ユトランド国編
マルナ鉱山 まさかの罠
次の日
「よっと」
「確か、ここでいいんだな」
景と大輝はレオルド川のほとりの鉱山、マルナ鉱山にいた。
作戦の内容はあらかじめこの国の兵士の変装をした二人がこの国の鉱山などに侵入し、秘密を暴く、というものだった。
そして変装をした二人は鉱山の中に侵入していく。
その中で海輝は本音を漏らす。
「しかし、大丈夫かな?こういう事やったことないし……」
確かに不安そうな表情はしていた。
それを思い出し答える景。
「大丈夫、目立つようなまねさえしなければ、細かいことはその都度教えるから」
そして2人は作業現場に潜入していく。
「ここみたいだね」
作業現場に着いた2人が周りを見回す。
「いい?巡回しているふりをして歩きながら見るんだよ」
景の説明が入る。
「わかった」
了解の返事
ドン!!
「さぼってんじゃねえぞ!!働け!!」
ドン!!
「遅い遅い遅い!!!」
現場では兵士たちが奴隷の働く人たちを罵倒し、殴ったり蹴飛ばす音が響きわたる。
「これはひどい」
予想以上のひどさに苦笑いし始める景。
「でも、どこか元気そうな気がする」
海輝は周りに目を向けるとそう言いだす。
「確かに、普通じゃあり得ないよ、あんな量の物を持ち運ぶなんて」
景も同調する。
それもそのはず、彼らは自分の上半身くらいはあろう大きさの土嚢を軽々と運んでいた。
「あ、倒れた……」
しかしその人は突然倒れてしまった、何の予兆もなくさっきまで元気そうなそぶりだったのに…
周りの兵士たちが彼を担ぎ始める。
「私たちも行くよ」
「あ、うん」
景の呼びかけに2人は倒れた人の所へ向かう。
そして彼を担ぎ病室へ向かう。
病室
「ここか……」
そう囁いた景が辺りを見回す。
「海君あれ、いってみようよ」
景が海輝に話しかけ指をさす、指をさした先には医師の姿。
「わかった」
周りを見渡していた海輝、医師に話しかけてみる。
2人がここで起こっていることについて聞いてみる。
資料を作っていると嘘をついて。
「そうですか、資料作りですか、」ではちょっと話を聞いてくれませんか?」
医師の話によると奇病が蔓延、手足がしびれて動けなくなる事象が蔓延しているとのこと。
突然倒れてその時には重症というパターンが多く、医師としてもどう対応していいかわからず、対処法に困っているらしい。
「そうですか、ありがとうございます」
教えてくれたことに礼を言う海輝。
その時、ほかの兵士か周りに叫び始める。
「レオン閣下、ここでございます」
「わかった」
入ってきたのは中年くらいの男性、豪華そうな勲章を見せつけるように身にまとっていた。
「この国の政治家の有力者レオン閣下じゃ」
先ほどの医師がそう話す。
「そう言えば今日視察に来ると説明があったな」
有力政治家の訪問に病人達は必死に自分たちの窮状を説明した。
手足のしびれ、奇病、過酷な労働。
そして彼の声が返ってくる。
「なにが病気だよ、ふざけるな、IQの低い奴が踊るダンスだな
いいな、それだけで金がもらえるんだから」
軽蔑しきった表情。
唖然とする病人達。
「もういい、帰るぞ」
表情を一つ変えずにそう言って彼はこの部屋を出て行った。
「とりあえず、現場に戻ろう」
どこか落ち込んだ表情の景、現場に戻るように大輝に話しかける。
そして鉱山の状況や病人のことを記録し、就業の時間になり、更衣室へ向かう。
「着替えたらここで待ち合わせね……」
2人はそれぞれ更衣室へ入る。
そして何者かがそれを視界にとらえていた……
更衣室で1人着替え中の海輝。
(しかし疲れるな、変装っていうのも……)
初めての潜入任務に疲れを見せていた。
(ばれているんじゃないかって心配が最後まで聞こえなかった)
いつも神経を張り巡らせていた彼は変装しているのも楽じゃないと思った。
(ま、何事もなくってよかった、でも、ひどい人もいるんだな)
彼は奴隷たちが蹴飛ばされたり殴られている姿を見て感じていた、こういう現実もあるのだと
スッ
そこに一人の兵士が部屋に入ってくる。
ペコっ
2人の目が合うとその男性は軽くお辞儀をする。
海輝も慌ててお辞儀をする。
(やばっ、ばれないようにしないと……)
そう考えた彼は慌てて着替えようとその男から目をそらし自分の服を手に取る。
海輝が目を離したその刹那。
サッ
すぐに海輝に接近する。
海輝は気配に気づいて振り向く、しかし
ドゴォ
時すでに遅し
その男は渾身の腹パンを海輝の腹にくらわす。
突然の奇襲になすすべもない海輝。
彼の意識はそこで途切れる。
意識が途切れた彼を男は連れ去り更衣室を後にする。
10分後
「うーん遅い」
更衣室の入り口で大輝を待つ着替えを終えた景。
(遅すぎる、嫌な予感がする、まさか……)
嫌な展開が彼女の脳裏をよぎる。
タッタッ
男子更衣室から2人の男性の兵士が出てくる。
「すいません、ちょっといいですか?」
景は2人に更衣室に誰かいなかったか聞いてみる。彼がまだいることを信じて
しかし
「そんな人?いなかったよ」
そう答える兵士。
どこかで予想はしていた、しかし受け止めたくなった真実がそこにある
言葉も出ない景。
「そうですか、ありがとうございます」
そう兵士に礼を言って広希達の所へ戻っていった。
(大変なことになちゃった……)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます