指揮官の所へ
「あ、はい」
即答で返事をするイレーナ。
一端戦場を抜け、指揮官の所へ移動する2人。
5分ほど後方に歩くと、指揮を取るこっちの陣地にたどり着く。
「あれが指揮官か、なるほど」
2人の視線の先にあるもの、それはただ何もせず椅子に座っているだけの白髪の老人の指揮官。
「ちょっと話をしてくる、来てくれ……」
指揮官しかいないちょうどいいタイミング、そのチャンスを逃したくない彼はすぐに指揮官の所へ向かう。
「あ、はい」
それに乗じてイレーナも向かう。
そして彼は指揮官ととある交渉を始める…
「なに、一回戦場を見てほしいと?」
指揮官が質問を返す。
「はい、そうです」
広希が言葉を返す。
「1度、自分自身で見てほしいのです、自分自身が指揮をしている戦場を…」
彼の要求に指揮官は答える。
「しかし、わしももう年じゃし、戦力になんかなれんよ」
老いた自分に出来ることはない、視線を下に傾けながらそう答える指揮官。
「それでもかまいません!!」
間髪を空けずに広希が答える。
「え?」
突然の強い声の返答に驚く指揮官。
「あなたに自らの戦場を見ていただくことが重要なのです」
指揮官の目を強く見つめながら答える。
「……」
それに圧倒され、指揮官は彼に連れられて現場へ行くことになる。
そこで広希は見せた、ありのままの戦場を
例の液体を手に入れて強さを得た兵士たちは、我が物顔で戦場を暴れまわっていた。
魔力を失って助けをせがむ市民に必要以上に暴力をふるう兵士。
民家に無断で侵入し、金目の物を略奪していく兵士の姿。
逃げまどう民間人にも平気で殴りかかっていく者もいた。
「これが、わしの戦場」
自分の経験した戦場とかけ離れた現実に絶句する指揮官。
「これを、あなたに見てほしかった」
そこに語りかけるように話しかける広希。
「これでも、あなたは今の指揮官という職に誇りを持てますか?」
彼に感情に問いかける。
(やはり、思った通りだ)
広希は確信していた。
戦場で聞き込みをしていた時に聞いていた、指揮官が全く姿を見せないと。
名前はピャダコフ指揮官、イレーナも知っていてかつては祖国のため、体を張って侵略者から国を守っていた有名な指揮官だったという。
「私知ってます、ユトランドの軍人では有名です」
しかし最近は加齢の影響からか戦地に赴かなくなり、陣地にいることが多くなったという。
「指揮官、そこで頼みごとがあるのですが」
耳打ちをして指揮官に話しかける
夕方、仕事を終えたイレーナと広希。
「じゃあ、最後の仕事だ」
ジウトンが話しかける。
「よう、一回俺と戦って強さを見てみたいってことだよな?」
「あ、はい」
彼の問いに広希が答える。
そして先ほど例の薬を見せてもらったジウトンとイレーナと広希は模擬戦場のある場所へ向かった。
「どういう事だい?」
兵士が疑問を投げかける。
「何でですか?」
それに対して質問で返す広希。
「あの薬が欲しいんじゃないのかい?どうして模擬線なんかしなくちゃいけないんだ?」
そう答えるジウトンに彼は答える。
「私資金に困ってましてね、本当に効果のあるもの以外は購入できないんですよ、まずは効果を見てから、それで次の日に買うかどうかを決めます」
「ったく、しかたねえなぁ……」
めんどくさそうにジウトンが答え、
(まあいい、すぐにわかるさ、俺の実力なら並の騎士には負けないはず…)
スッ
2人は模擬戦場の中央に立つ。
スッ
広希はジウトンに小石を渡す。
「それを軽く上に投げてください、それが地面に落ちたら戦闘開始です」
「わかった」
広希の説明に答えるジウトン。
スッ
彼が小石を上に投げる。
そして
トン
小石が地面に落ちる。
タッ
その瞬間2人が接近する。
カン、カン
2人の剣のつばせり合い。
ジウトンが剣を振りかざし、広希に攻撃を加えていく。
彼は兵士に不自然に圧倒しないように紙一重で攻撃をかわしていく
「良くかわすじゃねえか、思ったよりやるねぇ……」
「だったら……これはどうだ!!」
今までより大きいためを作り、ジウトンは広希に1撃を与えようとする。
彼にとっては渾身の1撃、これなら並の騎士なら仕留められるはずだった…
(やはりな、薬を使っていない時の要領で使っている時も戦っている)
彼の右手から斜め下に向かって剣が放たれる。
スッ
広希は自分から見て左下、彼の右手の下にその身を回避する。
(しまった!!)
ジウトンが慌てる。
彼が放ったその1撃をあっさりとかわしていく。
(動きが隙だらけでバレバレだぜ!!)
そして無防備になる彼の腹。
ズバァァァァァァ
そこに広希が渾身の1撃を加える。
吹き飛ぶ彼の肉体。
ドン
吹き飛んだ彼の体が地面に横たわる。
「お前、やるじゃねぇか、まさか薬を使って負けるとは……完敗だよ」
倒れ込んだジウトンがそう囁く。
スッ
「こちらこそ、お手合わせありがとうございます」
そう言って手を差し伸べる。
広希はジウトンを起こす。
彼が話しかける。
「そう言えばあんた名前は?よく考えたら聞いてなかったな?」
それに広希は答える。
「森垣広希、戦士の一人です、薬はやっぱりいりません、では、さよなら……」
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