第13話 プール②

このお話は佐藤さん目線の部分と山本目線の部分があります。


◆佐藤さん目線◆


「噂によると流れるプールで親友と一緒に手を繋ぎながら1周したら一生仲良くいられるらしいよ」

そう森崎さんが言った。

私もこの噂を知っている。

この噂に続きがあることも。

①親友と一緒に流れるプールを手をつなぎながら1周すると一生仲良くいられる。

②好きな人となら結ばれる。

③そして恋人とならいずれかはその人と結婚できる。

これがこの噂の全てだ。

森崎さんが②を言わなかったのは私への配慮で③を言わなかったのは森崎さん自身のためだろう。

この噂があったから私と森崎さんはこのプールにしようと提案した。


「じゃあ着替え終わったら集合ね」

私はそう言って涼くんと林田くんと別れた。

「森崎さんは林田くんと一緒に流れるプールに行くの?」

「もちろん。佐藤さんも行くんでしょ」

「行けたらいいんだけどね。誘う勇気が出せるかどうか…涼くんから誘ってくれたらいいんだけどね」

「大変だね。頑張って!」


私はどうやって話しかけようかと考えながらカバンの中の水着に手を伸ばして、取り出した。

「やっぱり恥ずかしい」

私はそうつぶやいた。

勢いのまま買ってしまったが、やっぱりこれを着るのは恥ずかしい。

「山本くんはきっと喜んでくれるよ」

「そうかなあ?」


そんな事を話していると着替え終わったので涼くんたちとの集合場所に向かった。

すると涼くんたちが待っていた。

「待った?」

「いや、全然」

森崎さんと林田くんはカップルの待ち合わせの定型文のような会話をしている。

「早くプールに入ろう!!」

涼くんは子供のように言った。

涼くんってちょっと子供っぽいとこあるんだよね。

まあ、そんなところも好きなんだけど。


「私達先に流れるプール行ってるから」

そう言って森崎さんは林田くんと一緒に流れるプールの方に走っていった。

「私達も流れるプールに行こうよ」

私は勇気を出して涼くんに言った。

「そ、そうだね」


どうやって涼くんと手を繋ごうかと考えているうちに流れるプールに着いた。

手を繋ごうと誘う勇気が出ないままプールに入ってしまった。

「混んでるね。だ、だからはぐれないように手を繋いどこうよ」

プールに入ると涼くんはそう言った。

「そうしよう!」

助かった。涼くんが手を繋ごうって言ってくれなかったら手を繋げないままになるところだった。


「今日の水着、前に買ったやつなんだ。どう?」

私は勇気を出して聞いてみた。

「いいんじゃない」

今、適当に言ったな?

しかも、さっきからなんか私の方を見ないようにしている感じがするし。

「ちゃんと見てから言ってよ」

「か、かわいいと思うよ」

今度はちゃんと私の方を見て涼くんはそう言った。

「でも、あんまり着ないでほしいな」

「なんで」

「ちょっと大人っぽすぎると思う……」

露出が多すぎたか…

やっぱり森崎さんが言ってたこと間違ってるじゃん。


そのまま何も話さないまま流れるプールを一周した。

すると、森崎さんと林田くんがプールの外で待っていた。

「山本、ウォータースライダー行こうよ!」

プールの外から林田くんが涼くんにそう言った。

「いいね!」

涼くんがそう言ってプールを出たので私もプールを出た。

涼くんが林田くんと一緒にウォータースライダーに言ったあとに私は

「明日、水着を買いに行こうよ」

と、森崎さんに言った。



◆山本目線◆


「噂によると流れるプールで親友と一緒に手を繋ぎながら1周したら一生仲良くいられるらしいよ」

そう森崎さんが言った。

僕もこの噂を知っている。

でもこの噂ってもっと長かったよな?

①親友と一緒に流れるプールを手をつなぎながら1周すると一生仲良くいられる。

②好きな人となら結ばれる。

③そして恋人とならいずれかはその人と結婚できる。

この噂はこの3つがセットだったと思うんだけど……

なんで全部言わなかったんだろう?

そうか、森崎さんは林田と手を繋なが流れるプールを1周しようと思ってるのか。

僕も佐藤さんと手を繋ながら1周しようかな。

そんなことを考えているとプールに着いた。


着替え終わって佐藤さんたちと合流した。

佐藤さんはなんだか露出の多い水着を着ていた。

そんな露出が多い水着を着られると頭の中でいろんなことを想像しちゃって佐藤さんと目が合わせられないよ。


「待った?」

「いや、全然」

森崎さんと林田くんはカップルの待ち合わせの定型文のような会話をしている。

こんなことを聞いていると佐藤さんと一緒にこんなことを言い合えるような関係になりたいなと思う。

そんなことを考えていると佐藤さんに一緒に流れるプールを1周しようと言えるのか不安になってきた。

「早くプールに入ろう!!」

不安を吹き飛ばせるように僕は元気よく言った。


「私達先に流れるプール行ってるから」

そう言って林田は森崎さんと一緒に流れるプールの方に走っていった。

「私達も流れるプールに行こうよ」

そう佐藤さんが言った。


「混んでるね。だ、だからはぐれないように手を繋いどこうよ」

僕は思い切って佐藤さんにそう言った。

僕たちは手を繋ながら流れるプールに入った。


「今日の水着、前に買ったやつなんだ。どう?」

そう佐藤さんに聞かれた。

でも、佐藤さんの方を見ることができなかったので、佐藤さんの方を見ずに

「いいんじゃない」

と僕は佐藤さんに返した。

「ちゃんと見てから言ってよ」

佐藤さんの方を見ていないのがバレたか。

仕方ないので僕は佐藤さんの方を見て

「か、かわいいと思うよ」

と言った。

次もこんなに露出が多い水着を着られると佐藤さんの方を見れなくて困るので

「でも、あんまり着ないでほしいな」

と佐藤さんに言った。

「なんで」

「ちょっと佐藤さんには大人っぽすぎると思う……」


その後なんだか気まずい空気が流れた。

佐藤さんに子供っぽいっていう意味に捉えられちゃったのかな?

そんなことないのに……


そのまま何も話さないまま流れるプールを一周した。

すると、林田と森崎さんがプールの外で待っていた。

「山本、ウォータースライダー行こうよ!」

プールの外から林田がそう言った。

僕は気まずい空気から脱出したかったので林田と一緒にウォータースライダーに行くことにした。

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