第8話 買い物
「ピコン」とスマホから通知音がした。
確認してみると佐藤さんからのLINEだった
「買い物の日は今週の日曜日でいい?」
「いいよ」
「じゃあ日曜日の朝9時くらいに迎えに行くね」
「わかった」
「涼くんの家遠いから遅れるかも」
「僕の家佐藤さんの家の目の前でしょ」
「それでも遅れるかも」
つまり寝坊するかもっていうことだな
〜日曜日〜
今日は佐藤さんと一緒に買い物に行くからちょっとおしゃれな服にしようと思って僕はクローゼットを開けた。
しかし、そこにはおしゃれな服なんてものはなかった。
そこにあったのはTシャツだけだった。
まさか女子と一緒に出かけるなんてことがあるとは思っていなかったので、僕はTシャツしか持っていなかった。
仕方ないのでおしゃれでもかっこよくもない普通の服装にした。
9時になっても佐藤さんは迎えに来なかった。
9時10分になってインターホンが鳴ったので玄関を開けるといつもの何倍もかかわいい佐藤さんが立っていた。
「遅れてごめんね。ちょっと服選びに手間取っちゃって。この服装どう?」
「か、かわいいと思うよ」
「そんなに顔を真っ赤にしちゃって。もしかして私のかわいさに見とれちゃった?」
「ソンナコトナイヨ」
図星だったので僕は焦って片言の日本語のような感じで答えた。
なんだか上機嫌な佐藤さんにからかわれながら、近くのショッピングモールに向かった。
ショッピングモールにつくと僕は佐藤さんに連れられて佐藤さんお気に入りの洋服店に入った。
佐藤さんは服を探し始めた。
「これとかどうかな?」
「い、いいんじゃない」
僕にはおしゃれなどわからないので答えを誤魔化した。
これをこの後何度か繰り返した。
「かわいいのがいっぱいあって決められないから試着してみようかな」
「じゃあ外で待ってるよ」
そう言って僕は店から出ようとした。
「まって、試着してみてどうか聞きたいから試着室の前で待っててよ。そうじゃないと今日一緒に来てもらった意味がないじゃん」
「わかった。じゃあ待ってるよ」
カサカサ
ぬその擦れる音が聞こえる。
あの一枚の布の向こうで佐藤さんが……
いけないいけない、煩悩を消さなければ
そう思って顔を手でパンと叩いた。
でも一度そんなことを思ってしまうと簡単には頭から消えない。
「もう開けていいよ」
試着室の中から佐藤さんの声が聞こえた。
「えっ」
僕が戸惑っていると佐藤さんは自分で試着室のカーテンを開いた。
「そんなに顔を真っ赤にしちゃって、もしかして私がまだ着替え終わってないのに開けていいよって言ったと思ったの?」
「そ、そんなことないよ」
「このワンピースどう?」
佐藤さんはそう言うと、試着室の中でクルッと一回転して、ワンピースの裾をふわりと広げた。
「いいんじゃない」
「うーん、そうかなぁ」
そう言うなら聞かないでくれよ!
また佐藤さんはカーテンを閉めて着替え始めた。
今度は何も言わずに佐藤さんはカーテンを開いた。
「この服はどう?」
今度はショートパンツにTシャツを着ている。
「いいんじゃない」
僕はあまりおしゃれがわからないのでさっきと全く同じ感じで答えた。
「これいいかも。これにしようかな。」
そう言って佐藤さんはレジへ向かった。
「じゃあ帰ろうか」
「もうちょっとなにか見ていこうよ」
なんだかさっきから佐藤さんが帰ることを拒んでいるように感じる。
しかもなんだかソワソワしている。
なんでだろう……これはもしやトイレに行きたいのだろうか。
女性はデート中にトイレに行きたいと言い出しにくいと聞いたことがある。
まあ、これはデートじゃないんだけど…
でもこれはなんとしても対応しないと。
「あそこで休憩しない?」
僕はトイレの前のベンチを指さした。
「僕はちょっとトイレに行ってくるから」
これくらいしか僕にできることはない。
さあ、佐藤さんこのタイミングでトイレに行くんだ。
しかし佐藤さんは動かない。
だめだったか、これ以上僕に何ができるのだろう。
そう思っていると後ろから「山本、佐藤さん」と聞き覚えのある声が聞こえた。
振り返るとそこには林田と森崎さんがいた。
すると森崎さんが佐藤さんに駆け寄ってなにかコソコソと話している。
「いいよ」
佐藤さんがそういった。
「じゃあ私達2人で買いたいものがあるから林田くんたちはどこかで2人でなにか見てきなよ」
森崎さんがそう言うと林田が
「俺達も一緒に行くよ」
と言った。でも佐藤さんと森崎さんは嫌そうだ。
「私達水着を買いに行くから恥ずかしいから2人でどこかでなにか見といてくれない?」
「いいじゃん。一緒に見に行こうよ、水着」
「ふーん、林田は私達の水着姿が見たいんだ。へー、そうなんだ」
そう言われると林田は小声でボソッと
「僕たちは2人で水着を見に行くことにします。」
と言った。
森崎さんにこんな一面があったなんて……
そして僕たちは水着を見に行くこととなった。
----
次話へ続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます