第8話 放課後の出来事

ミズキがアヤの教室に教科書を返しに来たのは、ホームルームが終わってからのことだった。


「アヤ、ありがとう!お陰で助かったよ」

「どういたしまして。それでさ…」

「お礼に、駅前のクレープ屋のクレープ、奢らせてよ」


あぁ、やっぱりミズキは優しいな。

私なんて、奢らせようとしていたのに。

ご両親の育て方がいいんだな、と思った。

早速、駅前のクレープ屋へ向かった。


公園で、カラスに注意しながら食べることにした。

幸い、学校の生徒はいなかったので、羽を伸ばして色々な話ができた。

その時、


「あ、おねーちゃんだ!」


その声の方を見ると、男の子が手を振っており、隣りにいた母親らしき人物が頭を下げていた。


「誰?弟さん?」

「この前、私が交番に連れて行った迷子の子」

「そうだったんだ…」


やっぱり、父が言っていた迷子の子を助けたアメコウの女子生徒って、ミズキだったんだ…。

ミズキは手を元気に振っていた。

なんだか、とても心が暖かくなった。



クレープを食べ終える。

電車は一緒でも、降りる駅が違うため、途中から降りた二人。

アヤは、ちょっと気になっていることがあった。

なんか…つけられている気がしたのだ。

アヤは、振り向いた。


「あの、どちら様ですか」


すると、電信柱の影から、頭が丸刈りの高校生がでてきた。

見たことがない学生だ。

多分、野球部で、制服は同じだった。

その子は、一言残して言った。


「お前、あいつとつるまないほうがいいよ」

「私の友達は、私が決めるからそんな事言われても困る」

「ミズキは、迷惑してんだよ、お前に」

「はい?」

「とりあえず、近寄んなよ!!」


捨て台詞を吐いて、その丸刈り男子は走って消えていった。



…意味がわからない。

でも、ミズキが本当は迷惑しているのなら、私に教科書を借りるだろうか?

一緒にクレープを食べに行くだろうか?


はぁ〜なんかひと悶着ありそうだなぁ…。



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