最強の戦士
広希達の所へ戻った景、すぐにこのことを伝える。
「なんだって!!」
「本当ですか?」
広希とイレーナがそう叫ぶ。
「……」
しばしの沈黙が流れる。
「わかった、明日俺達が政府に侵入して取り返す」
広希、考えをまとめて宣言する。
「私もそうします、まずは留置所の場所を調べないといけませんね」
それに同調するイレーナ。
「私も協力するよ、私の責任でもあるし」
どこかしょんぼりした表情で言葉を返す。
そして3人で打ち合わせを始める。
「とりあえず、こんなところか」
広希の声。
30分ほどして明日の打ち合わせが終わる。
「ちょっと夜風に当たってくる」
そういって広希はこの部屋を後にする。
中央広場
夜、この世界の衛星のヴォルヴァがよく見える。
「よう」
広希の声、目の前の男に話しかける。
圧倒的な威圧感を感じながら
「受け取ってくれたようだな、俺のラブレター」
その男は笑いながら冗談交じりで彼に言葉を返す。
「エマナから受け取ったよ、お前が俺を呼びつける手紙」
昨日、エマナ達との話し合いの後、俺あてにエマナに手紙を送りつけてきやがった
今日の夜、この中央広場に来いと
広希は圧倒的な威圧感を持つこの男に
マンネルへイム・ステーフェン
「神聖騎士同盟」ディバイン・クラスタ
俺達の世界で言う騎士たちの協会みたいなものだ
その元帥、トップである
彼はたった一つの演説で何万という人々を虜にし、何百という魔獣たちを一瞬にして灰にするという戦士としての実力をもつ。
今世界で1番強い騎士といえば9割の人が彼の名前を口にするだろう……
「こっちはお前の暇つぶしに付き合っている暇はないんだ、用なら手短に言ってくれるか?」
どう考えても貴様を歓迎していない、そう思わせるようにあえてそういう言い方で広希は言い返す。
「七恒星の1人になってくれ、俺と今の腐った世界を変えていくのを……」
七恒星、「神聖騎士同盟」ディバイン・クラスタの中にある戦士としてカリスマ性、実力ともに最高クラスの騎士を集めた総称。
世界3大権力にも数えられ、そこに入ればクラスタの最高会議への発言権と出席権が与えられ、実質的に世界の指針に口を出していくこともできるようになる。
「ともにやらないか」
そしてマンネルへイムは語り出す。
「各世界にある遺跡には戦士の力を強化するデバイスや力が眠っている
これは最近クラスタの者が見つけていて、まだ事実はこっち側しか知らない。
表向きには伏せたまま、列強国たちを私たちが支配し、実質的な世界の王になる。
当然彼らが作った階級も解体していく」
突っ込む広希
「何一つ変わっていないな、支配をするのが国家からクラスタに変わっただけだ。
お前は盲目だったのか、それともその歳で老眼にでもなったのか?」
マンネルへイム、彼の言葉を無視してさらに語り出す。
「今のまま国家に人民を任せていては格差が生まれる、お前の世界がそうだろ、豊富な資源によって富める国家、貧しい国家、圧政を敷く独裁者、逆に寛容すぎて衝突を生む国家
覇権や資源を争う国家によって難民が生まれ、先進国は国民と難民との軋轢に頭を抱える日々……」
「だが打つ手はある、我ら協会は国境を越えた影響力がある、民衆を従えるカリスマ性、強大な軍事力、何でもある!!
