ヴァールヴァイク教国編
三つの悩み
1分ほどで2人は戻ってくる
「どうだった?」
イレーナが2人に小声で聞く、そして景が答える
「海君、バリケード片付けなよ、みっともないから」
そう彼をたしなめた後答えを言う
「ただのフェネックだよ、狐に近い生き物だった……」
赤面する海輝、そっと作ったバリケードを片付ける
そして4人は寝袋で睡眠をとった
「なあ」
広希が隣の海輝に話しかける
「何だよ」
反応する海輝、まださっきのバリケードのことがあり、話ずらい様な態度だった
「腹を割って話したいだけだ、変なわだかまりを持ったまま旅を続けるのもよくない、どこかで仲間割れなんて絶対いやだしな……」
そうほほ笑んで言葉を返す広希
「旅に出てどうだ?何か感じたことはあるか?」
その問いかけに考える海輝、そして言いたいことを整理した後彼に問いかける
「三つ質問がある、まず今のゲリラの襲撃で思った、この世界いつ死んでもおかしくない世界なんじゃないかって、争うばかりで明日生きている保証なんてない、それでも怖くないのかなって」
「二つ目、俺が役に立てるようになる日って本当に来るのかなって思っている
今のゲリラとの戦いがそうだ…結局俺は隠れていただけで何の役にも立っていない
仲間だ何だ言っても結局俺は3人が活躍しているのをただ見ているだけだった
いつかどこかで俺はみんなの足を引っ張ってしまうんじゃないかって不安になっているんだ……」
「三つ目、結局俺は自分のやりたいことを押しつけてその俺自身は役に立てないってことになるんじゃないかって不安になっているんだ
望美を救いたいなんて要求ばかりしている、別に3人はそんなことをする必要がないのに、それって3人の善意を利用しているだけなんじゃないかって悩んでいるんだ」
「……」
広希は考えているようでしばしの時間が流れる、そして答えを出す
「一つ目、確かにそうだ
望美だってそうだ……あいつは自分の身の破滅が迫っているって知っていてもあきらめなかった…最後まで戦った、お前はあいつを追っているんだろ?だったらそのくらいの覚悟がなかったら救えない、闘うのも、しっぽを巻いて逃げるのもお前の自由だ
二つ目、だったら強くなれ、逆にお前が俺達を引っ張れるくらいに
三つ目、気にするな、俺たちだって彼女のことは気になっていた、目的は一緒だ、それにお前だって役に立っているときはある……一方的なんかじゃない
それに、俺たちだってそう言う事はある、そういうときは別の事や誰かから頼まれたときにそいつを助けろ…自分が助けてもらったように
以上だ」
広希の話は終わり、海輝は今のことを考えこみながら就寝した
翌朝、ブンブンを出発し昼ごろ目的地ヴァールヴァイクにたどり着く
道を歩いているとイレーナがこの国について説明し出す
「この国は私の故郷なんです、簡単に説明します」
この国の国民は信仰深い人が多く、教会や神殿が街ごとにいくつかできていて
信仰率も7割を超えています、もともと土壌が豊かで豊作になるたびに神の御加護で
あると考え国民たちが神に祈っていたことがその理由であるようです
街を見てみる、教会、風車、街並み……とてもきれいで中世の西洋のような街並みだった
街には教会が存在し、石造りの大通りを進むと、道端には時折天使の彫刻が掘られており、それがこの国が強国である事を盛んにアピールしていた
「ねえねえあの子、広君」
景が1人の人物に指をさす、その先には
「あれ?あの子、フタ!!」
かつて一緒の行動していた仲間の発見に思わず声を上げる
「おーい、フタ?私だよ!景だよ!」
スッ
その子がそっと振り向く、自分の名が呼ばれたのを感じて
4人とその彼女が近づく
「久しぶりだな、お前もこっちで活動していたんだ」
コクっ
無表情で彼女がうなずく
「あ、海輝とイレーナはまだ知らなかったっけ、彼女が二川明日香、元々俺達がいた連隊の仲間だったんだ」
「よろしく」
明日香が無表情のまま小さな声であいさつをする。
「あ、こっちもよろしく」
「私がイレーナです、よろしくお願いします」
2人も言葉を返す。
景が話しかける。
「ところでさあ、今何やっているの?教えてほしいんだけど……」
「別に」
そっけない返事、答えるつもりはないらしい。
そう判断した景がさらに質問する。
「いいじゃん教えてよ、私たちは別にあなたたちみたいにその胸に録音機仕掛けているわけじゃないんだからさ」
(うっ)
彼女は自分のことを読まれて思わず表情を変える。胸に録音機はしかけていた、しかしなぜ分かったか彼女には疑問だった。
「さっきチラって胸に視線がいってた。もしかしたらってカマかけて思ったんだけど本当だったんだね」
(くっ)
明日香はどこか悔しそうな表情を浮かべる。
「ねえ教えてよー、もしかしたら協力できるかもしれないよー」
何をやっているか知りたい景が教えてほしいとせがむ。
(しかたないか……)
景にどこかやられた気がして内容を説明する。
スッ
彼女が現代から持ち込んだカメラを見せる。
「これを見てほしい、どう思う?」
カメラを動画再生モードにして4人に見せる。
そこには1人の少年。
「私この子知ってます。確かこの子ハスキーで体に障害を持ちながら登山家で活動をしているって有名な……」
イレーナが思い出す、しかし次に流れたシーン、その動画に4人の表情が固まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます