共和国アイアースへ

 夜


 ユトランド郊外の森林の中




 逃げ出したシュライヒャーは国外への逃亡を行っていた。




(くそっ、あいつがこれほどに実力者とは…)


「しかたない、一回体勢を立て直す、まずは国外の私の支持者の所へ行って…」


 彼がそうつぶやいたその時。








「お前にその時はやってこない!!」






 前方から彼のつぶやきに言い返す。




「まさか、その声は?」


 彼は知っている、この声の主を


「マンネルへイム」




 彼は安堵の表情でせがみだす。


「お前か、よかった広希を葬ってくれ、彼は私に立てついた、七恒星の私に、同じ七恒星だよな?仲間だよな?」




「フッ……」


 ため息をつくマンネルへイム、あきれた表情をしながら




 スッ




 彼はポケットから取り出す、先日もとある人物の腕を見るために使ったあの道具。




「何だ、その銀色の物は…」


 驚いた表情を見せるシュライヒャー、それに彼が言い返す。




「とある国で裁縫に使う道具だよ、だが今は役割は違う。お前を裁くための道具だ!!」




 そしてその針を構える。


 真意を理解したシュライヒャーが慌てだす。


「どういうことだ?」




 その言葉に彼は淡々とした表情で言葉を返す


「その通りだ、お前はもう用済み……席を空ける番だ、貴様はかまけすぎた、七恒星という地位を与えたにもかかわらず祖国に引きこもってばかり、されにそれさえも自分の名誉のために祖国を我が物顔で私物化、この資格はお前の権力を見せつけるためのおもちゃじゃない、よって俺自らお前の地位をはく奪させてもらう…」




 そして彼は戦闘態勢に入る。




 シュライヒャーが慌てた顔で反論する


「きさま、そんなちっこい物で私と戦うだと?なめるな、私だって七恒星の一人なんだぞ」


 そう言葉にた後デバイスを召喚する。




 そして両者戦闘態勢に入り




 タッ


 たがいに接近し戦闘に入るが




 1分後…




 ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ




 勝負は一瞬だった…




「この程度かよ、虫以下だな……」




 そこには余裕の表情を見せるマンネルへイムが倒れているシュライヒャーをただ見ている姿があった。




 そして彼は最後に伝える。


「今回の件について我ら同盟クラスタは貴様の七恒星の資格のはく奪を決定した、もうお前は七恒星の地位を利用して好き放題することは出来ない、ではさらばだ!!」




 そう言い残し、彼は立ち去った








 9月 中旬 




 授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。


「ちょっと、起きなさいよ」


 春果が俺の体を起こす。


「んあ、ありがと……」




 眠たい目をこすりながら彼女に礼を伝える。


「ねぇ」


 彼女が俺の目を見る。




「ん?」


 彼女はおせっかいなところがあり、珍しいことではない、しかし思わずドキッとする。


 異性との会話なんて今までほとんどなかったのだから




「授業中ほとんど寝てたじゃない、それにどこかやつれてるわよ……どうしたの?いってみなさいよ!」




「うっ」


 とても心配しているような顔、まるで母親のように俺の心配をしている。


 ま、彼女はいつもこうなんだが




 この前の旅で俺は自分の非力さを痛感した、そしてまたトレーニングを広希に頼んだ、早くみんなに追い付きたくって




「ほう……何でもするって言ったな?」




 彼の言葉。


 そして広希や景と一緒にトレーニング。




 ひたすら走り、鍛える。


 ダッシュとストップの繰り返し


 つらいなんてもんじゃない、運動経験のない俺には地獄の日々だった。


 毎日毎日筋肉痛で体中が痛い……




「確か広君のサークルに入ったんだったわね~~夏休みはそれに打ち込んでたみたいだったわね…登山サークルという名の異世界探検にね……」




 そう言う事になっている登山なら長期間離脱する理由としてもわかりやすいし、万が一


 こっちに帰る時が大幅に遅れても遭難していたって理由も作れるかららしい


 また万が一怪我をしたらヒグマに襲われたと説明するらしい




 そう言う事になって欲しくないが……


 一応ユトランド公国に着く直前お盆という事で二日ほど返してもらってはいるが




 ぎゅっ


 彼女は腕を組み始め、ほほ笑みながらしゃべり出す。


「ま、いままで打ち込む者がなかったあんたにそれが出来ただけでもよかったわ、頑張ってね、じゃあね」




 そう言葉をかけるとアルバイトのため、教室を出て行った。




(でも、なんで私こんなしゃべれるようになったんだろう?)


 何かが欠けているような、そんな違和感をどこかで感じながら






 次の日、海輝達はまたあっちの世界へと旅立った。




 そしてエマナとともに連邦国家ウェルダンの中にある共和国アイアースの攻略作戦の説明を指揮官クラスや広希達4人に説明していた。




 そして説明が終わる。


 船に乗り、目的地に到着する。




「とりあえずまとめておいた」


 広希のまとめ。


「ちょっと、それ見せてくれる?」


 海輝がそれを見る。




 連邦国家ウェルダン、北部同盟の盟主である国家であり七つの共和国で構成されている。


 七つの共和国には七黒矮星と呼ばれる騎士が1人ずつ統治している。




 ウェルダンは秘密国家で中の情報がなかなか外に伝わってこない、しかし難民がこちら側に亡命してきている。


 彼らに聞いた話によると秘密警察シュターゼによる密告社会となっている。


 そして反逆者とされたものは強制収容所送りや極寒の地での強制労働が待っているとの情報が入っている。


 まずはこのユトランド公国から海を隔てて隣り合わせの共和国アイアースを攻略する。




 船を使いホメロス山へまず侵入する。


 長いこと潜伏する可能性も考え、大量の荷物、大輝も弾薬を運ばされる。


 そのあたりにはエルフが住んでいて彼らは連邦から不当な扱いを受けている。


 彼らの付近の兵士を撃破してそこを拠点とする。




 ホメロス山と海岸が接近している場所、周囲に人気はなくこれなら敵軍にも気づかれなさそうだ。




 そして山に登り、中腹部に拠点を作る。


 こちら側の数は300人ほど。




 そして夜を迎える




「ここまでは順調だね……」


 景のぼやくような声




 次の瞬間




 ドォォォォォォォン!!




 どこからか突然の砲撃。


 そして




「戦闘だ!!敵が攻めてきたぞ!!」


 その叫び声とともに、敵軍との乱戦が始める。

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