第10話 勉強会
僕は買い物の帰りに突然、佐藤さんに一緒に勉強しようと言われてそうすることになった。
そして今日、佐藤さんが僕の部屋にやってくる。
佐藤さんが来るから部屋を片付けないと、そう思って僕は部屋の掃除を始めた。
とりあえず床に散乱しているものを片付けよう。
ふう…床に落ちているものを拾うだけでも大仕事だな。
一応よく漫画にあるベッドの下に隠してあったエッチな本を発見されるという展開を避けるために、ベットの下も見ておこう。
まあなにもないのだけど…
僕はベットの下を見た。
するとなにか本のようなものがあった。
まあ、どうせ何かの本がベットの下に滑り込んだだけだろう。
僕はその本を引っ張り出して題名を見た。
こ、これは……………
林田に親に見つかったらいけないからと預けられていた本じゃないか。
林田め。なんてものを預けてくれているんだ。
とりあえずどこかに隠さないと、こんなものを佐藤さんに見つけられるとどんなことになることやら…
こういうのは意外と普通のところにおいていたほうが見つかりにくいって漫画に書いてあった。
よしここに隠そう。そう思って僕は本棚にその本を隠した。
ゴミ箱の中に入っていたものも捨てた。
これで準備万端だ。
「ピンポーン」と家のインターホンが鳴った。
ドアを開けると佐藤さんがいた。
「おはよう。今日はいっぱい勉強しようね」
「えー」
そんな事を言いながら佐藤さんと僕は部屋に入った。
「涼くんの部屋に来るの久しぶりだな〜昔からあんまり変わってないね」
「漫画がちょっと増えたくらいであんまり変わってないよ」
「漫画が増えたんだ。ちょっと読んでから勉強しようかな」
しまった。自分から話を本棚の方にふってしまった。
今本棚を見られるのはまずい。
「でも、今日は勉強に集中したほうがいいんじゃない?」
「そうだね」
なんとか佐藤さんは納得してくれた。
「じゃあ僕は飲み物を取ってくるよ」
そう言って、僕は部屋を出た。
危なかった。
あともう少しであの本が見つかるところだった。
さあ、ジュースを用意して部屋に戻るとしよう。
「ガチャッ」っと玄関から音がした。
慌てて玄関に向かうと、お母さんがいた。
あれっ、今日は仕事だって言ってたのに…
「今日は仕事じゃなかったの?」
「急遽仕事が休みになっちゃって…」
「そうなんだ」
「この靴」
そうお母さんは言って、佐藤さんの靴を指さした。
「彼女でも連れ込んでるの?もう涼もそんな年になったのね。じゃあお母さんは邪魔になると悪いからどこかに出かけるよ」
お母さんはウフフと笑いながらそう言った。
「か、彼女じゃないよ。さっちゃんだよ」
僕は昔、佐藤さんのことをさっちゃんと呼んでいた。でも中学になってその呼び方は恥ずかしいから変えたが、お母さんの前ではそのままになっている。
「そうなんだ。さっちゃんがうちに来るのも久しぶりね。せっかくだからうちで夕飯を食べないか聞いてきて」
「わかった」
そして僕は部屋に戻った。
そこには隠しておいた本を持った佐藤さんがいた。
見つかったか。
佐藤さんの頬がどんどん赤くなる。
「りょ、りょ、涼くんもお、お、男の子だから、こ、こ、こういうのにも興味あるよね………」
「ち、違う!そ、それは林田に預かってって言われてたやつで………そんな物は置いておいて勉強を始めよう!」
「うん」
佐藤さんはコクリと頷いた。
僕の部屋はとてもシーンとしていて静かだ。
でも、僕の心はドクドクと騒音を出している。
突然そんな静かな世界にお母さんが入ってきた。
「さっちゃんは今日、夕飯食べて行く?」
「家で用意されているので今日は家に一回帰って家で食べてからもう一回戻ってきます」
「わかったわ。じゃあ勉強頑張ってね」
そう言ってお母さんは僕の部屋から出ていった。
「夜はなにの勉強するの?」
「疲れたから、副教科の勉強をしよう。うーん、そうだな、保健体育の勉強とかはどう?」
保健体育の勉強?まさか夜は2人で…………
そ、そんなわけがない。
佐藤さんは普通に保健体育という教科の勉強をしようって言っただけだ。
煩悩よ消えろ!!
そうは思っても僕の頭からは煩悩は消えない。
どんどん顔が赤くなっていく。
「なんでそんなに恥ずかしがるの?ま、まさか…保健体育ってそういう意味じゃないから!そ、そんなことを想像するなんて、涼くんの変態、エッチ」
佐藤さんはそう言って部屋を飛び出していってしまった。
そこまで言わなくてもいいじゃないか……
佐藤さんがあんな勘違いするようなことを言うから悪いんだ…………
−−−
次話に続く
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