私は……逃げたりしない!!

「はい、私、ミシェウの声を聞いて悩んできました、でも私は何もできなかった。


 彼女のとっても、彼にとっても今は苦しくても、本当に良かったって思えるような事をしたい。それが今できるのなら、私、やります」




 タッタッ


 彼女が結界に近づく。


 そして


「うわあああああああああああ」




 叫び声をあげ、結界に突っ込む。


 しかし




 ドン!!


 すぐにはじき返される。体を吹き飛ばされ倒れるイレーナ。


「すごいだろ、あきらめるかい?」


 ネトのはやし立てるような声が彼女の耳に入る。




 スッ


 ダメージを受けながらも何とか立ち上がるイレーナ。


(こんな強い結界だったんだ……)




「大丈夫か?もういいだろ」


 心配になる海輝、彼女に呼び掛ける。


 そして彼女が言葉を返す。


「心配、ありがとうございます。でも、私決めたんです。みんなの思いにこたえたいって、ミシェウも、ベイルにも、そしてあなたたちにも。それには、ときには苦しい道を選ばなければいけない時もあります。でも、それを乗り越えてでも、私は救いたいから!!」


 スッ


 一歩ずつ結界に近づいていく。




 タッ


 そして結界の前にたどり着く。


(ミシェウ、ベイル、それだけじゃない……海君、広君、景、ドゴールみんな)




 スッ


 そして結界に手を触れると




「うわあああああああああああああああああああああ」




 叫びながら結界に入ろうとする。


 反発する力


 バリバリバリバリバリバリバリバリ




 何度も押し返されそうになる。


「ぐわああああああああああああああ」


 それを気力で押し返す




 そして




 ドォォォン




 彼女の体が少しばかり吹き飛ぶ。




 結界の中に




「結界に、入った……」


 海輝が思わず口を漏らす。




「すごいよ」


 ネトも思わず口に出る。




(結界には入った、後は)


 立ち上がるイレーナ。


 タッタッ


 ゆっくりとデバイスに近づいていく。




 それを見たネト、彼女のマインドを心配する。


(結界を突破したのはさすがだ、さて、創造主の力は彼女を受け入れてくれるか……)




 スッ


 デバイスを握るイレーナ。


 力の発動を一瞬ためらう。


 彼女は心の片隅で悩んでいた、私もベイルのように邪な力にとらわれてしまうのではないかと


(だったら、こうすればいい!!)




 握りながら考える、エマナ、エーディン、サラ、広君、景、海君、そして


 弟のドゴール


 自分を支えてくれた人たちのこと


(みんながいれば、大丈夫私は、逃げたりしない!!)




 海輝も祈る。


(彼女なら大丈夫、頼む創造主様!!)




 デバイスに力を込める!!




 コードが自然と頭に浮かぶ。




 世界を創造する六根清浄の力、今


 真如なる輝き照らし、暗き道にさまよい歩く世界を照らし出せ!!




 クリスタルスターライト・ワンドカッシーニ




 シュウゥゥゥ


 彼女の体が光り出す。




 スッ


 彼女の手には見たこともないような命器。




 彼女は思わず声を漏らす。


(これが痣の力……)




 そして今の状況を思い出す。


「では行きましょう海君、彼を止めるために」


 同調する大輝。


「うん」


 イレーナがネトに話しかける。


「ありがとう、無事力に選ばれました」


 言葉を返すネト


「礼なんていらないよ、君が正しき心を持っていたから選ばれた、それだけ」




「そうですか、では行ってきます、また会いましょう」


 イレーナがそう告げると3人がこの場を去る。




 3人は来た道を戻り、地上へ戻る。






 地上


 市街地




 そこでは1人の男が周り中に攻撃を放っていた。


「ふははははははは」


 ドォォォォォォン


 今の国王はもはや正気ではなかった、高笑いを繰り返しながら街を破壊していた




「うわああああああああ」


 逃げまどう国民の悲鳴がこの地を支配していた




(もっと、もっと破壊を……)


