ベルブ山へ

 3日後の深夜、日付が回ったころ6人はベルブ山火口にいた。


 2000メートル級の山で高い標高のため、森林はなく、周りには荒野が広がっていた




 景と海輝が付近を詮索し、職員が出入りしている場所を突き止めた。




「良くやってくれたな」


 広希が海輝を励ます。




「あ、ありがと……」


 彼はそれにどこか照れくさく言葉を返す。




 バン!!


「うおっ」


 誰かが海輝の背中をたたく。


「んもう……謙遜する必要なんてないのよ!!俺のおかげだ!くらい言ってもいいのよ!!」


 その態度に幸乃が海輝に忠告する。




「そ、そんな、大したことしていないのに」


 その言葉に圧倒されながら小さな声で何とか言い返す。




「ちょっと、あんまり大声出さないで、君もよくやったよ、作戦に移行しよう」


 景が話題を変え、作戦に目を向けさせる。




「そうだな、じゃあ俺とイレーナは一回街に戻って呼んでくる……お前たちもよろしく」




「わかった、じゃあいくよー海輝、あの場所案内してね」


 景が海輝にそう告げると彼が驚く表情を見せる。




「え?何で俺が?」




「え~たまにはエスコートしてよー、それにいつまでもわき役のままじゃね?」


 どこかふざけた言い方で彼に場所を案内させようとする。




「─わかったよ、案内するから、ついてきてよ」


 どこか納得いかない表情で案内し始める。




(広君からも言われてるんだよ、彼には表舞台に立っていることを自覚させるようにこう言う事を任せろって……)


 全ては彼の考えだった。




 そして5分ほど歩く。


「ここ、下水道だ、ここから侵入する」




 彼が立ち止まる。


 裏には下水道の道があり、ここから侵入しようと思うのだった。




「そういうことね、わかったわ……」


 トーンを低くして幸乃がそう言葉を発すると4人は侵入を開始する。




 そして3分ほど進むと、広い部屋のような場所に到着する。


 そして辺りを見回す




(ここから先は偵察で入っていない、どうすれば……)




「恐らくあれだ」


 モルトケが下水道の反対側を指差す。


 そこには入口がある。そして目の前には橋がある。




「何でわかったの?」




「端まで付いて広い場所、そして小さな入口


 大方あそこからそのまま流すと下水が詰まるようなものを捨てに来ているんだろ」




「さっすが、あんた優秀ね!!」


 幸乃は笑顔でほめたたえる。




 そして4人は橋を渡り階段を上り切ったその時




 キィィィィィ




 上のドアが開く。そして2人の職員。




(しまった!!)


 目が合う。まさかの事態に海輝は言葉を失う。




 スッ


 そこですかさず幸乃とモルトケが二人に接近し




 ドゴォ!!




 渾身のパンチを2人の腹にくらわす。




 バタッ


 倒れる2人。




「す、すごい」


 とっさの判断力に言葉かでない海輝。




「このくらい想定してるわよ、深夜とはいえ人が通る場所なんだから」


 気絶した2人の服を脱がしながら何事もなかったように耐える。




 スッ


 そしてその作業服を景と海輝に投げつけ……


「ほらっ、ちゃんと先導してね!!」




(お、俺が?)


 そう思って景のほうを向くと……




「大丈夫、何かあったら私が指示するから」


 その言葉を信じ海輝が先導役になる。




 そして4人は中に潜入する。




 進む道の部屋のドアを空けながら5分ほど進む。




 そして次の部屋のドアを開けると




「ここは……資料室?」


 周りは薄暗く、本棚が大量に置いてある。




「こうしましょう、私とモルトケがここに隠れながらここにどんな本があるか証拠を押さえるわ、例の時間まで、あなたたちは引き続き詮索を続けていて」


 幸乃が提案する。




「そうだね、見つかって下手に騒がれたらまずいし」


 景もそれに賛同する。




 そして4人は二手に分かれ行動を再開する。




 海輝と景が建物内を進み始める。




 行動中


「ちょっといい?」


 海輝が景に話しかける。




「こういうときってドキドキしないの?いつ敵に出くわすかも分んないし」


 彼はすごく緊張していた。作業着を着ているとはいえいつ敵に出くわすかもしれない、ましてや敵に捕まった後ならなおさらだった。




「するよー」


 平然とした態度で答える。




「その割には平然と答えているような……」




「だって何が起こるかなんて予想できないもん、この仕事だけじゃないよ、世の中何だってそうだよ」


 淡々とした表情で彼女は答えていく。




「だからいつ何があっていいように準備していくことが大事なんじゃないかな」


「そっか……」


 彼女の言葉にどこか納得する海輝。




 さらに5分ほど歩くと──




 進んでいた先に明かりのある部屋がある。


 2人はそっちへ進む。




 スッ




(ここが、メインルーム?)


 広い部屋に出る。




 景が辺りを見渡す。


(なに?あの大きな機械は)


 中央には大きな機械。


(ちょっと聞いてみよっと……)


 景が周りの研究員に聞いてみる、すると






「ああ、これは例の薬の成分を圧縮させる装置だよ。今まで人の手でやってきたんだけどこれが動いてから今までの10倍多く生産できるようになってね」




(なるほどね……)


 そう話を聞きながら辺りを見回す。




(こことここをこうすれば)


 彼女が作戦開始後の策を考えていると




 ひそひそ


 周りがざわつき始める




 そして入口に兵士がやってきて叫び始める。


「侵入者です、研究員たちは直ちに避難してください!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る