きっと見つかると思う、あなたの夢
(終わりだ、これでとどめだ!!)
「動揺してどうすんのよ!!」
叫び声が聞こえる。
聞きなれた声、イレーナの叫ぶ声
「あんた、確かにトラウマになってるのは私もわかってる、でもみてきたでしょう、苦しんでいる人たちを放っておくの?違うでしょう!!ずっと一緒にいた私だからわかる!!」
「目標だったら、私といや、景や海君だっている、一緒に見つけよう……だから、あんな言葉に惑わされないで!!」
魔境たる地を制圧せん力
今解き放ち全てを吹き飛ばせ!!
ストリングス・ストーム・エメラルド・ダイダル
シュライヒャーがとどめの1撃を解き放つ
ドォォォォォン
再び大きな爆発音。
そして煙が晴れていく
ここにいる全員が煙の先へ視線を集中させる。
その先には
「すまんな、イレーナ」
その声とともにほほ笑んだ広希の姿があった。
「広君……」
思わずイレーナの眼から涙がこぼれる
(あいつのおかげだ、少し目覚めた)
さっきシュライヒャーがとどめを刺そうとしていた時……
彼はイレーナの言葉を聞いて思い出す。
彼女は俺がエマナに雇われた時から隣にいてくれた、最初はエマナに紹介してもらいパーティを組んでいただけ、でも落ち込んでいて無力感に包まれていた俺のことをよく見ていてくれて、気にかけていてくれた。
「確かに俺は恐れていた、また俺のせいで傷つく人が出るんじゃないかって……」
「でも彼女とともに行動して、教えてくれた」
「広君、あんまり器用じゃないね、でもいつも考えてる……どうすればみんなが幸せになれるか、みんなが助かるか……そのためには絶対投げ出さないし、自分が傷つくことも全然いとわない、そんな広君だったら私、付いていってもいい、きっと見つかると思う……あなたの夢、その姿勢で戦い続けていったら」
彼女の言葉を思い出した広希、その時にはもう迷いは無くなっていた。
天海の海壁、全ての攻撃を吸収せよ!!
インブェディア・オブ・ウォール
そして彼の攻撃を完全に受け切っていた。
スッ
彼が広希に再び接近する
カン!カン!
再び接近戦。
闘いながら2人は話しだす
「お前、知らないはずはないだろお前の自分勝手のためにどれだけに人達が傷ついているのか」
広希は思い出す、この国に入ってからのことを
「知るか、文明の発展に犠牲はつきものだ、下民どもは私を敬愛している、だったら喜んで犠牲になるべきだ、未来への栄光のためには必要なのだ」
彼は何のためらいもなく言い返す。
まるで彼らは自分の栄光のためのコマであるかのように
「今の言葉で、わずかばかりのお前への同情も消えうせたぜ……」
そして表情を変える広希。
「そう思うんだったら、来い!!私を止めてみたいのなら……お前の全身全力を持って超えて見せろ!!」
そう叫ぶシュライヒャー。
「ああ、止めてやる!!俺の全力を使って!!」
そして何か悟った様な二人は自分の持つ最強の術式を詠唱し始める。
機根されし力解放し、世界の道筋を切り開く力、限界を超え突き抜けろ!!
エアレイド・オブ・ライトニングブラスト
混沌なる世界統一する力、幾多の屍の上踏み越え、解き放て
ディザスター・ストーム・サファイア・クレイドル
ドォォォン!!
かつてない轟音がこの場所に鳴り響く。
爆発による煙がこの部屋を包みこむ。
煙が晴れていく……
(どうなったの?)
