第32話 大人の心得 森 秋彩(ボルダリング)

 先日のパリオリンピック、女子ボルダリングでもり秋彩あい選手(20歳)が第一課題でホールドに飛びついて届くことができずスタート位置にすら立てなかった問題、世界中で少し騒がれていますが、私も中継を見ていて憤慨した一人です。制限時間の間中、何度も何度もジャンプし続ける森選手。見ていて可哀そうで涙が出そうになりました。絶対、(リーチの短い)アジア人の得点を抑えるためにやったんだと、すごく怒りました。先ほどまで一番下のCopilotの回答を使って、その怒りをここに書こうと思っていました。

 しかし、つい先ほど森さんのコメントを見て猛省しました。自分、ガキじゃん💦


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 Number-webからの引用です。https://number.bunshun.jp/articles/-/862629


「最初のホールドをつかめない」スポーツクライミング、154cmの森秋彩20歳に不利なルートセットに批判も…本人は毅然「身長は関係ない」 ライター:松原孝臣


 8月10日、スポーツクライミングの女子ボルダー&リードの決勝が行われた。森秋彩あいは五輪初出場で4位入賞の成績を残した。昨年の世界選手権では銅メダルを獲得し、今大会でも表彰台の期待が集まっていた。


「なるべくしてなった成績だと思うので、素直に受け入れようと思います」

 試合を振り返り、森は語った。


 得意とするリードでトップに立つなど持ち味は発揮した。表彰台との差が生まれたのは、前半のボルダーで決勝進出8人中7位にとどまったところにある。そのボルダーが、試合中から大きな波紋を投げかけることになった。


 第1課題、森は何度もホールドに飛びつくがつかめず登れない。結果、ただ一人0点に終わった。完登者が多く出たこの課題で、大きく差がつくことになった。 森のパフォーマンスに原因があったわけではない。154cmと決勝進出者の中で最も身長が低い森にとっては、スタートのホールドをつかむことのできない高さに設定されたことが大きく響いた。

 ホールドの配置などは、「ルートセッター」と呼ばれる専門の担当者が設計する。特定の国籍に偏らないように、複数名がチーフのもとで担う。日本にも国際大会を担う資格を持つルートセッターたちがいる。


 ルートセッターにより思想は少し異なるかもしれないが、「簡単すぎず、難しすぎず」というおおまかなところは共通するだろう。誰でも完登できるものではなく、誰も完登できないものではない、ぎりぎりのラインを模索する。


 その上で、「強い者だけが登れるように」あるいは「より難しい課題をつくれば、選手のレベルを上げることにつながる」という考えを持つ人もいる。また、技術よりもフィジカル面、運動能力に重きを置いたルートセットが増えているのではないか、と指摘されたこともある。機械的に設定されるものではない以上、ルートセッターの主観は排除できない。そうした前提を踏まえた上で、今大会では全般にホールド間は広めの感があった。象徴的な現象が第1課題に表れたが、それに限らず、森にとってはシビアなルートセットも少なくなかったのではないか。


 意図的に森を狙ったということはまずないが、そもそもつかむことすらできない選手が出るような設定では、選手の技量を競う以前に勝負が決まってしまうのではないか……疑問の声が起きたのは自然なことかもしれない。


 それでも森は、毅然としていた。


 今大会に限らず、身長面で不利な場合は少なくない。その中で競ってきた。

「身長は関係ないと思います。リーチ的にも強度的にも、自分には不可能な課題にも挑戦して行けるところまで行こうと取り組んできたのが強くなれたひとつかなと思います」と、技術の向上に力を注いできた。


 毅然としているのは今回だけではない。

 森に注目が集まったのは東京五輪代表の有力候補に目された頃だ。日本の出場枠は「2」。2019年世界選手権で日本女子最上位の2位だった野口啓代が内定し、もう1名は対象とする選考大会を経て選ぶことになっていた。その世界選手権では野中生萌が5位、森は6位の成績を残していた。ところがのちに国際連盟が2人目として野中が出場権を獲得したと発表。日本はCASに提訴するなどしたが決定は覆らず、代表選考レースは突如、終わりを告げた。森の東京五輪への道も閉ざされた。


「オリンピック予選でフランスまで行ったのに無効になって、何のために行ったのかなと思ったし、ちょっともやもやしました」


 でも、怒りをぶつけることはなかった。


「自分がもっと世界選手権でいいパフォーマンスをしていれば巻き込まれなかったから、ネガティブな思考に陥るというのは違うかなと思いました」


 むしろ成績を意識し過ぎたことを反省し、コロナ禍の影響もあり、一時的に国際大会から遠ざかった。


「クライミングを楽しむことを忘れていたから、登りたくないときは登らない、心から登りたいと思ったときだけ登って、クライミング本来の楽しさというのを取り戻す。成績至上主義という観念を外していきたいなと思いました」


