけは知ったよ」そう言ってイリアは笑った。

 達郎は、ふと我に返る。ではあの時の声は本物だったのか。であれば、イリアを後押ししていたのは、細川も知っている。

 それでは、きっと宇宙の謎すらも―――?

 そう感じ達郎はすかさず、スマートフォンの電話口に急ぐ。

 連絡先は細川を選択すると、数回のベルで対応した。。

 「もしもし……、あ、達郎?」細川は電話に出た。

 「すまん。イリアから聞いた。急な話で済まないが、星の声の謎は解けたか?」達郎はベラベラとまくし立てるように言った。

 「懐かしいね、あの時のバーベキューの時矢沢に告らなくて正解だったわ。あの時、あんなだらしない体たらくになってさ。今は宇宙飛行士だって?今だったら付き合ってあげても良いわ」

 「お願いだ。謎を教えてくれ」達郎は言った。

 「企業秘密かな」細川は言った。「今Mediaで公開されている情報は私の研究所のサイトに公開されているのみだから、じゃあね」

 達郎はインターネットを開く。リンクは国際宇宙ISSステーションの関係サイトだった。ネットサーフィンをすると出てきた。記事はブラックホールへと閉じ込められそうになる宇宙の星々の一覧とある。

 あの時の星の言葉を思い出す。

 検索すると、そこにあったのはVegaとAltair。

 間違いなかった。

君は―――Vega?

 「ねえ、イリア。君は零元師と言って寿命は永遠なのは本当なのかね?」僕は聞いた。

 「星の寿命までは長生きする。しかしあたしは、Vegaということ座α星の生命体なの。だから、貴方、あたしで良かった―――?」

 僕は惑う。違う、こうじゃない。

 「運命を変えよう、Air Cloud Spot...で」僕は言った。

 どうやって?当てもないのに?

 イリアを連れて出た。外は夏。あの頃が詩的だったことを思い出す。闇も利益もなく、ただ数直線上の方程式だけを追いかけていればそれだけで十分だったあの頃。

 逸れたカーブによって、narrowな運命を辿る。

 由真も呼んだ。

 「由真、イリアは多分、君を選ばせたかったんだと思う。イリア、君はAltairがいるはずだ」

 「そうなの?」イリアはきょとんとする。

 「由真、あの星の胎動が生命を移している。祈って、還りし闇の果ての下に」

 電話ですっ飛んで出てきた由真は最初何事かと思ったけれども、イリアの事情を聴き、多分違う導きを信じてしまった。星を狂わせてしまったんだと驚くと同時に、多分あたしは彼で良かったんだと思えるから、信じた。

 「バイバイ、星は永遠に朽ちない。だからあたしは未完全の生命だから、彼の言う未完全な思いを信じて、繋がるつもりなんだよ。貴女はどこか遠いAltairを探すべきだね」 

 「でも気になるのは、由真で良かったの?あたしじゃなくて」そういうのはイリア。

 「いや、Altairがいるじゃないか、見てみろ。あの思考の流入を」

 〈Altairの意志〉

 私はどうだっていい。無音の刻印を刻み、ここに来ている。生命は交わすべき錯綜とともに真実を得るはず―――。君は私でなくていけない理由は何だね?そんな理由も根拠もないのに勝手に人類が作ったおとぎ話を信じてはならない。

 

 「同じだけ、闇を知っただけの仲だしな。昔からの繋がりは多分そう簡単には消えないと思う」達郎は言った。「イリアでもよかった訳じゃない。単にイリアは友達のつもりだ。missとかさんざん言っていた矢沢に乗せられたけれども、結局のところ、君と僕は友達なんだ。それ以上にはなれない。由真も友達以上の家同士の仲だから、気になれば遊びに行ける。見ず知らずの他人を僕はAltairには預けには行けない」

 


〈Altairの意志〉

 そう、確固とした意志があるわけだね、不純な理由というよりかは、君自身、由真君で良かったんだろう?だったら一々イリアに近づいた理由は何だったの?

 


 「それは彼女が思考の流入によってあの時の花火大会から洗脳していたからだよ、仕方なかったんだ。諦めてくれ」

 「そう―――だったら、良いわ。知らない」イリアは言った。「アンタがそういうならそうなんじゃない?」

 「イジられてるわね、ずいぶんと」由真は言った。

 「いや、操らないと言えばいいのに、ずいぶんと食い気味で来るから、うっかり」

 「そんなんはあたしもいけません」

 「まあ、何とも言えないけれども、友達でいいんじゃない?みんな」僕は言った。「単に捨て置けないんでしょう?」

 「まあ、ねえ。いいわ、そうしましょう」

 鳴る風鈴林に、騒ぐ蝉時雨。

 友達で済むとは思うなよ。愛を与え続ける関係に疑問が根差した。平和な社会に疑問を投げかける。

 (僕を知った奴らは用済みだ、行けAltair、君が近づいてこの星ごと燃やし尽くせ)

 (Altairの意思)

 それでいいのかい、彼女たちを殺してしまっても?

 「君たちは僕を知りすぎている」

 「どういうこと?」

 「存在を抹消してやるよ、行け。Altair」 

 すると、星の引力場に重力場が形成され、由真とイリアは地べたに手を付けた。

 僕はバッグから持っていた包丁を持った。

 「何する気?」

 「楽にしていた方が良い」

 そう言ってゆっくりと脅していった。悲鳴が一回、二回、三回。

 ほっと日本茶を飲む。これが日本人らしいなと思い一息ついた。

 由真とは決別を付けたかった。いつまでも、高々女相手に、情けない、と思ったから包丁を振りかざした。ただそれだけだった。

  

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