心配する幸乃。
そこには
「ふぅ」
倒れこむシュライヒャーの姿と座り込む広希の姿が
「ま、負けるわけないよね……」
そう言いながら安堵の表情で歩いて彼に近づく。
「広くーーん」
そう叫ぶナがら景が、その後にイレーナと海輝が近づく。
「あーー疲れた……」
座り込んだまま彼はしゃべり出す。
(くっそ、だがこのままでは……)
倒れたシュライヒャー、何とか起き上がり
ドォォォォォン
残る力を振り絞って周囲を攻撃、周りの機械を破壊し始める。
「ここには従業員も残されている、どうするかね?」
(自分の全力を出し切ることも出来ないのね、二流ね……)
幸乃が半分あきれる。
タッ
そう言って逃亡し出す。
「仕方ない、奴はもういいわ、周りの救助を優先して!!」
幸乃が周りの救助を優先を指示する。
「ま、どうせ奴はここにはいられまい」
そして景や幸乃が周りの救助を行い、犠牲者をださずにこの事件を終えた。
夜
海輝達はエマナ達と合流していた。
「大活躍したんだって~さすが広君だね~」
エーディンがはやし立てるようにしゃべり出す。
「おめでとうございます……」
それに同調するサラ。
「そっちはどうだった?」
広希がエマナに問いかける。
ニコッ
そう彼がほほ笑みだすと
「何とか成功したよ……」
そう言い放ち、説明する。
「この国の中でいま最も権力を握っているのがスターラヤ派の政治家達でね、その人たちと会話して今後は僕たちが支援していく形で少しずつこの国を取り込んでいくさ」
安堵の表情を見せる広希。
「そうか」
「じゃあ、後始末は僕がやっていくから僕はこれから官庁に行ってくる……」
「じゃあね~」
エマナとエーディンの声。
そう言って3人はこの場を立ち去った。
1人になった広希、背後に向けてしゃべり出す、表情一つ変えずに
「もういいよ、幸乃、出てこい……」
そう叫んだ矢先
スッ
「ま、気付いて当然よね……」
そう言って彼の目の前に現れる。
「海輝、君あんたもばれてるのよ!!」
広希に向かって叫び始める。
「ま、出てこいや」
広希が振り向いてしゃべり始める。
スッ
「なんでわかった?」
そう言いながら大輝は出てくる。
「ここに来た時につけてくる音がした、尾行するにも技術はいるんだぞ、次は景に教わってからやってみろ!!」
広希がそう返答する。
「んで、あなたはこれからどうするの?」
そう問いかける幸乃、それに彼が答える。
「時間軸を計算するとあっちはもう新学期だ、あっちにいったん戻る。連休に少しだけ戻って動向を探りながらとりあえずあいつについてく、どうなるかはあいつ次第だ……」
「ふーん、それで?」
首をかしげながらさらに問う幸乃。
「んで、いつまで4人で行動してるの?そんなことしていつ芽が出るの?夢なんかかなうの?」
「ッて言うか、あんたに目標ってあるの?
いつまでも過去の後悔にしがみついているあなたにね……」
(もっと彼に分かるように言わないといけないのね)
そう確信した幸乃、じっと睨んだ表情でさらに踏み込んで彼に質問する
「それでほかの仲間はどうかしら?あなたのそのどっちつかずなせいで夢を持ってる他の人まで不幸にしてしまったら、そう考えたことある?」
ピクッ
海輝が反応する。
「何が言いたい?」
すぐに反論する広希。
2人の反応を見た幸乃、うすら笑いを醸し出しながら質問に答える。
「どうやらそこのおまけには心当たりがあるようね……」
「まあいいわ、無理強いしてもしょうがないからね、これあっちの世界の私の携帯番号、渡しておくね」
スッ
その紙を渡す幸乃。
「私はここまでにしておくわ、じゃあね……」
そう言い残し彼女はこの場を後にする。
海輝は思い出していた、本来の目的、望美、彼女を取り戻すこと
それを見て広希が一言
「すまない、心配かけたな、手掛かりはあるんだ……」
なんとかフォローする広希。
「だから、一回戻ろう、あっちではもう新学期だ、次は9月のシルバーウィークだ……」
あっちとこっちでは1日の進み方が違う、それを計算するともうあっちの世界では新学期だった。
「─わかった」
彼は何かを言いたかったように返事をした。
分かっていた、今の俺にかけられる言葉なんてない、俺には目的はあってもそれをかなえる力はない、彼に頼るしかない、そんな自分が慰めても気休めにしかならない……
そんな思いが脳の中を支配していた。
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