第2話
僕は冷蔵庫を開けて中身を確認する。
中には昨日買っておいたお弁当が一つだけ残っていた。今日はこれを食べることにしよう。そう判断してお弁当を手に取ると電子レンジで温める。
そしてホクホクのご飯を頬張りながらテレビをつけると、朝の情報番組を見ながら今日の予定を考えていた。
「結ちゃんと何を話そうかな……。とりあえずご飯を食べ終わったら連絡してみよう」
そんなことを考えつつ、僕は朝食を食べ終えると自分の部屋を出たのだった。
「お、お邪魔します……」
「いらっしゃい結ちゃん。ささ、上がって」
翌日。結ちゃんは僕の部屋に上がり込むとキョロキョロと周囲を見回していた。
その仕草はとても可愛いけど……どうかしたのかな?僕はお茶を用意しながら彼女に問いかけた。「何か気になることでも?」
すると彼女は少し恥ずかしそうに俯きながら言った。
『こ、この部屋に来るの久しぶりだから……ちょっと緊張してるだけ』
そう言われて納得した。確かに以前彼女がこの部屋を訪れた時は彼女の撮影会をしたんだったよね。なるほど、それでこの部屋をジロジロ見ていたのか。
「結ちゃん、準備できたよ。はいどうぞ」
僕は結ちゃんの前にお茶を置くと自分の机の前に座った。すると彼女もおずおずといった感じで対面に座った。そして僕たちは互いの目を見て頷くと、同時に口を開いた。
「それじゃぁ」
『おにいちゃんのデビュー作を読ませていただきます!』
……おお! 見事なまでに台詞が被ったね!これならもう怖いものはない。僕は鞄から原稿を取り出すと彼女に差し出した。
「これが僕のデビュー作だ。結ちゃんに最初に読んでほしいと思って持ってきたんだ」
『ありがとうお兄ちゃん。嬉しい!』
彼女は目を輝かせながら原稿を受け取ると、早速読み始めた。その表情は真剣そのもので、とても可愛いけど……なんか怖いなぁ……。
そう思いながらも彼女の反応を待つこと数分、ようやく読み終えたのか結ちゃんは顔を上げ、僕に話しかけてきた。
『うん!面白いね!お兄ちゃんの才能を感じるよ!』
「ほ、本当!?良かったぁ……」
「でも……」
『ん?どうかした?』
結ちゃんの表情が急に暗くなったのを見て僕は思わず尋ねてしまう。すると彼女は暗い声で続けた。
『この小説って……恋愛小説、だよね?』
「……へ?」
『だってお兄ちゃんが書いたのって、主人公が女の人に恋するお話だったじゃん!それってつまりそういうことなんだよね!?』
そう言うと彼女は涙目で僕を睨みつけてきた。まさか彼女がこんな反応をしてくるとは思わなかったので狼狽えていると、結ちゃんはさらに続けて叫んだ。
『どうして!?お兄ちゃんには私がいるのに!どうして別の女の人に恋してるの!?私じゃダメだったの!?』
「ちょ、ちょっと待ってよ結ちゃん!僕はただ君の小説が読みたくて書いただけで……」
『嘘つかないで!!』
「ほ、本当だってば!」
『嘘つき!』
そして結ちゃんは泣き出してしまった。どうすればいいんだ……?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「落ち着いたかい?」
『うん……。取り乱してごめんなさい……』
ようやく落ち着きを取り戻した彼女に対して、僕は恐る恐る話しかけた。
「その、ごめんね? 結ちゃんがそこまでショックを受けるとは思ってなかったんだ」
『ううん……私こそごめん……。お兄ちゃんを困らせるつもりはなかったの……』
彼女は俯いてそう言った後、何かを決意したような表情で立ち上がると僕の方へ歩み寄ってきた。そしてそのまま僕の隣に腰掛けるとそっと僕の手を握った。
結ちゃんの手は小さくて柔らかくて温かい感触だった……って、そうじゃない!これは一体どういう状況!?突然のことで頭が真っ白になっていた僕だったが、すぐに正気を取り戻すと慌てて彼女に声をかけた。
「ゆ、結ちゃん?いきなりどうしたの?」
『私じゃダメなのか確認したいの……』
「え?それってどういう……」
僕が問いかけようとするよりも早く彼女は僕を押し倒すと馬乗りになって僕の身体を弄り始めた。
「ちょ、ちょっと結ちゃん!?何してるの!?」
『確かめてるの……!お兄ちゃんが本当に私のことが好きなのか!』
そう言い捨てると彼女は今度は僕の服を脱がせようとしてきた。
「わー!ストップ!ストップ!」
僕は慌てて抵抗しようと試みるが、結ちゃんの力が強くて抜け出すことができない。どうしよう……このままじゃマズい!
『大丈夫!痛いことはしないから!』
「そういう問題じゃないよ!!」
なんとか逃れようと身を捩るが、彼女は完全に僕の上に跨っているので身動きが取れなかった。
「落ち着いて結ちゃん!一旦話をしよう!」
僕は必死に呼びかけるが彼女は聞く耳を持たない様子だった。
『私はお兄ちゃんを愛してるよ?でもお兄ちゃんは違うんだよね?だから私以外の女に心を奪われちゃったんでしょ?』
そう言うと同時に、彼女の手が僕の胸に触れた。その瞬間、ゾクッと背筋が震えた。
『やっぱり……!お兄ちゃんは私以外の女に欲情してる!許せない……絶対に許さない!』
そして彼女は僕の首筋を舐め上げたかと思うと、今度は耳を甘噛みしてきた。
「ひゃん!」
突然の刺激に思わず変な声が出てしまうと、それを聞いた結ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
『ふふ♪可愛い声出ちゃったね?もっと聞かせて?』
「ゆ、結ちゃん……お願いだから落ち着いてよ……」
『やだ♪』
彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべながら言うと、今度は僕の服を脱がせ始めた。
「だ、ダメだよ結ちゃん……。こんなの間違ってるよ……」
『どうして?私はお兄ちゃんのことが好きなだけだよ?だから何もおかしくないもん』
「そ、それはそうだけど……」
確かに結ちゃんの言う通りかもしれない。だけどこれはいくらなんでもやりすぎじゃないか……?
僕が戸惑っている間にも彼女の手が僕の身体に触れてくる。僕は必死に抵抗しようとしたが身体に力が入らない。その間にも彼女はどんどん脱がせようとしてくる
僕は涙を流した。
そしたら彼女は我に返ったように辞めてくれた。
「ご、ごめんお兄ちゃん……」
結ちゃんは慌てた様子で僕の上から降りた。
僕はまだ心臓がバクバク言っていたが、どうにか呼吸を整えてから彼女に話しかけた。
「だ、大丈夫だよ……気にしないで……」
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