【47-1】本棟の部屋をもらいました。
それから一週間。
頭がまだフワフワしている。
幸せで。
ただ、その間にセバスが……。
「それでは、夫人としてのお仕事をいくつか覚えていただきますね」
ぎゃふん。
そうなのだ。
さよならニート生活なのだ……!!
でもまあ、もともと夫人業務は真面目こなすつもりで嫁いできていたから、別にいいんですけども。
ただ、セバスの話を聞いていると、今までのことが考慮されているのか、割りと軽めの業務にしてくれてるのがわかる。
こうなる前に孤児院経営とか自分で仕事抱えちゃってるしね。
そして、今日。
「あなたのお部屋が用意できました。見に来てください」
アベル様が呼びに来た。
「
そして本棟の私の部屋を見せて頂いた。
ずいぶんと広くて豪華だ。
王宮で使ってた私の部屋より豪華な気がするぞ……。
「わ、すごい。家具が全部新しそうですが……」
なかなか手に入らないブランドの家具とかもあるぞ……。
「ええ、ちゃんと新しく取り揃えました。足りないものがあれば、仰ってください」
「いえ、じゅうぶんです……わ、庭園も見られていい景色。ありがとうございます。……あれ?」
なんか既視感。
「この部屋の景色、どこかで……」
「それは、最初の夜に私の部屋に侵入したからでは。隣の部屋なら景色は似てますから」
「ああ、そうですね、隣の部屋なら……え、隣の部屋!?」
「はい、隣の部屋。ほら、そこのドアを開けたら私の私室です」
「ちかい!?」
「そう、近いんです」
そうか……王宮だと、父は父、母は母で宮殿があった。
そしてそこへ父が訪ねて、みたいな……あ。
えーっと、野暮なことを考えるのはやめておこう。
……とか思ってたら、アベル様に急に抱きしめられた。
「ど、どうしました?」
「式は春になりますが……私は式まで待つつもりはありませんので」
「な、なにお……」
喋り方がサメっちになりかけた。
「これから冬ですし、一人寝は寒いので添い寝してくれる方が欲しいな、と」
そう言って頬にキスされる。
「な、なるほど……。た、多分そのほうが温かいでしょうね」
顔が赤くなるのを止められる装置がほしいです。
「ええ、きっと」
そして深いキスをされた。
「!?」
そのまま止まらず、何かがおっぱじまりそうになったので、私は真っ赤になってアベル様を引き剥がした。
「ひ、昼間ですしおすし!!」
舌がもつれて変な言葉でた。
アベル様は少し笑ったあと、
「なんですか、その言葉。……なるほど、夜ならいいんですか?」
と耳元で囁いてきた。
「そういうことではないのですよぉー!?」
「わかってますよ、冗談です」
とても楽しそうだった。
からかわないで頂きたい!
しかし、その夜、私はアベル様のその言葉が冗談ではなかった事を知るのである(謎)
部屋を見たあとは、そのまま本棟の庭園で、アベル様とお茶をした。
本日のアベル様はゆったり過ごされている。
こういう時間が取れるようにもなってきたのね、アベル様。
このままブラック企業みたいな勤務状態が順調にホワイトになればいいのだけど。
そして本棟のティータイムは本物の侍女がいる……。
すこし、王宮にもどった気がしたけど、続けて視界にナニーと、リリィも混ざっているのを見て、少しクスっとなった。
「ああそうだ、あと一つ、あなたの執務室も用意しておきました」
「ああ、いいですね。招待状書きとか皆に手伝ってもらえそうで」
「これから夫人業務の引き継ぎをセバスから受けるかと思いますが、そこで行ってください」
「わかりました! ……ところで別棟なんですけど、私が好き勝手ににリフォームしちゃいましたが……」
アベル様はクスっと笑って。
「申し訳ありませんが、元に戻しますよ。あそこはそのうち、来客宿泊用施設の一つにしますので」
むむ、ちょっと寂しい。
ずっとあそこは私の城になると思っていたからなあ。
名残惜しい。
「そういえば、旦那様の別棟の部屋、作らずじまいになりましたね」
「これからは、あなたが本棟に来てくれますからね」
「ちょっとさびしいなぁ~、別棟暮らし僕好きだったょ~」
サメっちが机の上で転がりながら言った。
「そんなに楽しかったですか?」
「うん、なんだかんだね。愛着湧いてたし。あと旦那様のお部屋が別棟にできたら、そこに遊びにいこーって思ってたんだよ~」
「ああ、そうでしたね……では、代わりに先程の私の部屋に遊びに来てください、サメっち」
「わーい! いく~」
アベル様とサメっちの会話がほのぼのしている。
……なんか幸せだ!
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