聖地巡礼

「おい、これ……」


まず海輝が驚いて口を開く


「今殴りましたよね?あの子を……」


イレーナも声を漏らす


4人が確認したシーンには確かに存在した。


ハスキーの彼を隣にいる人物が殴るシーン




明日香が友に行動することを誘う。


「これから私、彼らの居住区に行くけど行ってみる?」




ためらう理由なんてなかった。すぐに広希は返事を返す。


「是非行ってみたい、俺達も連れて行ってくれ」




そして5人は居住区へ移動する。


そこは先ほどのきれいな大通りと比べるとゴミが散乱していたり、建物か古く、中にはひびが入っていたりして貧しそうな印象を受けた




居住区へ入る5人、そこで何か違和感を覚える。






ざわざわ




「変な気分だな」


海輝が違和感を感じ始める


「確かに、どこか、怯えているような」


それに同調するように広希も口を開く。


周りが5人を異様な視線で見つめる、どこか怖いものを見ているような




その時、イレーナが前方を指差す。


「あれ、行ってみましょう」




イレーナの指差した前方をみる。


そこでは小さい女の子と人間の兵士がもめている


後ろの壁には殴られているハスキーの老人と大人の女性と男性。




「私の祖父と両親になんてことしやがる!!」


小さい子が叫ぶ。


「しょうがないだろ、このゴミどもが喧嘩を売ってきたんだからよ!!」


開き直り罵声を浴びせる兵士




「お前ら用無しは俺達にかかわることそのものが死罪なんだよ!!」


「用無し?だったら容赦はしない!!ここで戦ってもらう!!」


彼女が戦闘態勢に入る。




「まずい、止めに入ろう!!」


広希の言葉で5人が止めに入ろうとしたその時




「おい、市民たちがいる中で乱闘はよせ!!」




両者の間に剣をはさむ


見知らぬ人物が止めに入る




「なんだ、貴様!!」


兵士が叫ぶ。


「落ち着け、ミシェウ、一般人の前でお前が力を爆発させれば周りにも危害が及ぶぞ」




彼女はその言葉に怒りをこらえながらデバイスをポケットにしまう。




「貴様らもだ、もういいだろ、帰れ!!」




「わかったよ」


不満だらけの声。


そう言うと兵士たちはこの場を去っていく。




5人は彼女のもとに駆け寄る。


「大丈夫?」


明日香の声。どうやら彼が明日香の師団のリーダーらしい。




「まったく、いくら取り締まってもこれだ……」




広希が質問する。


「何があったんです?」




「私がこの師団クラブ・レオンハルト師団の団長フェルナンド・ホベルトだ、後ろにいつのが私の部下アウベスとアレックスだ」


ホベルトは整った顔立ちで体の線が太く頑固そうな印象があった。


彼がこの国の現状について説明し始める。




「まず彼女はハスキーと呼ばれる種族のミシェウ、12歳にしてハスキーの中でもトップクラスの能力者だ」


「後ろにいる倒れているのが彼女の祖父ソング」


広希、ミシェウを見る、身長は145cmくらいの小柄な子で髪は紫、犬のような毛耳としっぽ。


(聞いたことあるな)




