第14話 出発

明日は待ちに待った夏の合宿りょこうだ。

僕が寝る前の荷物の最終チェックをし終わってちょうど寝ようと思っていたときに電話がかかってきた。

誰だろう?そう思いながら僕は電話に出た。

「もしもし、涼くん今時間大丈夫?」

電話をかけてきていたのは佐藤さんだった。

「ちょうど寝るところだったから全然時間大丈夫だよ」

「じゃあ、カメラをオンにしてくれない?」

「うん、いいけど。なんでテレビ電話?」

「涼くんの顔が見たくて」

でも、明日会えるじゃんとツッコミそうになったが、僕もなんとなく佐藤さんの顔を見たかったのでカメラをオンにした。

すると佐藤さんもカメラをオンにした。

画面の先にはパジャマ姿でベッドに寝ている佐藤さんがいた。

「涼くんも寝ながら電話しようよ。もう寝るところなんでしょ」

僕も眠くてもう横になりたかったので、佐藤さんの提案に乗ることにして、ベッドの上に横になった。

「こうして寝ながら電話してるとなんだか同じベッドの上で一緒に寝てるみたいだね」

そんなことを言われると頭の中がピンク色に……

「あっ、今涼くんエッチなこと考えたでしょ。もう、男の子はすぐそういう事考えるんだから」

「佐藤さんがそういう事言うからだよ」

「ほんとにエッチな事考えてたんだ〜」

しまった。今は否定すべきだったのにしれっと肯定するようなことを言ってしまった。


「そんなことより明日からの合宿りょこう楽しみだね」

僕は強引に話を変えた。

「1日目は自由行動で2日目は海に遊びに行って、3日目は夏祭りに行くんだよね?」

「そうだよ。僕は2日目の海に遊びに行くのが一番楽しみかな?」

「涼くん、水着を見るの好きだからね〜」

「ちがうわ!!」


「あしたは岸本部長と岸本部長のお父さんが8時に車で迎えに来てくれるんだよね」

「そうだよ」

そう言うと佐藤さんは大きなあくびをした。

「僕ちょっと歯を磨いてくるよ」

「わかった。じゃあ待ってるね」


僕が歯を磨き終えて戻ってくるとスマホの画面には佐藤さんの寝顔が写っていた。

「かわいい」

僕は思わずそう言ってしまった。

すると、佐藤さんの顔が少し赤くなったような気がした。

まあ、気のせいだろうけど。

僕も眠いし電話を切って寝………



「…くん!涼くん!!起きて!!!」

僕が佐藤さんの声に気づいて時計を見ると7時30分だった。

「電話を繋いだまま熟睡しちゃった」

「私は一睡もできなかったよ!!」

「なんで?」

「涼くんのいびきがうるさかったから」

「ごめん」

いびきがうるさかったなら電話を切ればよかったのに、しかも一睡もできなかったと言ってたけど僕が歯を磨き終わって帰ってきたときは寝てたじゃないか。

そんなことを考えながらぼーっとしていると佐藤さんに

「ボーっとしてないで。早く支度しないと遅れちゃうよ」

と急かされた。


結局、ギリギリ岸本部長が迎えに来るのに間に合った。

「佐藤、えらく眠そうだけど大丈夫?」

部長が心配そうに佐藤さんに聞いた。

僕のいびきがうるさいことが漫画研究部全体に広がってしまう……

「今日からの合宿りょこうが楽しみすぎて眠れませんでした」

佐藤さんは僕のいびきがうるさかったことを言わなかった。

ありがとう、佐藤さん。

「そうかそうか、私の立てたこの素晴らしい合宿がっしゅくの計画が楽しみすぎて眠れなかったか」

「あはは、部長ってやっぱり自己評価高いですね」

佐藤さんはそう言って笑った。


「さあ、合宿がっしゅくに出発だ!!」

岸本部長は恥ずかしさを誤魔化すようにそう言った。

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