Episode.5...Every life, Every day...XXX.

 カササギはよく食べる方で私の分まで平らげてしまった。

 食べたら眠たくなったというので、近くの氷空の集まる場所Air Cloud Spot...まで一緒に付いていくことにした。

「あたしはまともだってことは熱が平熱あれば分かる理論だがな」

「何を言っているんだ。非常識なことしかいわないじゃないか」

「そりゃあんたのFieldに持ち込んで科学講座ぶったげているからでしょ?そんなん私専門外だわ。私の将来の夢聞きたい?Italyで弁護士になることだわ」

「それは良いご身分で」

「語彙の卓越している私が言うのもなんですけど、そのご身分って単語使い方違うわよ」

「いや、正しい。そんな良い身分で居られると勘違いしているからだ」

「まあ!?失礼しちゃうわね。あたしItalyにいってもあんたの面倒見ないわよ」

「何故見る必要があるんだ?私は私の彼女の面倒を見る・・・・・・、痛っ!」

 靴を踏まれた。何というPrideの高い女。私を鳥かごが何かに入れておくような気分で言っているのだろうか。本当に失礼な女である。

「あんたって、本当黙っていればイケメンなのに。ダッサイことしか言わないのね」

「失礼な女だな」

「どっちが」

「まあまあ、達郎もカササギさんもそのくらいにして。母の顔に免じて」

「・・・・・・まあいいけど、そこ道違うぞ」そう言って、満月の夜、鵲を抱きしめ向かっている道路とは逆の方を手に取ってあるき出す。鵲は、最初ビックリしたけれど、そんな些細な事実が嬉しくなって、ウキウキで付いていく。

「あ……、あたしをEscortするなんて随分成長したじゃない?どこで学んだのかな」

「少なからずお前でないことは確かだ」

「そうね。あなたも立派になっていくのね・・・・・・何か哀しい」

 そういって泣き始めた。どうしたというのか、立派なのが哀しいなんて本当に失礼な女だと思っていると、突然蹲りだした。

「どうした、鴎さん」

「頭痛い。あのゆずハイボール酒入ってたぞ。うぃー」

「何?そんなはずは、母さん!」

「バレたか。これは我が家の大学院卒業記念の飲み会」

「何やってんだ。もう!」

 そういっておんぶして抱えてあるき出す。風呂には浸かった。気持ちよかった。広い風呂には誰も居なかった。それは良かった。これはその帰りだった。

 白い腕が街灯の灯りに反射する。

 白い顔は、詩的なくらい美しくて、思わずくらりときた。

「どうしたの?達郎くん」

「アンタとか呼ばないんだ」

「達郎くんで良いよね?」

 そう言って由真は歌った。

 誰も止める人間は居なかった。

 俺も歌った。

 静かで、優しい、あの時の夜を思い出す。

 静かで瞬く人の群れ。

 息遣いに混じって、上昇するAir Cloud Spot...による気流。

 上流と共に高鳴る鼓動と、コンディショナーと石鹸の香り。

 そして、上り立つ龍の炎のような花火は圧巻である。

 私は、あの時由真を連れてきたが、それは、間違いではなかったんだ。間違いではなかったんだ。

 私は、静かで優しい闇がゆっくりと落ちてきた夜に、それを思い出す。

 誰も止めなかった。

 誰にも知られないようにしよう。秘密のDateである。

 じゃあね。かささぎさん。

 別れた先に、兎の看板があって、それが月で明るく照らし出されていた。

「月兎って知ってる?この地方に伝わる妖怪」

「いや知らない」

「月に兎が住んでるとか言う話じゃなくて本当に月兎って言う妖怪が神隠しに遭わせるわけ。年に一度秋の日に」

「中秋の名月か」

「まあ、迷信だと思うけど。何かあったら迎えに来て」

「分からない。私にも何かあれば携帯に連絡してくれ」

「連絡させてね」

 そういって手を繋いだ。自然だった。

 兎によって隠れないように体を寄せて二人歩く。Landmarkは鵲の家。母らしき女性が現れた。私の母のせいで酔っ払った旨を話すと、気さくに快く返事をしたので助かった。

「じゃあね、鵲さん」

「貴方が月兎だったら良いのに」鵲さんが小声で呟いた瞬間列車が通り過ぎて聞こえない。

「えっ、何?」

「明後日、学校で会いましょうね。さようなら」

「さようなら。月兎みたいにはなれないけれども、腹狸なら出来るかもね」

「やっぱり」そう言って由真はケタケタと笑った。

「僕らやっぱり別れよう」

「それが良い」由真も納得した。「アンタほど、女性からからかわれて疑われるタイプっていないね。凄い。見事に思った。「って」くるりと一周した。「どこかに女の子いる?」

「良いや、将来君に捨てられる前に別れようと思って」

「ブッ、何それ」

「いやね、作家になりたいんだ。それには無職で駆けずり回っても埒開かないだろう?」

「そうね」

「それに今就職もっと厳しくなるんだぜ」

「それがどうしたの?」

「親との話の結果、就職活動から始めることにしたんだ」

「うっそ、んで?学費は?」

「自分が出すって」

「へえ、良かったじゃない、自責で負えるだけよかったわね」

「そんな姿君が見たら、別れるって絶対呆れて言うと思うんだよね、いつかずっと一緒に暮らしていて飽きが来るのは間違いない」

「まあ、矢沢が海外に行ったりしたら、確かに比べるわね」

「だろ?」達郎君は言った。「だと思ったんだ」

「まあ、言えてるわね。仕方ない、あたしの負けだ。諦める」由真は手を挙げた。「じゃあ、アンタは作家?」

「shootをうまく狙い定めないと難しいだろうけれども、Courseは精確に」

「ネイマール選手みたいになれれば良いね、kickerは君だ」そう言って由真は親指を出す。「じゃあね、楽しかった」

「じゃあね」

「でもね」達郎が言った。「出版社が公開してくれた。しかし作家にはまだほど遠いらしく作家にさせてくれないから、費用対効果の最大を取ることを選択した」

「うっそ、何の冗談?」由真は笑っていなかった。「じゃあ、アンタ本当に作家になれない?」

「作家になれないのに女は要らないからな」宮房は言った。「ただ、それだけだ」

「へえ、言うじゃないの。アンタにはそう言っていられるのかもしれないけれども、待っている女の身になってみなさいよ。待つ気も失せた。他の男にするだろうね」由真は片方の瞳から水滴が溢れた。

 由真―――。

 探偵小説部の女性性。

 彼女とは縁切れない。

 僕は腕からMintの匂いがするのを知った。僕の匂いだった。


 

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