弾薬か薬か

 おびえたように反応するエルフ。


「申し訳ありません、そう長くは……」




「大丈夫、すぐ終わるから」


 手を振り、笑いの表情を見せながら言葉を返す。




 そして彼の聞き込み調査が始まった。




 タッ


 その間にも、手負いの兵士たちが5人ほど帰還してきた。


 3人が負傷した兵士の手当てを始める。




 30分ほどで手当ては終わった、3人は広希にエルフと何を会話したか聞いてみた。




「一応ノートにはまとめておいた、こんな感じだ」




「どれどれ」


 景が言葉を発すると3人はノートを見る。




 エルフ達の居住区にも共和国の兵士が駐屯していてもし俺達と接触すれば彼らの暴力に会う事。


 彼らに反逆すれば彼らは術式が使えないエルフに暴行を加えていた。


 話を聞くと俺達をストレスのはけ口としてしか考えていないらしい。




 彼らの中には絶対的な階級があり、俺達人類はすべての階級の上に立つものだと思い込んでいる。


 そのため威圧的な兵士が多い、抵抗しようとすると河上から毒を流したり、一般人を


 リンチしたりする。


 駐屯所が北の山のふもとにある。






 時々北のほうから兵士が脱走してきたり、いろんな種族の生き物や人間達が私たちの所に避難してくる。


 強制収容所があるといわれている。




 脱走した人たちと現地人で食料や薬の奪い合いが起きていること




「収容所」


 海輝が思わずそう発する




「とりあえず、エルフの人からもう少し話が聞きたいですね」


 イレーナもこれからを考え始める。




「まあ、もう少し待って兵士たちがどれだけのっているか見たほうがいいですね……」


 結局全員魔力を消耗していることもありイレーナの提案通りここで今夜は待機することになったのだが




 翌朝


「たった13人だと」


 広希がそう発する。


 あの後もエマナが帰還してぽつぽつ兵士たちが帰還したのだがエマナも含めて結局8人しか帰ってこなかった。




 つまり戦える数は13人しかいないことになる。


「おいエマナ」


 広希が話しかける。


「ん?」




「お前は本国に帰還しろ、本国に帰還してもう1度軍を再編成してもう1回来てくれ」


 突然の帰還要請。




 その言葉に慌てるエマナ


「そんな、僕だってまだ戦いたい」


 そう考える彼を説得する広希。




「お前はもし捕まったら処刑される、お前はあの国を引っ張らなきゃいけない存在だ…ここでいなくなるわけにはいかない、それにもし体制を立て直せて攻勢に転じた時にはどうしても大軍が必要になる、俺達は必ずこの劣勢を立て直す、だからお前は一度帰還してくれ、頼む!!」




 彼を見つめながら説得する、そして




「わかった、広希、信じてるからね」


 説得に応じ、本国への帰還を始める。




「じゃあね」


 そう言い残して彼はこの場所を後にしていった。


(これで残り12人)




「まずは、エルフの人たちと手を組むことだな、そのためにも駐屯している兵士たちをなんとかしないとな」


 次の手を考え始める広希。


「うん、ここにいたままじゃ水も食料も尽きちゃうしね」


 景も同調する。




「だから、早速行動に移す、作戦を話す」




 そう言って他の兵士と3人を集める。




 深夜


 山のふもと、山中の森林地帯から一転草原が広がる場所に身を移した海輝達。


(確かこの辺り……あった!!)




 広希の視線の先、そこには敵兵の駐屯所らしきものがあった。




「じゃあ、打ち合わせ通りに行こう」


 広希の言葉通り、全員配置につく。




 5分後


「じゃあ、いくから」


 駐屯所を見降ろす山の上


 海輝が1人で声を出す、そして




 大いなる創星の力、ここに示し大いなる世界の王の力・解き放て


 ヘルヴィム・シューティングブライト・創天のスターリウス




 ドォォォォォン!!




 彼の渾身の1撃が駐屯所に炸裂する。




「よし、行くぞ!!」


 そして彼の術式が放たれた駐屯所に広希達10人が突入。




 いきなりの奇襲に慌てて対応する敵兵士。




 ドン!!ドン!!




 それを広希達が次々となぎ倒していく。




 他の兵士たちもそれの乗じて乗り込んでいく。




「一気に片付けるぞ、イレーナ」


 広希がイレーナに声をかける。




「はい!!」


 力強くイレーナが返事をする。




(ここで一気に決める!!)


 応身なる姿、神々に轟かせる力示し、今ここに解脱せよ


 衆生のスフィア・バハムート




(いっけぇぇぇぇ)


 時空を超える力、今敵をせん滅する力となり、その閃光貫け


 ヘリオポーズ・イクシオン・ブラスター




 ドォォォォォォン!!


 2人が渾身の一撃を放つ。




 その衝撃で駐屯所の半分が崩壊するほどに。




 そして彼らがここを制圧するのに10分とかからなかった。




「これで制圧したね」


 景が敵がもう逃げ出したことを確認する。




 最初に術式を放ち、動けなくなった海輝を兵士の一人がこっちに運んできた。


「成功したみたいだね」


 海輝がこの駐屯所を見て思わず囁く。




「広君、ちょっといい?」


 詮索をしていたイレーナが向かってくる、両手いっぱいに手土産を持って来ながら。




「うっしょ」


 両手いっぱいの荷物をおろしながら嬉しげな表情を見せる。


「薬、一杯あるみたいよ、怪我用の傷薬や風邪用の薬、何でもあるみたい……戦いが長引くなら必須だしエルフの村だって薬が不足していたっていうじゃない、どう?」




「ありがとう、でもそんないっぱいの荷物を持って山を下るなんて」


 彼は礼を言うと同時にどう運搬するか悩みはじめる。




「いや、手段はある」


 元々俺達は1人1人に持つを運んでいた、弾薬を運ぶ奴に弾薬を下させてこの薬を運搬させればちょうど運べる量だ。


 そうすればいい、しかしそうすれば彼らは銃を使えなくなり、敵に対して俺達しか戦えなくなる。




 弾薬か薬か…


 彼はしばし考える、そして昔教わった言葉を思い出す




(バカ野郎!!力だけでみんながついてくると思ったら大間違いだ!!みんなをお前に尽くさせるんじゃない、お前が助けを欲している奴らのために尽くすんだ!!そのための騎士だ!!)


 彼が思い出す、昔旧元帥から教わったこと、あの時はわからなかった、けど……


「なんとなくわかってきた、みんなと行動して」




(そうだったな、最近戦いが多くていかに戦いに勝つかしか考えてなかった、困っている人たちを助けるってこと、忘れていたな)


「訂正する、弾薬や武器は後で取りに行けばいいから山に隠そう」




 ニッ


 広希はほほ笑みだし


「まずは薬を運ぶ!!全員俺の指示に従ってくれ!!」




「はい!!」


 イレーナが笑顔になり、弾薬を運んでいた兵士たちも荷物を下ろし、薬を手にする。




 そして弾薬を山の中に隠して一同は山を下りエルフの村へ移動した。

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