ミシェウは今の自分たちの事を語り始める。


要約するとこうだった




昔は技術力のある人間と身体能力のあるハスキーが共存し、友に力を合わせて繁栄していた。


しかし、ハスキーたちに謎の病気が蔓延した。


緑色の斑点、手足のしびれ、しびれにより身体能力を発揮できなくなり、国はシステムが崩壊し、貧しくなった。


そして人間たちの中にハスキーに対する憎悪が蔓延し、今のような乱闘騒ぎが頻発するようになり、ハスキーたちも人間を信じなくなってしまった。




イレーナが口を開く。


「そんなことが……」




明日香も思わず声を漏らす。


「明後日、聖地巡礼があるのに」


「聖地巡礼って?」


景が問いかける。




「聖地巡礼、国王が祭司とハスキーの王が宮殿で見守る中、この町の3つの遺跡を巡り、この国の繁栄と平和を誓うというものです。そして二つの種族の共存も願います。


あなたたちを呼んだのは、その警備のためです」




明日香も説明し始める。




「この日は遺跡を守る国王、司祭、ハスキーの王のいる宮殿。そしてこの日を教会で過ごしたいという人たちが集まる大教会にテロの脅迫状が届いている」




「いまから警備の場所の割り当てを考えるよ、ちょっと時間にいいかな?」




「いいよ」


景が返答し、しばしの時間が流れる


そしてこういう風に決まる。




教会  アウベス、景、ホベルト


宮殿 広希、明日香


遺跡 イレーナ、海輝、アレックス、ミシェウ




「広君とは今回絶交します!!」


イレーナが口を開く




ほんのばかり驚いた明日香が質問する


「何があったの?」


「行く直前にちょっとね……」


ジト目になって景が答える。






そしてこの作戦のまま聖地巡礼の日が訪れる。




1日目




遺跡への聖地巡礼


まず国王ベイルの所信演説。




国王とハスキーの王であるミシェウの父ソングと国王が何十人の厳重な警備に囲まれた中聖地へ入っていく。




その中にイレーナ、海輝、アレックス、ミシェウがいた。




彼らは特に敵と遭遇することもなく遺跡の中に進んでいく。


その中で大輝は気になったことを質問してみる。




「イレー……ナ、さん、ちょっと聞きたいんだけど?」


イレーナが答える。


「何でしょうか?あと、普通にイレーナって呼んで構いませんよ?」


ニコッ


イレーナの返答、そして見せるほほ笑み。


思わず顔を赤らめる。


質問する。


「明日香やミシェウとは知り合いなの?昨日の夜作戦会議の後、結構親しく会話してたけど?」




「明日香とは昔知り合いました、最初はあまりしゃべらなくて戸惑いましたが、すぐに親しめました、無言の闘志って言われるくらい負けん気が強いんですよ、ああ見えても……」


ミシェウも会話に入る。


「イレーナとは昔からの知り合いです、彼女はもともとこの地方の遊牧民族の生まれでした。でも2人には共通点があります」




「ええ……」


イレーナのその言葉に彼女が表情を暗くする。


「ちょうど同時期、私が生まれたての頃、私が生まれてから初めての記憶です」




「ごめん、やっぱいいや」


海輝、まずいことを聞いたようですぐに静止しようとする。


しかしミシェウは構わず話す。


「心配しないでください、話さなくったって事実が変わるわけではありませんから…それにイレーナだっていつかは話さなければいけないって思っていたんでしょう…」


イレーナに視線を送る。




「はい、その通りです。話してください。いつかは腹を割って話さなければならないことですから……」


イレーナが目をつぶりとたんに無表情になる。




ミシェウが話す。


「とある日、どんな召喚師か知りません、終焉の角笛を轟かせました。その人物はその角笛でしか演奏できない曲、死の狂奏曲パレードを演奏しました。そしてその曲は魔獣をおびき寄せる効果があります。」




彼女の手が震えている。


海輝は見逃さなかった。


「もういい……」


それを見て話を止めようとする。




イレーナが話の続きに入る。


「魔獣ショゴス、それも何千体も、警備の兵士や傭兵たちは都市の人間たちを守るので精いっぱいでした、すでに扱いが低いハスキーや私たちは放置されたくさんの仲間を失いました。そして自分たちの両親も……」


海輝、ミシェウの様子を見て止めさせようとする




「もういいよ、その子震えてるぞ?」


ブンブン


ミシェウは顔を横に振る。下を見てうつむきながら


「いいんです、知って欲しいんです、彼女もそれを知っていて話しているんです」




「私は国王ベイルに取り入れられました、ハスキーとの共存を目指す政府の象徴として…


彼は心臓の痣を手に入れる人間にふさわしいものとなるため積極的でした。どんな些細な悪も許さず厳しく裁き、処刑したり……」




思い出す、雨季の土砂降りの中ずぶぬれの私に


「もう大丈夫だ、私の部屋に来なさい、2人で大事な話があるから」




そして彼の側近に取り入れられる。


そして彼女は誰にも聞こえない声で囁く


(でも、最近になって……)




イレーナも1人で悩み始める。


(私だってミシェウのように立ち直りたい、でも私は立ち直れない……)

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