 国王を支配する衝動、それだけが彼を支配していた。




 ドォォォォォン




 その彼に向って攻撃が放たれる。


 大きな爆発音。


 間一髪でその攻撃をかわす。




 そして攻撃が放たれた方向に向かって叫ぶ。




「誰だ、国王に向かって攻撃を放つ逆族は!!」




 そして攻撃を放った者が言い返す、彼に立ち向かう意思を示して…




「わたしですが何か?」




 フフフ


 うすら笑いを浮かべながら言い返す。


「お前か、イレーナ!!」




 答えるイレーナ。


「とうとう本性を現しましたね、国民を自分のおもちゃとしか認識していない、だから平気で彼らに攻撃を放てるもうあなたに国王を名乗る資格はありません」


 そして最後に宣言する。




「懺 悔 の 時 間 で す 」 




「だったら止めてみろ!!」


 国王が彼女に立ち向かい、戦闘が始まる。




 タッ


 ベイルがイレーナに接近する。




 接近戦、2人が攻撃し合う。


 カンッ、カンッ


 互いに剣で戦う、どっちも優勢とは言い難く互角の戦いが続くが。






 ドン


 イレーナがベイルを弾き飛ばし、ベイルが後退する。




 そして追い打ちをかけるようにベイルに接近しようとする。


 しかし次の瞬間。




「ぐはっ!!」


 接近しようとした刹那、イレーナに前進を身を切り刻まれるような痛みが全身を襲う。




 デバイスを装備し、前進を魔力で覆っている間は刃物、銃、何であろうと貫通し、出血することはない、だがダメージや痛みは受ける。


(そうだった、巡礼の初日の夜にミシェウから聞いた)


 痛みに耐えながら思い出す……




 そして彼女は全身を覆う痛みに思わず進むのをやめる。


(彼のテーマは、その槍から放たれるかまいたち……)




「ほらほら、どうだ!!」




 ベイルがその槍を振りかざす。


 立ち止まったイレーナに彼のかまいたちが襲いかかる。




 そして彼女は目の当たりにする




 攻撃を受け、倒れこむ自分自身を


(まずい!!)




 慌てて左へ飛び込み攻撃をかわそうとする、しかし……


「ぐわぁぁぁぁ」


 完全にはかわしきれず、右半身に攻撃を受ける。




 攻撃を受け、再び倒れるイレーナ。




 海輝はこの戦いを見ながら思い出す。


 彼女の能力は未来予知、相手の攻撃の範囲や軌道があらかじめ彼女の視界に入るという物、


 しかし予知できるだけで攻撃事態は回避できない




 それにあの密度では回避しようがない、防御術を使えない彼女には攻撃を受ける自分自身が見えてしまうものだった。






 全身が痛い、それが今のイレーナの心を占めていた。


 攻撃を受ければイレーナには攻撃をまともに受ける自分の未来も移されてしまう、それゆえ気持がどうしても後ろ向きになってしまう、防御術、学んでこなかったツケだと今さら考える。


 でも、友の思いを無駄になんかしたくない




 思い出す、ミシェウが苦しんでいたこと


 そして思い出す、彼女の痛みはこんな痛みよりはるかにいたいんだって事を……




「だから、こんなところで、甘えている場合じゃない!!」




 そう決心したイレーナ、少しずつ立ち上がっていく。




「これで終わりだ!!」


 ベイルがそう叫び、槍を振り回す。




 そして振り回した槍から何十ものかまいたちがイレーナに向ってゆく。




「今の私にあれを回避できるすべはない、だったら!!」




 彼女の視界にはかまいたちを全身に受ける自分




「お前らに未来など無い!!私が作る栄光の未来以外はな!!」


 ベイルの叫び声。




 そして




 かまいたちを全身に受けるイレーナ。




 一瞬膝をつく。


「未来は私が作る!!」




 そして立ち上がる


(だったら、痛みを受けても……)




 強引に突破するまで!!




 スッ


 そしてさらにベイルに接近する。




(みんな、私に力を貸して……)


 そう心に願い、今の持てる力全てを込める。




 ベイルも気付く、こいつに小細工は通用しないと




「だから」


「全力でたたきつぶす!!」




 制裁の力貫き、混迷なる世界を力で統一する力を!!この世界を蹂躙せよ!


 ファリアス・オブ・ストリングス!!




 イレーナも叫ぶ、今の自分の思い、仲間たちに対する思いをこの1撃に込める思いで




「いっけええええええええ」




 時空を超える力、今友のため敵をせん滅し救いの力となり、定めを超える閃光貫け


 ヘリオポーズ・イクシオンブラスター・スプレマシー・ノヴァ




 ドォォォォォォォン




 二つの術式が衝突する。




 今までにないくらい大きな爆発音。


 大きな煙




 やがて、煙が晴れる。


 片方は敗北し倒れ、もう片方は立っていた。




 立っていたのは




「何とか、勝ちましたね……」


 ふらつきながら何とか立っていたイレーナ。


 全身が痛い、でももういい、勝負はついたのだから

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