我らにしか出来ない、国家を超えた力を持つ私たちにしか!!」
あきれた表情を見せる広希、そもそも戦士として強いことと世界の王になり世界をまとめ上げていくことは全く違う、いくら彼にカリスマ性があるって言ってもそれは戦士の中での話。恐らく世界の王になれば周りが何でも言う事を聞くと思い込んでいるんだ。
周りがイエスマンで固められ何でも自分の主張を通してきたお山の大将が考えそうな奴だ。
こういう奴の末路は大体決まっている。
無茶苦茶な要求ばかり通そうとし、軍部辺りが謀反を起こし統率がとれなくなり内戦。
元の世界でもよくあったことだ
腕を組み始め反論を始める。
「ひどい思い上がりを見せてもらった。老眼か盲目か、それはお前だ、教会で管理って言っても実質は七恒星のトップのお前がトップになるだけ、結局は力の強弱で世界が決まるだけ、むしろひどくなるだろうな、世界がお前の独裁国家となりそいつを止める手段がいなくなるのだからな、貴様は起きているのに夢を見れるのか……」
まさに取り付く暇もない表情、思い上がりも肌は出しい彼に広希はあえて突き放した言い方をして彼の理想を否定する。
「そこまで拒絶しているのか、まあいい、予言するよ。
お前は口では嫌だと言い続けていても体は正直に俺の思惑通りに動くことになる」
けんもほろろに追い返すような言い方、それでも軽くため息をつくだけで表情一つ変えない彼はとりあえず観念したのか説得をあきらめる。
「とりあえず俺の話はここまでだ、だがお前と違って未来へのビジョンが読めていて俺に賛同してくれる奴もいてな、そいつも話があるらしい。だが、その前に」
さっきまでとオーラが変わる。子羊を狩るような目つき、殺気それを突然感じる。
(何か来る!!)
そう感じる広希、そしてマンネルへイムは話し始める。
「一発やろう!!」
意味を直感的に理解した広希、彼から放たれる殺気を感じ圧倒されながらなんとか彼に言い返す。
「どういう思考回路をしている、何の意味もない戦いに手の内をさらけ出す奴がどこにいる!!」
圧倒されたら負け、そう考えた広希、こっちが会話の主導権を握るよう強く言い返す。
「戦ったらお前の連れ去られた仲間のこと、教えてやるよ、勝ち負け関係なくな……」
その言葉を聞いた瞬間、思わず表情を変える。
「何故それを知っている?」
「それを俺が答える必要はない、腕を見るためだ、だからプロトスペルだけで戦おう……それに、俺はこれで戦う」
スッ
彼はポケットから兵器を取り出す。
そのデバイスに唖然とする広希
「どういう、ことだ?」
彼が手にしたもの、それは……
「お前の世界の裁縫なんかに使う針だって聞いたけど?知らないの?」
そう、彼は裁縫に使う針をポケットから取り出した。
察するにそれをデバイスとして使い俺と戦うという事だろう。
自らの兵器ではなく現実に存在するものをデバイスとして使う。
出来ないことはないが魔力は格段に落ちるゆえ相当の実力が必要になる。
「わかった、だが約束は守れよ……」
広希はデバイスを召喚し手に取る。
集いし願い、新たなる希望の力集い、無限の力解き放て!!
荘厳のカイパーベルト・オブ・バハムート・ソード
そしてマンネルへイムに無謀にも立ち向かっていく
広希はわかっていた、彼の実力を
5分後
「素晴らしい!流石創造主の力の持ち主、それでいてその力におぼれることもなく力、技術も今までに中でトップクラスだったよ」
そこには余裕の表情で広希をほめたたえるマンネルへイム
そして
倒れて動けなくなっている広希の姿。
実力が違い過ぎていた
広希がどれだけ剣を振りかざしても彼に届くことはなかった。
逆に彼の一突きは、今までの騎士のどんな1撃よりも強かった。
あの裁縫用の針が、広希にとっては今まで戦ってきたどんな強者のデバイスよりも強く感じた。
手も足も出せなかった、ただそれだけ。
「ではさらばだ、お前の仲間は、彼女が握っている……」
どこか不気味な笑いの表情を浮かべ、彼はこの場を去る。
彼が去った先の横道に入った入れ違いにまた一人の女性が出てくる。
(あいつ、確か)
その姿、広希には見覚えがある。
かつて王国にいた時、天才少女としてであった戦士。
「やあ、久しぶりね広君……」
変わっていない、自分は完璧だと自身に満ちあふれたその表情、満面の笑みを浮かべて現れる。
「こっちこそ久しぶりだな、戸波」
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