共に歩むために
「景、何か情報はつかめたのか?」
広希がそう問いかける。
(ハスキーの人たちに何があったか、それを調べてもらうために景と明日香は別行動にさせていたんだが)
「うん」
景がうなずく。そして2人の調べで分かったことをしゃべり出す。
「2人で調べたんだけどね」
彼女が調べたことをまとめたノートを見せる。
「川?」
景の言葉に思わず問い返す。
「うん、ハスキーの人たちって伝統的に川魚をよく食べるんだって、それでさ、最近川辺に良く魚の死体が浮いていることが多いって」
景は調べたことを伝えていく、さらに彼が問い返す。
「野良猫はどうだ?猫達も魚を食べることは多いはずだ、何かおかしなことになってなかったか?」
「いい質問だね、最近不自然に泣いているって、よく死体も見かけるってのも聞いているよ…」
全て理解しきった彼は一つの答えを出す。
「上流に答えはあるな、沈黙の春が待っている、このままでは」
それに景は答える。
「それもそうだね、でもちょっとその前に来てほしい場所があるんだ」
問い返す広希。
「わかった、それはどこだ?」
「教会で、ミシェウ達が戦っているんだけど、ちょっと来てほしいんだ」
教会
ドォォォォン
爆発音が鳴り響く。
教会ではハスキーたちと魔獣が最後の戦いを繰り広げていた。
うわああああああ
ミシェウが魔獣に攻撃を仕掛ける。
(これが最後の1体……)
ブォォォォォォォォ
最後の1体がミシェウに殴りかかってくる。
スッ
それをかわし、魔獣に接近する。
(これで終わる!!)
ミシェウはデバイスを手にかざす、そして
大地をとどろかす力、その力で相手に轟かせよ
ガイア・ブラスト・グラス・ガヴナンショット
いけええええええええええええ
ミシェウの攻撃
至近距離で彼女の槍から攻撃が放たれる。
ドォォォォン
大きな爆発音
ブォォォォォォ
断末魔の声を上げるショゴス
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥ
ショゴスの体が消滅していく。
「おお、消滅していきますぞ」
教会の牧師が思わず声を上げる。
おお
やった!!
周りからも歓喜の声が聞こえてくる。
「やった,これで……」
ミシェウも声を漏らす、疲弊しきった体で、肩で息を荒げながら。
トン
牧師がミシェウの両肩をつかむ。
そして言い放つ、今の自分の感情を
「とても助かりました、感謝、ただそれだけです」
その時、遠くから叫び声が聞こえる。
「おい、ミシェウどうだった?」
その言葉を聞いて彼女は答える。
「あ、広君、やったよ、苦戦はしたけどみんなの役に立てて、何とか全部倒したよ」
「それは良かった」
それを聞いて安堵の表情を見せる広希。
(だったら、これ、やってみよう)
ハスキーと人間達の関係を修復するにはどうすればいいか考えていた彼はある案があった。
そしてそれを実行する。
「あ、そうだこれ……」
スッ
彼がポケットから小型マイクを取り出す。
「これは、何ですか?」
自身も疲れきっている中、気力を振り絞って広希は答える。
「こっちの世界の道具さ、ここをたたいてみ?」
フッ
彼女を安心させるため、軽くほほ笑んだ表情を見せて
小型マイクの先端を指差し、彼女に渡す。
「あ、はい」
彼女はマイクを手に取り言われた通りマイクの先端をたたく。
ドンドン
「ゔえぁぁぁぁぁ」
想定よりはるかに大きな音、それに驚き思わず奇声を上げる。
「そこに口を向けてしゃべってみ、それで伝えてみてほしいんだ、今の気持ちを」
ほほ笑みを見せながら広希がそう頼む。
「ふぅ、ふぅ」
落ち着きを取り戻したミシェウ。
呼吸をまず整える、そして語り出す、今の自分の願い感情を
そして演説が始まる
その演説、決してすらすらしゃべれたわけではなかった、何も準備せず、おまけに彼女自身も戦いで疲弊し、気力だけでここにいるような存在だった
しかし彼女が精いっぱい自分や、ハスキーの仲間達、それだけではなく人間達に幸せになって欲しいと思いをすべて込めて演説をする
そして最後に彼女はこう叫んだ
私たちも力になります、だから、昔みたいにたがいに出来ることを協力し合って、また互いに争い合ったりすることなく力を合わせて共存していけたらいいなって思います。
みなさん、私たちは、あなた達人間の役に立つため、努力を惜しまず戦い続けます、約束します。だからお願いします、私たちの力になってください、そして、ともに素晴らしい未来を築き上げていきましょう。
本当に、お願いします。
スッ
頭を下げる。
自分の今の気持ち、互いに争い合わず、共に力になり素晴らしい未来を作り上げたいという願いそれを込めて頭を下げる。
自分がしゃべるのがうまくなく、今の言葉だけでは自分の気持ちが伝わり切っていない、そう考えた彼女が最後にそう考えた精いっぱいのことだった。
頭を上げる、その時彼女は驚く。
周りが思わずざわつく。
スッ
誰かが彼女を抱きしめる。
とても温かい感触、予想しなかったこの行動に彼女は言葉が出なかった。
1分ほどしただろうか、抱きしめた者が手を振りほどく、彼女は顔を見上げる。
「広希」
抱きしめたのは広希だった。
「どうして?え?」
スッ
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