第6話 ゴミ捨て当番

今日は悪夢を見なかった。

いいことだ。


学校では、ミズキさんに会わなかった。

広い校舎なので、当たり前なんだけど…。

ギャルのお友達ができたのは、生まれて初めてなので、すれ違った時、どのように反応すればいいのかわからず、ずっと考えていた。

ノリの挨拶とか、強要されるのかな…。

未知数で想像もつかなかった。




「ゴミ捨てじゃんけんで決めよー」

「あ、私捨ててきますよ」

「黒川さん、いいの?」

「はい」


7人でじゃんけんなんてしていたら、永遠に決まらないだろう。

私はゴミ捨て当番に立候補して、ゴミ捨て場に1つの袋を片手に持ち、向かった。


旧校舎へ続く、長い渡り廊下で、3つのゴミ袋を一生懸命運んでいる人が居た。


ーーーミズキさんだ



後ろ姿で、わかった。

私は後ろから近づいて、声をかける。


「ミズキさん」

「あ、アヤ!久しぶり!」


屈託のない笑顔を向けてくれた。


「1個持つよ」

「え、いいの??」

「うん、私はゴミ袋1個しか持ってないから、片手空いてるし」

「…ありがとう」


ミズキさんは伏せ目がちで、言った。


2人で、ゴミ捨て場に行くのもなんとなく、距離感が掴まなかった。


「そういえば」


私は言った。


「ミズキさん、この間迷子の子を助けなかった?」

「え、あ、うん。

 でも、男の子が迷子だったから、交番に届けただけだから」

「いや、それでも素晴らしいと思った」

「そんなことをいったら、アヤは、私の救世主だよ。

 あの時は本当にありがとう」


逆にお礼をいわれてしまった。

目があって、クスッと笑った。

が、耐えきれずに笑った。

涙で目を滲ませながら。


「でも、なんでその事知ってるの?」

「あの、交番にいるお巡りさん、私の父なの」

「えっ、そうなの!?」

「うん、すごく感心してたし、ありがとうって言ってた」

「わー、嬉しいな…」


その話をしていたら、ゴミ捨て場に着いてしまった。

ゴミを捨てると、


「アヤ」

「?」

「私を見た目で判断しなくて、ありがとう」


ミズキさんにも、色々あったのかもしれない。


「…もちろんだよ」

「じゃあ、私、こっちだから」

「私は逆に戻る。じゃあ、またね」

「あ、あのさ!

 明日もこの時間に一緒にゴミ捨て行かない?」


一週間で持ち回りの掃除当番が変わる。

今日は火曜日で、残り3日間しかない。

返事は、


「勿論です」

「やったー!じゃあ、明日、ね?」


手を振りながら、各々戻った。

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