第11話 けんか

このお話は佐藤さん目線の部分と岸本部長目線の部分があります。


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◆佐藤さん目線◆


ほんとに信じられない。

なんで涼くんはあんな本を持ってるの?

なんで涼くんはあんな勘違いをするわけ?

本に関しては涼くんも男の子だから仕方ないのかもしれない。

でも、本棚に入れっぱなしって……隠す意思は見せてよ。

恥ずかしくて部屋を飛び出しちゃったじゃん………


涼くんが謝ってくるまで絶対に許さないんだから。

そう私は心に決めたが、目からは涙がこぼれた。

なんで泣いてきちゃうんだろう。

怒っているだけで悲しい訳ではないのに。


〜翌朝〜

結局、何回も涼くんに謝るLINEを送りそうになってしまった。

でも、謝りたいという気持ちをギュッと心のなかに閉じ込めた。だって涼くんが謝ってくるまで許さないって決めたんだもん。


「あっ」涼くんが私の視界に入ったときに思わずそう言ってしまいそうになった。

涼くんもこっちをちらっと見た。涼くんも私に気づいたようだ。


あれっ、話しかけてくると思ったんだけどな。

涼くんは話しかけてこない。

そうこうしているうちに、学校についてしまった。


その後も涼くんと一言も話さないまま部活の時間がやってきた。

部室に入るともう他の人はみんな揃っていた。


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◆岸本部長目線◆


佐藤が部室に入ってきた。ということは山本も……あれっ

山本は少し遅れて入ってきた。

もしかして何かあったのかな?


十分くらい経ったが、山本と佐藤は私達には話しかけても2人で話しかけている様子はない。

いつもならあんなに楽しそうに話しているのに……

これは絶対に何かあったな。


部活がおわり山本と佐藤が部室を出ていった。

「みんな!」

私がそう言うとみんなは私の言いたいことを察したように

「はい」と言った。

「みんなもわかっているみたいだけど今日、佐藤と山本の様子がおかしかった。これは由々しき事態です。なんとかしてこの事態を解決しないとこの部内の空気が悪くなりこの部の長所であるアットホームさが失われてしまいます。。そこでこの事態を解決するためにみんなで協力して行動を起こしましょう」

みんなは「はい!」とキリッとした声で答えた。

「じゃあ私と林田で何があったのか探ってきます」

そう森崎が言った。

「ありがとう。じゃあまた明日放課後集まって会議をしよう」

そう私が言うとみんなはまた「はい!」と元気よく答えた。


翌日になり、またみんなは部室に集まった。

「森崎と林田、どうだった」

「僕のせいでした。すいません」

と、林田が突然謝ってきた。

「どういうこと?」

「僕が山本に預かってもらっていた本が見つかったようで………」

「本ってどんな本?」

そう私が聞くと林田は急に冷や汗をかき始めた。

「えーと、、、、」

すると森崎がしびれを切らして

「エッチな本ですよ!!」

と言った。

「へーそうなんだ………えっ」

衝撃的すぎて一瞬気づかなかった。

今、エッチな本って言ったよな?

これについて年上として追及すべきなのか?

でも、ここで追及してしまうと森崎まで怒り出してしまいそうだ。

幸い、森崎も怒っていないようだしこのことはスルーしておこう。


よく考えてみると林田が原因だったことは私達にとってラッキーなのかもしれない。

だってあの本が林田のものだと言えば佐藤さんも納得してくれるかもしれないし。

「林田にお願いがあるんだけど」

「どんなお願いですか?」

「佐藤に山本の家にあった本は自分のだって説明して謝ってほしい」

「僕が謝るんですか」

林田は不満そうだ。

でも森崎が林田を睨んでいるのに気づいたのか、林田は

「佐藤さんに謝ってきます」

と言って部室を飛び出していった。

これでこの問題が解決したらいいけど……


翌日、私は部室に入ってくる佐藤たちを待っていた。

すると、佐藤が部室に入ってきた。山本と一緒に…

2人は今までのように仲良く話している。

よかった…2人は仲直りできたようだな、そう思っていると佐藤が話しかけてきた。

「部長が林田くんにあの本が林田くんのものだって言うように促してくれたんですね。ありがとうございます」

部長として当然のことだよ」

そう私が言うと部が笑いに包まれた。

「部長って自分のことできる部長だと思ってるんですね(笑)」

「自分に自信を持つことは悪いことじゃないよ」

私は部員のみんなに笑われて恥ずかしかったがいつもの日常が戻ってきてどこか嬉しかった。

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