青い星の人達は見知らぬ故郷に帰りたかった

青い星の人達は見知らぬ故郷に帰りたかった 皆自分は赤い星から来たと知っていたが、黄色い星が故郷だと信じていた 天を見渡しても星は皆黒く耀いていた 黄色い星は嘗て在った事がないと誰もが知っていた だから人々は黄色い星に帰るまで耐えているのだった


海は空を映している 白く霞んだ空と灰に延びた海とは水平線という境がない 海は広がり滑らかに空へ回って自分のいる所まで返ってくる


街の屋根は貝の欠片でキラキラ輝いていた 天の星空を街がもう一枚背負っているかの様 海の思い出が月に照り返している


黒猫を屋根に上げて家をひっ繰り返したら 店長が冷蔵庫を持って来て「そら返し猫の逆理やないか」と言ってバターサンドを土から掘り出した。十二枚冷蔵庫に詰めて一枚は猫にあげた


雨が灰色なのは 天空で燃えた花の灰が混ざるから


鏡に映った枯木よ おまえは電離流体の笛を聴くか それは飛んでいる自分だよ 自分はただ並んだだけの言葉だと考えているおまえの谷折りだよ 身銭を切らない者を憎む私の私を放って置かない者をあざわらう私の林道だよ


想受滅に肉が生えた 赤い鉄錆色の肉はすぐに森になった 森の間を光炎が菌糸を張る 菌糸を蟻が切り取ってぽとぽと運んでゆく 蟻は肉を腐食して空との間に電圧を溜めている 埃が拭き散らされ晴れた日に般若の王は燃え上がった

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喩機の暗病の何火で獨り雌覺めてゐること 麻井シキ @lotus_gate

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