 高校を卒業するとプロとしてクライミングに専念する選手も少なくない中、2022年4月、筑波大学に進学した理由のひとつにもそれは関連している。


「プロになってそれを仕事にして生活するとなると、やっぱり成績を気にしてしまったりすると思います。成績が直接お金にもかかわってくるから、いい成績を残さないと、と考えてしまいます。そっちが軸になるのが嫌でした」


 学業、アルバイトに励みながら、それをハンディとせず、世界トップのレベルに伍して競ってきた。(三杉注:彼女、今でもパン屋さんでバイトしているそうです😮)


 成績よりも、大切にしていることがある。


「ちっちゃい頃から、あまり他人を気にしていなかったです。今もそうです。人にじゃなく、自分に負けるのが悔しいですね。だからクライミングでも、ほんとうに人に対して、というのではなく、試合の勝ち負けよりも壁に向き合うことがいちばんだと思っています」


 だから悔しさはある。


「まずは目標にしていたリードでトップ(ホールド)を獲ることができなかったのは悔しいですし、(ボルダーで)得意な(第2課題の)スラブを登れませんでした」


 悔しさはまた、力となる。


「悔しさを持ち帰るにはいちばんいい順位なので、素直に受け止めて頑張りたいです」


 トップを目指す挑戦は終わらない。


 *************** 引用終わり ***************



 このコメントを読んで、森さんの方が私よりよっぽど大人だと思いました。以下、アマチュア作家にも通じるものがあると思います。


 まず、際どい判定に不満を上げるのではなく、際どくした自分の実力の方に目を向けています。文句なく自分が選ばれる、読まれるように作品の質に目を向けるべき。


 また、成績に一喜一憂して気にするよりも「クライミング本来の楽しさというのを取り戻す。成績至上主義という観念を外していきたい」という考え方が素晴らしい。

 作家で言いますと、選考通過やPVや★が成績にあたると思いますが、そこに視点を置くのではなく、作品を創る楽しさを忘れてはいけないのだと思います。


 最後に、「人にじゃなく、自分に負けるのが悔しい……試合(コンテスト)の勝ち負けよりも壁(自分の目指す作品)に向き合うことがいちばん」


 ( )は作家の対象として言葉を置き換えています。自分の目指す作品が書けているのか? これが大事なのだなと反省しきりです💦


 ちなみに森さんは決勝8人で一人だけ第3課題を完投し、2種目目のリードは誰よりも高く登りました。得意なものは負けていません。見習います!


 今回、恥ずかしながら「大人の心得」これを森さんに教えてもらいました。


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 (ご参考)Copilotにルートセットについて聞きました。その回答です。


 ボルダリングのルートセットにおいて、不利な状況が生じることがあります。ルートセッターは、選手の安全性、公平性、適切な難易度、そして観客の盛り上がりを考慮してルートを設定しますが、特定のムーブに偏ったルートや身長による差が極端に出るルートが設定されると、一部の選手にとって不利になることがあります。

 例えば、身長が低い選手にとっては、リーチが必要なムーブが多いルートは不利ですし、逆に身長が高い選手にとっては、狭いスペースでのムーブが多いルートが不利になることがあります。

 ルートセッターはこれらの点に注意を払いながら、できるだけ多くの選手が公平に競技できるように工夫していますが、完全に不利をなくすことは難しい場合もあります。


 ボルダリングの競技において、身長差による不公平を減らすためにいくつかの対応策が取られています。以下はその主な方法です:


 多様なムーブの設定: ルートセッターは、リーチが必要なムーブだけでなく、テクニカルなムーブやパワームーブも取り入れることで、身長に依存しないルートを作成します。

 複数のホールドオプション: 特定のムーブが難しい選手のために、異なる高さや位置にホールドを配置することがあります。これにより、選手は自分に合ったムーブを選択できます。

 バランスの取れたルート設計: ルート全体を通して、身長に依存するムーブとそうでないムーブをバランスよく配置することで、特定の選手に有利または不利にならないようにします。

 フィードバックの活用: 選手やコーチからのフィードバックを基に、ルートの調整や改善を行います。これにより、実際の競技での不公平を減らすことができます。

 ルートセッターのトレーニング: ルートセッターは、身長差や体格差を考慮したルート設定の技術を学び、実践しています。

 これらの対応策により、できるだけ多くの選手が公平に競技できるように工夫されています。


 ※三杉:「いや、ちょっと今回のは本当に公平ですか?」

 (まだ言ってる💦 ガキです)


(2024.8.12) 

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