第10話

思わず聞き返してしまったが、結ちゃんは真剣な眼差しでこちらを見つめてきているので冗談ではないことだけは分かった。

(え?この子本気で言ってるの?)

と思いながらも僕は彼女の目を見ながら答えることにした。

「今はまだできないけど、将来的にはそれも考えるよ」

僕がそう答えると彼女は嬉しそうに微笑んでくれたのだがすぐに顔を曇らせてしまったので心配になった僕は彼女のことを抱きしめたのだ。

すると安心したのか少しずつ力が抜けていくのが分かったためしばらくそのままの状態を維持しているとついに眠りについてしまったのだ……。

「おやすみ、結ちゃん」

僕は優しく声をかけながら彼女の頭をゆっくりと撫でてあげることにした。すると彼女は気持ち良さそうな表情を浮かべてくれていたので僕も嬉しくなり自然と笑みが溢れてきた。

すると不意に結ちゃんが目を開けたので僕が慌てて手を引っ込めようとするよりも早く彼女が僕の手を掴んできたため、僕は動けなくなってしまったのである……。


『もっと撫でて』


とおねだりしてくる彼女の可愛さに抗えずに再び頭を撫で始めたのだが、途中からどんどんエスカレートしていき最終的に耳まで撫でてしまったが、彼女は嫌がるどころかむしろ喜んでくれたので安心した。


その後、僕は結ちゃんの頭を撫でながらテレビを見ているうちにいつの間にか眠ってしまったようで目が覚めたら朝になっていた……。

「おはよう結ちゃん」


と言って頭を撫でてあげると彼女は嬉しそうな表情を浮かべてくれるので僕も嬉しくなり彼女のことを抱き寄せたのだが、途中で我に返り慌てて離れることになった……。


(やばい、つい癖でやってしまったけどこんなことしたらダメだ)

と反省しつつ改めて彼女に挨拶をしたのだった……。それからしばらくして朝食を食べた後、僕らは公園へと向かうことになったのだが、その道中で結ちゃんが僕に話しかけてきた。


『お兄ちゃん……手繋いでもいい?』


と上目遣いで言われたので僕はドキッとしたが平静を装って了承することにした。

結ちゃんの手が僕の手に重ねられたのでドキドキしながら歩き始めると不意に彼女はこんなことを言ってきたのだ……。

『ねえお兄ちゃん、今日は一緒にお風呂入ろ!』


(はい?)

予想外過ぎる言葉に僕は驚きつつも彼女に聞いてみることにしたのだ……。

「いやいやさすがに2人で入るのはまずいよ」

この間のやり取りの後な訳だし

理性が保てるかどうか心配になる。すると結ちゃんが不満そうに頬を膨らませていたので


『そんなに嫌?』


と聞かれたので僕は慌てて否定した。

(いやいやいや、嫌なわけがないですけど?むしろ嬉しすぎますけど?)

しかし、さすがに2人きりでお風呂に入るのはまずいだろうと思い断ろうとしたのだが……結ちゃんは僕の心を見透かしたかのようにこう言ってきたのだ。


『大丈夫だよお兄ちゃん!だってお兄ちゃんは私の彼氏だもんね!』


という言葉に僕は思わずドキッとしてしまったが何とか平静を装うことに成功した。

でも心の中では

(か、彼氏!?僕が結ちゃんの!?)

まあ、あのやり取りの後ならそうかもしれないと僕は思った。

だが、結ちゃんは納得いかないらしく更に言葉を重ねてきたのだ。


『それとも……私のこと嫌いになった?』


と今にも泣きそうな表情で聞いてくるものだから僕は慌てて弁解した。

「そんなことないよ!ただあのお風呂は狭いから2人で入るのは無理があると思っただけだよ」

(本当はそれだけじゃないけどね)

「そ、そうなんだ」

(よかったぁ)

と安堵している結ちゃんの姿を見ていると僕まで安心してしまうのだった……。


それからしばらくの間、僕たちは無言のまま歩いていたのだが、突然結ちゃんが立ち止まったかと思うとこちらをじっと見つめてきたので僕は

「どうかしたの?」

と聞いてみたところ、彼女は俯きながらも小さな声で答えてくれた。


『お兄ちゃんが私と入りたくないなら……せめて一緒に遊んで欲しいなと思って』


それを聞き僕は少し考えてから答えを出した。それは……結ちゃんと2人で遊ぶということだったのだが……

(まあ仕方ないよね)

と自分を納得させながらも覚悟を決めることにしたのだ。

(よし!こうなったらとことん付き合うしかないか)


「いいよ、何して遊ぼうか?」

と尋ねると彼女は満面の笑みで喜んでくれたので僕も嬉しくなった。その後、僕たちは色々な遊びをして遊んだのだが、意外と時間が経ってしまったようであっという間に夕方になってしまった。


(そろそろ帰らないとね)と思い結ちゃんの方を見ると既に眠そうな様子だったので僕は慌てて彼女をおんぶすると家路につくことにしたのだ。帰りの途中で寝てしまった結ちゃんを起こさないように気をつけながらゆっくりと歩いていたのだが結局起きてしまい騒ぎ立てることになるとはこの時は思いもしなかった……。


朝起きると結ちゃんが僕の上に乗っかって寝ていたのだが、「重い」と言おうとした瞬間、突然結ちゃんが目を覚まして僕に抱きついてきたのだ。


『お兄ちゃんおはよう!』


(朝から元気だなぁ)

と思いながらも僕は優しく頭を撫でてあげることにしたのだが、結ちゃんは気持ちよさそうに目を細めてくれるのでもっと撫でてあげたくなるような衝動に駆られてしまう。

(やばいなこれ)

と思いつつもしばらく頭を撫で続けていたが彼女は満足したような表情を浮かべながら僕から離れていった。

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小説家を目指して みなと劉 @minatoryu

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