第7話 偏見

学校へ向かう電車が同じということもあり、アヤとミズキはよく鉢合わせた。

もちろん、電車の中では痴漢のこともあったため、二人でいるようになった。

他愛のない話をずっとしていた。

駅前の美味しいクレープの話、国語の先生の癖の話から、深爪しすぎてテンションが下がった、のようなくだらない話。

でも、それが高校生なんだなっと、感じた瞬間だった。

そして、ミズキがアヤの教室に来ることも珍しくなくなってきた。


「アヤごめん、教科書貸して!」

「偉人の顔に落書きして返すような人に、貸す教科書はありません」

「そこをなんとか〜」


ミズキがなむなむと、言いながら手を合わせてきた。

アヤは「なぜなむなむ?」と思いつつも、ミズキに教科書を貸した。


「ありがとう!!」


ミズキが、アヤの教室をあとにした。

すると、クラスメイトに囲まれた。


「黒川さんいっが〜い!あのミズキとつるんでいるなんて」

「ミズキ、あんな見た目だけどとてもいい子だよ」

「私、ミズキ苦手。スカート短くて、なんか馬鹿そう」


その言葉に、アヤは大きく目を見開いた。


「ミズキは勉強が得意ではないかもしれない。でも、あなたに言われる筋合いはなと思う。ミズキの全ても知らないで、そんな事言うのは間違っているよ」

「そ、そんな怒らなくても…」


そこで気がついた。

私、ミズキのことを貶されて怒ったんだ、と。

そして私は、ミズキが本当は優しい子なのも知っている。

しかしみんながみんな、それを知っているわけではない。

本当のミズキを知らないで、外見の偏見で言われるのに腹がたった。

始まりのチャイムが鳴った。


「授業を始めるぞ〜」


いつもより早く来てくれた先生に感謝しつつ、私はむくれた顔を隠すように教科書を開いた。

今日は、ちょっともやもやすることがあったから甘いものを学校帰りに食べよう。

そうしよう。

ついでに、ミズキを誘ってみようかな…。

そのことを考えると、さっきのもやもやが嬉しさに変わった。

むくれた顔はどこかに行き、なんのスイーツを食べるかを考えていた。

そんなことをしていたので、あっという間に放課後だった。





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