今度は1人で

「彼らにわかってもらえるまで行動するしかないよ」


 景が笑みを見せながら答える。




「じゃあこうしましょう、我々が最前線で戦います、1番に命を張ってね……だから戦えるものはついてきてください、それとも、俺達人間が捕らえられたエルフのためにエルフの権利や自立をうたっているあなた方が俺達が戦っているのに戦えないと?」


 広希が挑発するようにエルフ達に問いかける。




「ほう、言ってくれるじゃねえか」


 そう言葉を返してくるのはエルフ独立党の党首、エーリッヒ・シュトラッサー


 歳は40くらい、ひげを蓄え、筋骨隆々のあちこちにある傷が幾度も戦いに経験があることを暗示していた




「逃げましょうよリーダー、きっと挑発ですよ、安い挑発」


「そうですよ」


 周りからはそんな挑発を受け入れるべきではないとヤジが飛ぶ




 そしてシュトラッサーは叫び、答える。


「だったらこうする、戦い奴だけ戦え、俺は行く……誰も強要はしない」




 そして彼らの半分は逃げて行き、戦闘が始める。


「しかしよく半分も来たな?」




 戦闘の中で広希がシュトラッサーに話しかける。


「どういう意味だぁ?半分しか来なかったんだぞ?」




「こういう口だけ威勢がいい奴のかぎって、日頃から~のためとかあいつは出ていけーとか言う奴に限ってピンチの時には逃げ出すのが世の常だったが意外だったな、見直しましたよ」


 広希が言葉を返す。




「そう言う奴もいるがな、でもそれだけじゃねぇ、人間の奴らに暴行されたり、家族が逮捕されたり、それが人間達に恨みにつながっているんだよ」




 シュトラッサーの言葉にさらに食いつく。


「逮捕?何があった?」




 ドン!!


 敵を倒していきながら2人は会話を進める。




「特殊警察、シュターゼって言ったっけな、この町にもいるんだよ、一般人の格好をしてな……怪しい奴をとらえて連行、そしたら誰も戻ってこない」


 シュトラッサーが戦いながら答える




「シュターゼ、確か聞いたことがあるな……」




 スバッ!!


 ぐわぁぁぁぁぁぁ


 敵兵が次々と倒れていく。




 その中で記憶をたどる広希




 そこに景が口をはさむ


「新連邦が治安と秩序を維持するためとして作られた組織のこと。でも裏では自分たちの信条に反したと判断した者や政敵を投獄したり、見せしめとして拷問を行ったり、収容所、強制労働などを行っているんじゃないかって噂があるんだよね」




「ちょうどいい、収容所を解放すれば分かる……」


 そう広希が言葉を発すると




(一気に決める!!)




 悠久なる輝きの力、今解き放ち世界の闇を貫く閃光となれ!!


 クレアティオ・オブ・パーセム・オルビス


 Creatio of  pacem orbis




 広希の渾身の術式が敵の集団に命中する。




 その混乱した敵軍に味方達が突っ込んでいく。


「行くぞ!!」


「ああ!!」


 カーニャの呼びかけに勇人が反応し2人も突っ込んでいく。




 2人は兵士たちを次々と倒していくが


「ぐはっ」


 勇人が攻撃を受け、体が吹き飛ぶ




 タッ


 勇人を吹き飛ばした相手は彼に追い打ちをかけようとするが




「させるか!!」


 カン!!




 カーニャがそれをフォローする。


「そのヌンチャク、魔力がある。騎士だなお前、だったら私が相手だ!!」




 カン!!カン!!


 2人は兵器で接近戦を戦う。




(もらった!!)




 シュッシュッシュッ


 彼のヌンチャクがカーニャの剣にまきつく




「しまった」


 思わず声が出るカーニャ。




 彼はそのスキに接近し殴りかかる。




「なんてな」


 笑みを見せながらそう小声でささやくと




 スッ


 彼の攻撃をかわし……




 ドン


 カウンターパンチを目いいっぱいくらわす。




 吹き飛ぶ敵の体。




 シュウゥゥゥ




 カーニャの剣からヌンチャクが消える、魔力が尽きたのだろう




 そして剣を手に取り戦闘を再開していった。




 一方そのころ、イレーナと海輝は魔獣アルゴンが召喚された場所にいた。


 ヴァァァァァァァァァァ




 アルゴンの叫び声がこの場を支配している。




 タッ


 そこにイレーナと海輝が立ち向かっていく。




 今回はただ倒せばいいだけじゃない。




「出来れば、術者を捕まえておきたいですね……」




(普通あれだけの魔獣を召喚してそれを全滅されたら身体へのダメージでしばらく動けないはずなんですけどね、それとも別の術者か……)




 ここで耳を澄ますイレーナ


(聞こえるはず、角笛の音が)




 そして


「こっちだ!!」




 イレーナは足に魔力を集中させ、東の方向へジャンプする。


 そしてイレーナは海輝と別れて行った。




(もう1つ出来るようにしておきたいことがある)




 ヴァァァァァァァァァァ




 ドォォォォォォォォン


 アルゴンは口から光線を発射する。




 天海の海壁、全ての攻撃を吸収せよ!!


 インブェディア・オブ・ウォール!!




 海輝はプロトスペル(汎用呪文)を唱え始める。




 シュウゥゥゥゥゥゥゥゥ


 光線が彼の術式に吸収されていく。




 タッ


 そのスキに彼が魔獣に近づいていく




 彼は考えていた、この戦いは今までとは違う


(倒れるわけにはいかない、誰も俺を助けてくれないからな……)




(だからこそあれを試す時なんだが……)


 そう、イレーナが召喚師を追っていった今頼れる者はいない




 ヴァァァァァァァァァァ


 魔獣が真っ黒な腕を振り上げ、海輝に向かって拳を叩きつける。




 ドォォォォォォン


 大きな地響きを鳴らし拳が地面に直撃する。




 タッ


 左に身を投げて攻撃をかわす。




 ヴァァァァァァァァァァ


 さらに別の魔獣が光線を吐きだす。




(いくぞ!!)




 大いなる創星の力、ここに示し大いなる世界の王の力・解き放て


 ヘルヴィム・シューティングブライト・創天のスターリウス




 彼は術式を放つ、しかしいつもと決定的に違うものがあった




「よし、制御出来てる」


 彼は自分の術式に対して使用する魔力を制御していた。

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