俺の望む未来

翌日になっても戦いは続いていた。




セレファイスの郊外。




ぐわっ


吹き飛ぶ遠藤の体。




「もらった!!」


敵がそれに追い打ちをかけようとすると




ドン!!


右からの攻撃。




「大丈夫か?」


カーニャの援護だった。




「ありがとう」


顔を真っ赤にし立ち上がる勇人。


「しかし敵が多すぎる。このままではこっちの体力が持たんぞ……」


疲れを見せながらカーニャが思わず口にする。




確かに、この町の兵力と一つの国の兵力では兵力が違いすぎた、一時的には善戦してもやがては数の力に押されてしまう。




「俺には考えがある、2人とも、来てくれないか?」




その声に2人は振り向く。




「景、広希」


遠藤がそうつぶやく。


振り向くとその2人がそこにいた。






敵司令官 ゼークト 




長髪で髭の長い騎士の格好をした男性だった。


「これが俺の望む未来だったのか?」


彼はそう考えながらこの戦いに挑んでいた。




本当に共和国のやっていることが正しいのか、噂では兵士たちの素行が悪いとも聞いていた……


政治は汚職にまみれ、秘密警察が国中にのさばる、国民がどんなに不幸な目にあっても誰も助けようとしない、どうすればいいのか……




「そんなお前に朗報だ!!」


その時、背後から声が聞こえる。昔聞いたことある声




「貴様は広希・森垣」


以前とは性格も雰囲気も全く違う。でもその声は変わっていなかった。




「俺達の味方になれ!!」


彼はそう告げる。そして






戦いが終わった次の日、エルフやその味方の兵士の重役たちの中で会議が行われた。




広希が提案する、彼が寝返ってくれたことで兵力的には充実してきた、北部にあると噂される収容所まで進軍するべきだと




「一刻も早く開放するべきだと思う、俺が先頭に立って戦う…」




昨日、敵の指揮官の一人ゼークトが寝返ってくれた。彼は昔広希との知り合いで、彼のことはよく知っていた。祖国への忠誠心も正義感もある。


 だからそこに訴えればうまくいけばこっちの味方になってくれるんじゃないかと…


そして倒れている敵の兵士から軍服を奪い変装、1時間ほど粘り強く交渉した結果こっちに寝返ることとなった。


 どんな結果になっても彼らをエルフ達が保護するという約束で




会議か終わった広希をイレーナ、景、海輝が出迎える。


「決まった、攻勢に転じるってな」




これだ会議で決まったことだ。


スッ


広希は会議の内容を書いた紙を見せる、以下のように記してあった。




まずは私たちだけでマルヌ湿地まで攻勢をかける、そのあたりに収容所があるとされまずそこを開放する。


エマナ達の軍は3週間ほどで到着する見込みらしい、それまでは俺達で何としても持ちこたえる。


 収容所を解放したらこのことを世界中に知らせて挙兵を呼び掛ける。




簡単に言うとこんなところだ、あと二日ほどで出発だ。






そして二日後、一行はブラウ平野に向かって進軍、さらに3日かけてブラウ平野に到達した。




「ふぅ……ついたか」


3日間の行軍で疲れの表情を見せていた


海輝が思わず声に出す。




「なんだよ、疲れたのかよ、弱っちいいなぁ」


少しはやし立てるように遠藤が言葉を返す。




この5日間気が合うのかよく会話し、2人はどこか仲良くなった、そこへ




「お前だって途中疲れたーとか言って文句言ってただろー」


ドン


そう言って遠藤の右肩に軽く自分の体を当てる。


「カカカカカーニャ」


その行動に思わず言葉を噛みながらしゃべる。


彼女にとっては何でもないスキンシップのつもりであったが、遠藤にとってはそれだけでまともに思考も出来なくらる程の刺激だった。




「そんなことじゃアレスちゃんに嫌われちゃうぞ!!」


腰に手を当てながらカーニャは元気づけようとする。


しかもなぜかカーニャ自身は彼がアレスを好きだと思っているから達が悪い。




息を抜いたように彼らは楽しそうに会話を始める




3人が楽しそうに会話をしているその時…




「魔獣が出たぞーーーー」


味方の伝令係が声を荒げる。




この場の空気が変わる。


「来たみたいだな、行こう!!」


カーニャが声を発した後、3人は戦場へ向かった。




ドォォォォォォォン


ドォォォォォォォォン




戦場では、敵の術者が放つ遠距離攻撃とショゴスの砲撃で味方に甚大な被害が出ていた。




特に被害が大きかったのは最前線にいた古参のエルフ達のグループ。


人間達を憎んでいるが故、最前線で人間たちを倒そうとしていたうえ、言うことも聞かず前線でも孤立気味だったため、大きな被害が出ていた。




「いいのかよ、俺達が行ったって文句を言われるだけだぜ」


遠藤が忠告する、彼らを知っているからわかる




「それでも行く、景、カーニャ、勇人、協力してくれ……」


広希の掛け声の下、4人は最前線へ向かう。






最前線


壊滅状態だった、突然の奇襲にただやられるだけ


「いたたたたたた」


「助けてくれぇ…」




兵士たちの悲痛な声がこの場を占めていた。


ドドドドドドド




前方から音がする、何かがやってくる音…


「何だ?」




兵士の一人が前方を見る。


ドドドドドドドド




「うわぁぁぁぁぁぁ」


そこには敵軍の兵士たちの大軍。




壊滅した彼らに追い打ちをかけるように攻めてくる。




「終わりだああああああ人間達のせいだあああ」


兵士たちが叫び声を上げた次の瞬間…




悠久なる輝きの力、今解き放ち世界の闇を貫く閃光となれ!!


クレアティオ・オブ・パーセム・オルビス




ドォォォォォォン




後方からの術式、それが敵に命中し爆発音を荒げる。


「大丈夫ですか?怪我があるなら下がってください、」




カーニャが声を上げる、続いて景、広希、遠藤がやってくる。


「ふざけるな、俺は人間たちの世話になんてならねぇ」




「そうだそうだ、お前らなんか信用出来ねぇ」


負傷したエルフ達が叫ぶ、人間達に罵声を…




「まて、彼らは敵じゃない、収容所にはエルフだっている、彼らだって解放しなきゃいけないんだ、目的は同じなんだ、なのに敵対してどうする!!」




カーニャが説得する。


それに広希が言葉を返す。


「まて、彼らのそぶりを見ればわかる、そんな簡単に信じてはくれないと、きっと何かあったんだ、それくらい人間達に虐げられてきたようなことが」




「じゃあ、どうすればいいんだ?」


カーニャがうつむきながら聞き返す、彼女だってこんな味方同士で争いたくない、でもわからなかった。




「だったら、簡単だよな景……」


景に話をふる広希。




「彼らにわかってもらえるまで行動するしかないよ…」


景が笑みを見せながら答える。

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