第4話 みため

「ただいま~」

「アヤ、おかえりなさい」


私は家路についた。

専業主婦の母は毎日温かいご飯を用意してくれる。

本当に嬉しいことだ。

制服から部屋着に着替えて、居間に戻ると父がいた。


「あれ、お父さん、今日早いね」

「あぁ、今日は残業せずに帰ってきたからな」


その後ろで母が嬉しそうに微笑んでいた。

晩ごはんを囲み、「いただきます」をする。


「そういえば今日、アメコウの制服を着た女の子が、交番に来たぞ」

「…タバコ?」


交番にお世話になったのかと思った。

最近、一部の生徒がタバコを吸っているのではないか、という憶測が飛んでいるのだ。


「タバコではない、人助けだ」

「人助け?」


意外な言葉だったので、そのまま聞き返してしまった。


「あぁ、アメコウのギャルっぽい女の子が、迷子の子を交番まで連れてきてくれてな。見た目で人を判断してはいけないんだと、再認識した」

「ふーん、そうだったんだね」


私はおかずを箸でつつきながら、愛想なく言った。

父はちょっと、困惑した表情だった。






ご飯を食べ終わったら、自室に向かった。

テストが近いわけではなく、明日の予習をしなければいけないためだ。

重い辞書を開く。

勉強は嫌いではないが、それよりも私は柔道をする方が性にあっている。


私は、人と上手に付き合うのが苦手だ。

相手の気持ちなんて読めるはずない。

それなら、答えの必ずある勉強をしている方がマシだ。

正直、ミズキさんを助けた事は、自分の中ではイレギュラーだった。

でも、動かずにはいられなかった。

多分、父の血ゆずりの正義感が働いたのだろう。


アメコウの人助けしたギャルって誰なんだろうな。

ミズキさんかな?

いや、アメコウで私が知っているギャルはミズキさんしかいないだけであって、他にもいっぱい、ギャルはいる。

ただ、ミズキさんは明るさの中に優しさも秘めている気がしたから。


ミズキさんだったら嬉しいな、ただ、それだけだった。

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