【47-2】本棟の部屋をもらいました。
「ああ、そうだ。話は変わりますが、結婚式に関しては、もうすぐ真冬がやってくるので、春に予定を立てましょう」
……結婚式。
本当にアベル様と結婚するのだな……私。
あ、違った。もう結婚してるのだけれども。
言うの何回目だ。
でもまだ、たまに信じられなくなるのだ。
こんなに愛情注いでもらって、良い境遇に置かれているのは、本当に私なのか、みたいな意味で。
幸せで地に足が着かない感じがする。
しかし。
「はい、わかりました。異存ありませんよ! そういえば、アベル様。結婚式ってどのような規模で行うのですか? 私、できたら母を呼ばずに済むならそうしたいのですが……無理、ですよね?」
自分、母を呼びたくないであります!
「……王命ですから、招待状を送らない訳にはいかないです、それは難しいですね」
ですよね……。
「じゃ、じゃあ。この敷地内だけのこぢんまりとした結婚式とかでは……?」
「それも駄目です。規模の大きなものを開きます。でないと、この間のパーティのように、あなたが世間で舐められます。結婚式も挙げてもらえない辺境伯夫人……みたいな。これは私が悪かったのですが」
う、アベル様にすまなそうな顔をさせてしまった。
「そんな顔しないでください。……で、でも、まだ理屈じゃない部分で母が怖くて。それに母が来たら結婚式が無茶苦茶になるんじゃないかって……」
私は、そうボソッと呟いた。
そうしたら、お茶のおかわりを注いでいたリリィが口を挟んだ。
「奥様……お母様が怖くていらっしゃるのですか? ……あ、すみません!」
「あ、いいのよ、大丈夫」
私はリリィの頭をナデナデした。
「す、すみませんでしたー!」
リリィはトテトテ、と小走りに私達から離れた。可愛い。
「まあ、王都からここは遠いですし、招待状を送っても向こうが断るかもしれませんよ、リコ。ただ、あなたのそのトラウマを克服するには逆に王妃と私が会って大丈夫だ、というのを確信されるのもいいかもしれません」
「そ、そうですね」
アベル様が言うのも、もっともだ。
……うん、勇気を出すしかないんだな、やっぱ。
じゃないといつまでもこのままだ。
「しかし、結婚式をむちゃくちゃとは?」
「……たとえば、自分の結婚式でもないのにウェディングドレスを着て、自分がヴァージンロードを歩こうとするとか……。来てくださったお客様のなかで気に入った男性を口説き始めるとか……」
「……そこまで非常識なんですか? あ……失礼」
「いえ。本当に非常識なので。……ひょっとしたらそれ以上のことをするかもしれませんし……」
「対策をいくつか立てておく必要がありますね」
「逆に、会いに行くのは駄目でしょうか。その、結婚式前に。……アベル様がお忙しいのはわかってはいるのですが」
「え、どうしてですか?」
「その、せっかくの結婚式ですから……不安なまま望むより、一度会いに行って大丈夫なのを確信してから準備したい、です……無理でしょうか?」
「……なるほど。一度ご挨拶にいくのも良いですね。ちょっとスケジュールを組んでみます」
「ありがとうございます、すみません、ご面倒を申しまして」
アベル様、忙しいのにホント申し訳ない。
でもやっぱり、心置きなく結婚式あげたい!
「面倒なんて。私達二人の大事な結婚式の話です。後悔のないよう、とことん話しましょう」
そう言ってアベル様はテーブルに手を付いて立ち上がり、私の頬にキスをした。
や、やさしい。
よ、よし。アベル様のためにもがんばる!
……と、思っていたのだけど。
この悩みは、このあとすぐに、あっさり解決されることとなる。
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