第3話 救出と捜索

 目的地に着くなり、ラチカはパチリと目を見開き、車から飛び出た。國彦も急いでラチカの後を追う。

 古ぼけたアパートの階段を駆け上がり、部屋の戸を一つ蹴り飛ばす。


 女が首を吊っていた。


 ラチカは女の首から縄を解き、急いで脈を確かめた。

 遅れて到着した國彦も、すぐにラチカの元へ駆け寄った。


「どうだ?」

「まだ生きてる」


 ラチカは躊躇なく人工呼吸を始めた。

 國彦はそれを見て、ラチカが息を吹き入れるタイミングに合わせて女の胸を力強く押し、心臓マッサージをする。


 何度か繰り返すうちに女は咳き込んだ。

 それを見て、ラチカは鼻で笑うと、部屋を漁り、携帯電話を手に取った。


 119番を呼び、適当に携帯電話を放ると、何も言わずに部屋を飛び出した。

 相変わらず突風みたいだと、國彦は溜息をつき、ラチカに続く。


「いいのか?」

「逆にこれ以上あたしらにできることはねえだろが」


 これまで助けに向かった女達の中でも、自殺未遂は珍しくないが、誰かに殺されそうになったり、拉致監禁されているような状態から助け出すのとは、わけが違う。


「あたしの贖罪は、死を喰い止めるまで。後は知らない」


 ラチカはそう言って、ゆっくり階段を降りる。


「あいつはあんたの探してる子?」


 ラチカに訊かれ、國彦はかぶりを振った。


「いいや、違うな」

「そ」


 ラチカは懐からキャンディを取り出して、口の中に放り込んだ。そしてもう一つキャンディを取り出すと、國彦に差し出した。


「食べる?」

「もらうよ」


 國彦はラチカからキャンディを頂戴して、同じように口の中に放り込む。

 二人は車に戻り、走り出す。


 向かいから救急車が走って来るのとすれ違ったが、ラチカは気にせず欠伸をして、また眠りに着いた。

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