第6話

最近、よく夢を見る。

これも全部、この町に来てから... あの男に出会っ てから見るようになった。

内容はいくつかあるけど、 全部昔のほんとにあっ たこと。

私が教育されてた時の夢、あの日の夢、お姉ちゃ んが...いなくなった時の夢、つい数日前にようや く、会えた時の夢。

良かったこと、忘れたくても忘れることができないこと、嬉しかったこと、 そんな夢。

今日もそんな夢を見て目覚める。

「はぁ... 頭痛い。」

寝覚めは最悪だけど、 それでも起きて準備をしなきゃいけない。

「えっと、この前つけて見つけたアイツの家はっと。」

スマホのマップアプリを開き、 スクロールする。

「今ならまだ間に合うよね。」

スマホの時間は7時を指していた。



「行ってきます。」

父さん母さんにそう告げていつもの様に家を出る。

兄さんはいつもHRギリギリだからまだ寝てる。

そんないつもの日常に亀裂が走った。

家から出てはじめの交差点で信号を待っている 時、右から急に突き飛ばされた。

その瞬間、僕の左側の道路を軽トラが通った。 「っ!?あっぶな。」

「チッ」

幸い、衝撃はそんなに強くなかったからなんとかなったがもう少し強く押されていたら...想像しただけでゾッとした。

押された右側を見ると僕と同じくらいの年齢の女の子が立っていた。

「ご、ごめんなさい!ちょっと躓いてぶつかっちゃいました。」

「ぜ、 全然だ、大丈夫...です。

にしては、強かったけど... 後さっき舌打ち聞こえなかった?

いや、そんなことよりも... この声って...。

「すみません。 私はこれで... 」

「よく見たらアイツじゃない... ? でも、凄く似てる、どういうこと?」ボソッ

「あ、あの!」

その子の声がもっと聞きたくて、 昔聞いてたあの

声にとても似てて、 呼び止めてしまった。

「そ、その...僕たちってあった事ありましたっ

け?」

「?いや、ないと思いますよ。 それじゃ。」

その子は僕になんか興味が無さそうだった。

でも…諦めきれなかった。

「ぼ、僕、川崎都灯って言います。 よく、 女の子っぽいねって言われるんですけどね、 あはは。」 僕が名前を言った瞬間、その子は足を止めて僕の方を振り向いた。

その表情は満面の笑みだった。

「へぇ〜 "川崎 "都灯君って言うんですね。全然女の子っぽく無いですよ。 似合ってます。」

「そ、そうかな。 あはは。」

ついさっきまでの彼女とは正反対で驚いたけど、僕のことを見てくれた事が嬉しくてそんな事どうでもよくなった。

「あっそうだ、これも何かの縁だと思いますし、連絡先交換しませんか?」

「ぜ、ぜひ!」

こんなにとんとん拍子で話が進むと思わなくてドッキリかと疑いたくなるくらいはやかった。

そうして僕は初恋の声によく似た女の子の連絡先を交換した。


「正木優美さん。」

表示された名前を読み上げる。

「はい、そうです。 私の名前…覚えてください

ね。」

その子は僕にニッコリと笑顔で言った。

「っ!?」

その笑みは僕にとって効果バツグンだった。

「それは反則だって...。」

顔が耳まで熱くなる。

そんな僕なんか気にせず、 その子は言う。

「あっいけない、 そろそろ時間なんでそれじゃま

た~!」

「あっ」

待って。

今度はその言葉が出なくていつの間にか彼女は行

ってしまった。

「あの声、 やっぱり似てたなあ。」

数年前、突然きけなくなった、初恋の声に。

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クズの末路 @haya__

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